会合 裏合わせ
長らくお待たせしました。
すみませんでした。
次の日、あの子は公園の様子を伺うだけで、
近づこうとはしなかった。
寂しく思ったが、事情は把握している。
それに今までもあの子が来ない日は幾度とあった。
だが、来ようとして、寂しそうな目線だけ向けられるのは恐らく初めてだろう。
だが、ただ待つことしか出来ない。
次の日、早朝に、学校へ行く子供達の中にあの子はいた。
昨日と同じ。
チラッとこちらを窺ったと思うと他の子達と少し話して、その後ずっと俯いたままだった。
さすがに心配になる。
別に地縛霊でもないしその気になれば何処へだって行ける。
だが目的も手段も解決策も曖昧なのでただ辺りを彷徨う事しか出来なかった。
無闇闇雲に彼方此方を彷徨い果て、ふと帰り道を忘れかけた頃に。
いや、思い出した。
思い出した。
頂上にあった日は落ちてきた頃で、駆けて帰る元気な子供達が見えた。
直感に従い急いで公園に帰ると、案の定あの子は来ていた。
来てしまっていた。
そしてあの子にとっさに嘘を吐いてしまった。
別に嘘ではないのだが、本当の事ではないので、嘘でいい。
やる事は、やるべき事はまだボンヤリとしている。だがやりたい事はハッキリとしている。
この子はここに居てはいけない。
それがこの子を守る事に繋がるから。
だが、無碍に帰す事もないだろう。
そう思っていたらついに正体を聞かれた。
正直自分でも忘れかけていた。
でもボンヤリと思い出した中に答えはあったが、答えるわけにはいかなかった。
嘘も付けないので、どうしたものかと答えあぐねていると助っ人が来た。
助けたのは俺だが、どうやら俺の助っ人では無いようだ。
この子がいつも話していた子は、彼だったか。
どうやら彼は噂通りの凄い子のようだ。
俺を見てもなんとも無いし、俺が見られてもなんとも無い。会話までしても何も起こらない。
彼は一体。
そう思っているといつのまにか話は終わり、解散の流れになっていた。
と言っても俺は何もしていないし、帰る場所も今はここだ。
あの子の友達の事を考えていると、
「こんにちは。」
「ん?」
自分に話しかけてくる輩など居ないと思っていたが、振り返ってみるとそこには、
「ああ、こんにちは。」
彼がいた。
「今、いいですか?」
入り口付近で突っ立てる俺をあのベンチで話さないかと親指で指し示している。
「構わないよ。」
互いに腰を下ろすとこの子は話し始めた。
「良かった、あんたが良い人そうで。あんたがあいつと仲良さそうで。」
手を差し出された。
「ああ、俺も安心したよ。君が聞いていた通りの子で。君があの子と今も仲良さそうで。」
握手を交わす。
が、彼は握り返してはくれないようだ。
「あなたは本当にあいつの味方?」
なるほど。
「ああ、もちろんだよ。あの子が俺を信じて仲良くしてくれたから、今後そうじゃなくなっても味方でいるよ。」
ようやく握り返してくれた。
握手は力強く交わされた。
「俺もあいつの味方でいるよ。」
そして手を離すと、彼はポツリと言った。
「あいつと俺が対立しない限りは、ね。」
「ずっと、とは言わないんだね。」
さっきのやりとりを聞いてて何となく思っていた事だが、
彼には別の目的があるようで、それが今の彼の原動力になっているようだ。
「そんな難しい事は俺には無理だよ。それに未だ子供だしね。」
「それも、そうだな。」
「じゃあこれだけ頼まれてくれないか?」
「何?出来る範囲で。」
「助けてほしい。」
「誰を。」
「助けてやって欲しいんだ。」
「…」
「あの子が何かを思い出そうとした時、殴ってでも止めてほしい。」
「…分かった。」
彼は意外と友情には熱いのかもしれない。
「じゃあ、俺からもお願いがある。」
「何だい。俺が言うのもだけど、あんまり難しいのはやめてくれよ。」
「大丈夫さ、あんたなら簡単だよ。
あいつの味方でいて欲しい。これからずっと、何があっても。」
「はは、確かに難しくはないが、意外と簡単でもないぞ。」
「知ってるよ。ただ、あいつは1人で居ちゃ、あいつを1人にしちゃいけない。っていう事も知ってる。」
「なるほど、ね。分かったよ。これは漢と漢の約束、いいや、誓いだ!」
拳を突き出す。
返してくれるか少し不安だったが、やはり話に聞いていた通りでしっかりと返してくれた。
力強く、こちらが押されそうになるくらい。
「ああ!」
「よし、それじゃあ、あの子はもう何かを思う出そうとしてるようだから、注意して様子を窺っててくれよ。」
「ああ、あんたこそ、あいつに何が起こっても味方でいてくれよ。」
「お任せあれ!」
「こっちも任しとけ!
じゃあ、俺はもう帰るから。」
彼は立ち上がりまっすぐ公園の出口に向かった。
「おう、トレーニング頑張れよ!」
彼は振り返る事なく、ただ拳を突き上げて出て行った。
最後には拳を開いてこちらに手を振ってくれた。
やはりまだ子供なのだろうか。だが、その背中は大人の俺から見てもカッコいい漢の背中だった。
次の日。彼は誓いを守ってくれたようだった。
さすがとしか言いようがなかった。
そして、感謝をし、自分も頑張らねばと奮起した。
それからしばらく、以前通り公園に人があまり寄り付くことはなかった。
疲れたサラリーマンやトイレを利用する学生、たまにすごく元気のいい幼児くらいしか来なくなっていた。
夜に集まる学生達もいたが、その中でも、半分くらいは、噂のベンチに近寄ろうとせず、何人かは避けてるように見えた。
俺はただ黙ってジッと座って待っていた。
公園にくる人々の目を見つめて。
そして、あの子供が来るのを。
「よ、呼ばれた気がして来たんだけど。」
1人の、ここには滅多に来ない子供が目の前に立って話しかけてきた。
この子供とはほぼ初対面だった。
「やあ、呼んだのは俺で合ってるよ。わざわざ来てくれてありがとう。」
だが、この子供はあまり俺を怖がってはいない
「あっ、そう。そ、それで。」
わけではないようだ。
やはり彼らが特殊なのだろうか、この子供は片手でもう片方の手首をを力強く握り、サンダルを履いてる足の指に何度も力を入れているようだ。目も少し逸らしてるし、顔を覗き込むように話してる。
だが、声からわかるように少し強気なようだ。恐怖心の裏返しからだろうか。
確実に俺を恐れているようだ。
「それより、座るかい?」
「いや、え、遠慮します。だから、手短に。」
「元からそんなに長くはないよ。」
「大体の事は友慈から聴いてるから。」
補足するように言われた。
「なら、早いか。」
立ち上がる。
ただこれだけの動作でもビクビク怯えながら様子を窺っていた。
「ごめん!」
勢いよく頭を下げる。
上司にもあまりこういう風に真剣に頭を下げた事はなかったな、確か。
だが、この動作にビックリしたようで、とうとう足が一歩後退さった。
「え?え?」
どうやら混乱させてしまったようだ。
顔を少し上げて落ち着かせるように説明する。恐怖心と警戒心も少しでも和らげられるといいんだけど。
「俺のせいで君に余計なモノを与えたようで。巻き込んじゃって。」
そしてまた頭を下げ直す。
「ごめん!」
そして恐る恐る、
「えっと、いや、こっちも巻き込んじゃってるし、別にあなたが悪い訳でも…そ、それにどっちみち遅かれ早かれこうはなるんですから。
」
許してくれたようだ。
「それでも、君を覚醒させちゃったのには変わりないから。」
「ま、まあ今から慣れておくって事で、え、えーっと。」
「ありがとう。」
顔を上げて優しく笑う。
「い、いえ、別に…
そ、それで、話はそれだけです、かっ?」
言い終えた後に少しビクッとしていた。
自分がやった事は分かっているようだ。
「…うん。1つ頼みがある。」
「な、なんですか?」
「君が喧嘩した相手、仲直りしろとはいわない、ただ君が原因なんだから。少しでいい、償いをして欲しい。」
だから俺も、この子供を許せはしなかったが、容認する事にした。
「…分かってるよ。その内するつもりだったし。」
これでお互い少しは軽くなるといいんだが。
「そうか、ありがとう。」
「いえ、はい。」
少しは俺を信用してくれたようだ。さっきよりも、少しだが真っ直ぐに俺を見ている。
「それじゃあ、呼び出してごめんね。」
「あ、はい。そ、それでは。」
振り返ったその背中をもう少しだけ軽くしてやる。
「頑張れ、今度は上手くいくといいな。」
立ち止まって、ポツリと吐き捨てて公園を出て行った。
「言われなくても…」
どうやら根はそこまで悪くない子のようだ。
あの子供から聞くと、
あの子にお勧めの寺と住職を紹介したようで、後日お払いに向かうようだ。
どれほどの効果があるのかと様子を見に俺も寺に行く事にしたら、
案の定、あの子があいつと話をしていた。
…
約1ヶ月ぶりの更新、誠に申し訳ございません。
遅れに遅れました。
やはり総集編、というか振り返りは大変ですね。
いろいろと過去に合わせるのが大変で、過去改変はあまり好きじゃないので、結構見直したりするのに苦労しました。
それよりも忙しすぎて病んだりしてて遅れました。
70%忙しさ、10%怠惰、残りその他で遅れてしまいした。
お待たせしてほんとごめんなさい。
たまに書こうとは思ったんですが、忙しさでスポーンと頭から抜けてたりすることが多かったりしました。
お盆も休みなしで忙しさに倒れそうになったりしてたんですが、その見返りでしょうかプチ連休を貰ったのでこれを機に一気に再開、書き上げた次第です。
忙しさにバラツキはありますが次話はなるべく間が空かないように努力します。
こんな調子ですが次回も見て頂けるとありがたいです。
もちろん今回も見て頂き本当にありがとうございました。
長くなってしまいましたが、次話に備えて、それでは
。補足。
一応分かり易くはしてるつもりですが、
あの子→拓人
彼→友慈
あの子供→藤丸
でお送りしました。
分かり辛かったでしょうか、一応ミスはないと思いますが、あったらすみません




