選択
ベットに転がって何と無く解決法を考えてみる。
何も浮かばない。
原因は僕だけど事の発端は違う。
どうすればいいのか。
僕が自分で言い出したならいいけど、勝手な憶測で決めつけられたら弁明のしようもない。
むしろ必死になってるって事は肯定を意味する。
じゃあ、どうしろと言うのか。
難しい。
本当に難しいのだろうか。
平和的に解決しようとするのが難しいのではないか。
解決すればいいのだから、何をやってでも。
そもそも、解決する必要はあるのか。
友慈の家で読んだ漫画にも書いてあったが、真に理解し合える友達が1人いればそれでいい。
人を勝手な決めつけで証拠もなしに離れていくような奴らは最初っから友達だったのだろうか。
友達なのだろうが、それは。
何にせよ、友慈は味方で居てくれるみたいだからそれでいいのでは。
でも、俺になら出来るって、友慈とおじさんが。
一体何をどうすれば…
お気に入りのカードを見つめながら様々な思考が頭の中で行き交う。
極論は解決するか、そのまま放置するかの2つになるが、友慈やおじさんに言われた事を思い出すと考えが揺れに揺れて定まらない。
部屋で一生懸命考えてると妹が「ご飯だよ」と呼びに来た。
テレビに目もくれずただ黙って食べ、話しかけられたらそれに応える。
父さんと母さんが、「最近何かあったか?」と不意に聞いてきた。
「何の事?」話を逸らすように言った。
「学校で、何かあったか?」父さんが言い直す。
そんな事しなくたって本当は分かっていた。
でもそうでないと願っていた。父さんや母さんの耳にこの噂が届かないと思ってた。
でも、
いや、
やっぱり。
上級生達にも広まってるのだから不思議ではないだろう。
今回のこれが遅いのか早いのか。
それとも遅かれ早かれ。
そんな事はもう、いい。
今は結果を。
「んー、特に何もないよ。」
「ほんとに?」母さんが追求してくる。
母、または女の勘。ではないようだが、疑いの中に心配の色も混じってる。
そんな事は子供の僕にも分かる。
だから、心配させまいと、
「本当だよ。今日も友慈と遊んだし。」
嘘をつく。
「そう、か。それなら…」父さんが言い淀み、それを誤魔化すかのように味噌汁を啜る。
「何かあったらいつでも言ってね。」母さんのその一言に、イラっとした。
分かってる。でも、
「…うん」残った味噌汁を全部飲み干した。
「〜♪」妹は呑気にCMの歌を口ずさんでいた。
「ごちそうさま」食べ終えた自分の食器を流し台に起き、父さんと母さんの心配そうな眼差しを受けながら自分の部屋に戻った。
分かってる。でも、
それが、何故か、
あー、イライラするなぁ。
ベットに倒れ込み、枕を殴る。
元はと言えば…
全部、全部あいつが、
悪いのはあいつだ。
変な事を言ってみんなにおじさんを怖がらせて、
そうだよ、全部あいつだよ。
何で、何で僕が、僕が悪者みたいに
拳をきつく握る。
歯をくいしばる。
目が吊り上がる。同時に目頭があつくなる。
「く、ぁぁ…くっ…ぐぐ…んぐ…があ!ハァ…ハァ…ぐっ!…あぁあ!!」
何で、何で、何で、何で、何で
どうして、どうして、どうして、どうして、
僕が、何をした!!
思っている事は口には出ない。
代わりに嗚咽だけが漏れる。
代わりに全身に力がこもって、たまに震える。
解決策なんて頭に無かった。
ただ、原因を恨んでいた。憎んでいた。怨んでいた。
後悔していた。
頭の中でいろんな考えと、感情と、言葉が 飛び交い、ぶつかり合い、否定し合う。
いつのまにか蹲っていた。
布団の中に潜って、布団で身を隠すかの様に強く体に押し付けて。
そんな事をしていると、妹が
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
布団に蹲る僕を見て、不思議そうに問いかけてきた。
「さっきから変な音がしてたから。」
おかげで冷静になって
「お父さんとお母さんが言ってたみたいに何かあったの?」
少しだけ恥ずかしくなった。
「なあ、」
「何?」
「お前って、幽霊、信じるか?」
「お化け?いると思うよ。」
「何で?」
「何でって、うーん…ただ、私は居ると思うってだけだけどなー。うーん…」
答えは、簡単だった。
「いや、もういいよ。ありがとう。」
「え?」
そりゃそうだろうな。そんな不思議そうな顔したって、
「『お前が居るって思う』って事は、居るって事だな。」
僕だって不思議なんだから。でも、僕は自然と顔が綻んでいた。
「変なのー。やっぱり何かあったんじゃないのー?」
「まあ、あった な。でも、もういいよ。本当にありがとう。」
布団から出て、お礼代わりに頭を撫でてやった。
今度プリンでも奢ってやろうか。
「ん。なら良かった。じゃーね、おやすみー」
「ああ、おやすみ。」
思わぬ人間のおかげで自暴自棄から抜け出せた。
おかげで解決策も見えてきた。
解決策を3つまでに絞った。
その間に風呂に入ったり歯を磨いたり。
今日はもう、疲れた。
父さんと同じかもしれない。
眠くなってきたので、布団の中で考えをある程度まとめて、
が、まとめてる最中に寝落ちしてしまった。
次の日の朝、少しでも考えを忘れない様に起きたらすぐに顔を洗い、目を覚ました。
今日の夢にはあいつも出てきていた。
どこか、小学校とは少し似ているが違う場所で、それでもやっぱり幽霊の話をしていた。
おかげで昨日まとめた考えを忘れずに思い出せた。
でも、そこから1つに絞るのが難しかった。
いまひとつ、後一歩が足りない。
ここはもう運任せにしよう、ここまで頑張ったんだから。と半分投げやりに昔拾ったカード達を机の上に並べた。
「どーれーにーしーよーうーかーな、かーみーさーまーのーいーうとーおーり。」
こんな事をやったて出るのは運なのでは無く、どこかに絡んでいる無意識が選ばせているというのは分かっている。
ちなみに、
1つはこのままただ悪者として過ごすか、これは死神のカード。
1つはそれでも必死に弁解して誤解を解いて回るか、これは聖母のカード。
1つは噂を塗り替えるかまたは訂正させるか、すり替えるか、これは何も書かれていないカード。
このどれが正しいのかどれかが正しいのかは分からないが、友慈やおじさんに言われた通り、俺に出来るのは、考えつくのはこれらだけだった。
そして、意識的無意識に選ばれたのは、噂を変えてしまう方法だった。
腑に落ちない。
せっかく3つまでまとめたのに僕の心ではもう、いや最初っからこれだったのかもしれない。
じゃあ考え出されたのは…
そんな事を否定したくて、
朝食が出来たのを知らせに来た妹に丸投げした。
こいつだったらまた答えをくれるかもしれない。
後一歩を埋めてくれるかもしれない。
さあ、僕を導いてくれ!と言わんばかりに妹の目の前に3枚のカード裏返して押し付ける。
「ちょっとこの中から好きなのを1つ選んでくれ。」
そう言いつつシャッフルする。
「うん?じゃあねー、これ!」
選ぶだけでいいのに、わざわざ抜き取った。
そしてそのカードを僕に見せつけてくる。
そのカードには、何も書かれていなかった。
遅れた分の謝罪も含めていつもより気持ち早めに更新です。
久々の拾ったカード達の出番です。忘れてた訳では無いですが、いつ出そうかなと。
あと、ちょっと久しぶりだけど大活躍の妹ちゃんです。
本当は友慈くんにやってもらおうかと思いましたが彼はトレーニング中なので。
なんか齊藤くんが凄い悪い奴 みたいになっちゃったけど、まあ、主人公目線だし多少は…
誤字脱字は無いつもりですが、たまに癖で「僕」を「俺」と書いてしまって、その都度訂正はしてるんですが、漏らしがあったらすみません。
次回も出来るだけ早めに更新するつもりではあります。
頑張ります。
それでは