QED
朝ごはんを食べて家を出る。
さて、これからはもう僕がやるしかない。
他の人を頼っちゃいけない。
頑張らなきゃ。
気合を入れる。
班の集合場所に集まりなんだかんだで学校に着いた。
さて、どうしよう。
教室に入ってせきにつく。
どうしよう、何も考えてなかった。
やる事は考えたけど、そのなかみは全然決めてなかった。
どうしよう。
とりあえず今日考えて明日からがんばればいっか。
噂も今に始まった事じゃないし。
そうだ、まだ時間はあるんだ。
「おはよう。」
体がビクッとなった。
今の僕に挨拶する物好きは・・・
「あ、おはよう。」
友慈の方に向き直って挨拶を返す。
「どうだ?」
主語が無くてもだいたい分かる。
「まあいまは半分くらいかな。」
「そうか、頑張れよ。」
そういって友慈は僕の肩を片手で揉んだ。
「うん、ありがとう。」
友慈は手を離して身支度に入った。
僕も準備を済ませ、朝読用の本を机の上に起き、それを覆うように両手を交差させてその上に顎を乗せる。
あー、どうしよっかなー。
どうすればいいんだろうなー。
もう、逃げる事はしない。
だが、ゴールが見えない。想像すら今は難しい。
それでも必死に考えを巡らせる。
テレビや漫画で得た知識なども織り交ぜながら。
今はそうするしかないから。それしか出来ないから。
そういえば、噂では幽霊が見える子が居るってだけで誰かは特定されていなかったはず。
それなのに父さんと母さんは分かってたみたいだったし。
僕を知ってる誰かが教えたのか、それとも噂の人物がが特定されたのか。
でも、昨日の様子じゃ確信的じゃなかったから、母さんかの勘かもしれない。
でも、おそらく時間の問題だろう。
どうするかな。どうすべきかな。
考えても考えても。
分からない。
時折変な妄想が頭の中で繰り広げられるが、とても現実的ではない。
そんなこんなで既に午後の授業に差し掛かっていた。
昼休みは自分に、『僕なら出来る。僕には出来る。』と言い聞かせてた。
そんな時に、道徳の授業で先生が言った。
「今日は、今のみんなの夢を書いてもらいます。」
周りの反応は、
恥ずかしー とか やだー とか、何故か得意げにしてるのもいた。
「ははは、たぶんお前らが思ってる事は違うと思うぞ。」
オーディエンスからはどうゆーことーと、
それに先生は
「まあとりあえず紙を配るぞー」
クラス中の生徒に白紙の小さな用紙を配った。
前の子から渡される時は、当然素っ気なかった。
もうお互い慣れたけどね。
「行き渡ったなー?じゃあ、この時間は、"今"のみんなの夢を書いて貰うぞ〜。なーに、簡単だ。将来の夢じゃなくて、例えば、今度発売されるあのゲームが欲しい。とか、この前見かけたあの可愛い服が欲しい。とか、ペットが飼いたい。とか、お腹がへったー。なんかでもいいぞ。」
「せんせー給食食べたでしょー。」とか「お前どうせアレとかだろー?」とか反応は様々。
不意にチラッと齊藤の方を向いた。
目が合った。でもすぐに逸らした。
僕が逸らしてしまった。
つい、体が勝手に。
はぁ、こんなんじゃまだダメかも。
自分に呆れつつも今の自分の決意を白紙の用紙に書いた。
「あ、そうだそうだ、名前は別に書かなくていいぞ。恥ずかしいって奴もいるからな。ま、内容次第でだいたい誰かが分かるが、それがまた面白いんだよ。」
書く手を止めず、そのまま聞き流した。
最初はうるさかったけど、だんだんと静かになっていき、それでも終わった者同士が話し合っていて、それがまただんだんと増えていき、周りを見渡すとだいたい終わっている事を確認した先生が各列の一番後ろの生徒に紙を裏返して回収するように言った。
全列から回収した事を確認して、
「よーし、それじゃあ今からパパッと確認して、俺の目にとまった奴を紹介してくぞー。」
ええー、やだー と批判的な声が上がってくる。
そりゃあそうだけどさ。
僕としてはむしろありがたいけど。
いつかは主張しなきゃいけないことだし、その手間が省ける。
1人1人はさすがに面倒だし、まともに相手してくれるかも怪しい。
最近この頃疑心暗鬼になってきているようだ。
思い返しても付き合いの短い奴らばかりでもあるが。
「お、『サッカーがもっと上手くなって将来はサッカー選手』か。これは何人か似たのがあるな。そんな子達に先生がアドバイスだ。この先中学校高校ともこの夢を忘れず持ち続け、それに向かって頑張るだけで、それはきっと叶うはずだ!言うだけなら簡単だが努力も必要だからな、がんばれよー。先生も期待してるからな。有名になったらサインくれよ。」
該当すると思しき生徒が何人か照れ笑いを浮かべていた。
でも僕は無理だと思う。叶うはずがない。
「お、『おにぎり屋をやってみたい』か。まあこれを書いた奴はきっと米が好きなんだろうな。」
それだけでクラスの1人は特定された。
まわりも承知済みであったが本人は恥ずかしがっていた。
でも僕は無理だと思う。どうしてこんな奴らのくだらない夢が叶うというのか。
「『世界一周』か、シンプルで面白いな。俺も海外行ってみたいわ〜。」
これは現実的にも無理だ。ただ、やっと先生の出題にもっとも近い回答が出た。
「お?『仲直りしたい』か。ほほう、誰だか分からんが頑張れよ。中良きことは美しきかなってね。友達は多い方が何かといいからな。」
誰だろう?興味はあんまりないけどね。それでも周りの態度から僕が関わっている事ではないだろう。
「ほうほう。『しょうめいしたい』とな。今日は面白いのが多いな。証明は場合によるけどだいたいは難しいから、なんの事かは分からんが頑張ってくれよ、これを書いた人はな。」
僕の書いたのと似てる。
「これに似たのもあるな。え〜っと、お『1日中ゲームしたい』って。まあ子供だからしょうがないか、ははは。」
結局僕のは読まれる事はなかった。
その後も何個かを読み上げそれにコメントをし、生徒が反応する というのが続いた。
「そろそろ終わりだし、まあこんぐらいかな。安心しろ、この紙は後でシュレッダーにでもかけておくから。」
そういって紙を整頓し始める。
その片手間に昔話を始めた。
「いやぁ、今回も面白かったな。昔からこういうのやってるんだがな、どこにも大抵面白い奴が居るもんでな、前にいた学校なんて拙い字で『世界征服』だったり『正義のヒーローになる』なんて書いているのも居てさ。でも、聞いてみたらそいつらはみんな本気だった。本気で夢に向かっていた。他にもいろんな奴が居たよ。本当に、純粋に面白いと思ってるから止められないんだ。まあ、諦めなければいつか叶うなんて言わないが、夢の為に努力することは絶対に無駄じゃ無いから、これからも頑張れって事だ。まあゲームが欲しい奴は親にねだるんだな。」
ちょうどキリのいいタイミングでチャイムがなった。
「お、ちょうどいいな。じゃあ委員長、挨拶しちゃって。」
挨拶が終わった後、友慈が僕をつついた。
「なあ、さっきのはお前の夢か?」
「何が?」
「あれだよ、『しょうめいしたい』って奴。」
「似たようなのは書いたけど、あれは僕のじゃ「俺のだよ。」」
齋藤が話に割って入ってきた。
「似たような、っていったよね。」
「うん、僕は『わからせたい』って書いたよ」
「ふぅん。」
齋藤が僕をジロッと見つめる。
「まだそんな事を言ってるんだ。」
思わず立ち上がった。
胸ぐらを掴む寸前だった。
今、僕のすぐ近くに友慈が居る。
「それはお前だろ?」
なんとか言葉で返した。
この苦し紛れの煽りに齋藤は僕の胸ぐらを掴んだ。
「学校が終わったら公園に来い。決着付けてやる。」
掴んだ手で引き寄せ、友慈に聴こえないくらいの声で耳元に低く囁いた。
その怒気を孕んだ声に齋藤が本気なのが伝わった。
僕の服を掴む指は恐怖ではなく怒りによって微かに震えていた。
そして僕を睨んで、友慈が居る手前かスッと手を離し去って行った。
服が伸びないように直して、友慈に適当な言い訳をして帰りの会を迎えた。
なんかいろいろといろいろなキャラのキャラを忘れてきてる今日この頃。というか毎回ですが。
ちょこちょこ確認しながら書いてるんですが、面倒でもやらないと後々台無しになっちゃうかもしれないんでちょっと大変です(おかしな日本語)。
まあそれが遅れた言い訳に出来ないのは分かってますが。
ほんと、今まで、たぶんこれからもすみません。
それでもお付き合い頂けるとありがたいです。
それといつもお付き合いありがとうございます。
ちなみに紙のサイズがよくわからない私は小さな と表現してますが、まあ掌より大きいくらいのサイズで字が汚くかつ大きい子、つまり私のような生徒が苦労するくらいの小ささです。苦労するって言っても最初の方が大き過ぎたから後々の文字がだんだん小さくなって傾いていくって感じですかね。まあみなさまの想像力にお任せします。いつもですがね。
それでは〜