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拾いふだ  作者: lycoris
14/27

スタンダップ

こうしてみると、やっぱり、楽しい時間というのは早く過ぎてしまうもので、それ以外はたいして気にならない。

でも一つ、なんらかの苦痛を含んだ時間だけはどうしても遅く感じてしまう。

時間を気にすればするほどにそれはどんどん遅くなるかのように。

こんなに秒針の音を望んだことはなかった。

早く分針が、1周でも早く回ってくれ。

たかが数cm動くのにこんなに時間がかかるなんて。

もどかしい。


授業中は少しでも目立たない様に、だがそれが帰って目立っていたかも知れない。

何を聞かれても完全な正解じゃなければ間違いでもない、そんな曖昧であと一歩の回答ばかりしているのに、先生に少し頭がいいとでも思われたのだろうか普段以上に指名された気がした。

そして僕がどんな事でも答えたら少し周りが(ざわ)つく。この答えもきっと______

そんな事はない、あるはずがない。

今日はいつも以上に頭が冴えてるだけだ。

そんな日は誰にだってあるだろ。

ぐっと堪えて、必死に心の中で反論する。


いつもは何人かで運動場に遊びに出てたが、最近は友慈と、友慈と特に仲がいい奴らだけだった気がする。

今更になって思うが、全校生徒の半分くらいが運動場に出ているんじゃないかってくらい運動場がごった返してた。

あの中にいつも自分が居たのか、ふと前の席を見ると空席だった。

教室の半数以上はみんな教室から出て行った様だ。

残った数人は、読書や板書の遅れ、宿題の悪あがきなど

だった。

ボーッと窓の外を眺める。

特定の誰かや場所ではなく運動場全体を。

ため息もせずただただ眺めてる。

そうしてるうちに既視感が()いてきた。

放課中に運動場を眺めることは今までほとんど無かった。

しかしいつも見てる風景だ。

いつも見てる風景なのに、昔にも見たことがあるみたいに。

大雑把だがデジャヴという奴か。

不確かだがそれは確かなものに思える。

おかしな感覚。


それから億劫な授業を過ごし給食の時間になった。

今日は休みは居なかったものの好き嫌いで1人がデザートを残した。

今日のデザートは、プリンほどじゃないがそこそこ人気のシューアイスだった。

シューアイスじゃなくたってデザートが残れば育ち盛りの元気な、主に男子達が群がる。

今日も今日とて集まったが、そこに僕の姿を見つけると次々に自分から放棄、もとい降参していった。

本来それは嬉しいはずだが、嫌な気しかしない。

みんな口々に聞こえないようにしているのだろうか不満を垂らして自分達の席に戻った。

先生が驚いていたが、

「じゃあ今日の齋藤の分のシューアイスは青木のでいいか?」

と一応確認をとった。

返事がないかと思って袋を掴んだ時、遅れて挑戦者が出てきた。

「なーんだ、誰もやらないなら俺がやるよ。勝率は半分だしな。」

その友慈の申し出にクラスの男子達が騒めき出した。

「おいおいあいつマジかよ。」

「昨日のこと知らないんじゃない?」

「でも昨日あいつの家に持ってったんじゃないのか?」

「そういえば、昨日のそろばんの帰りに齋藤にあったけどプリントとか渡してすぐに帰ったらしいって。」

「怪しいなぁ。ひょっとして二人とも青木に操られたりしてるんじゃない?」

「うわー」

そんな周りの言葉など耳に入っていないかの様に堂々と僕の前まで友慈が出てきた。

「さあ、やろうぜ。」

「うん。」

袋を置き構える。

先生が音頭を取る。


「昨日はごめんな。」


直前にそんな事を言われ手元が狂った。

出そうとしたのはチョキ。

出たのはパー。

友慈はパー。

引き分け。

それにクラスが呼応してどよめく。

「お!?」

「いけるんじゃねーか!?」

周りからは、友慈への期待ばかり。

だから僕は勝とう。


僕はパーを出した。

友慈はグーだった。

「あー!ちくしょう、しょうがない。今日のところは譲ってやるよ。」

友慈がオーバーリアクション気味に、気さくに負けを認めた。今日のところは。

それが嬉しくて、おかしくって。

「ふふ、次も僕が勝つよ。」

「うぅ、くそー。」

友慈はおとなしく自分の席に戻った。

その後に僕も戦利品を手に自分の席に戻った。

その時すれ違いざまに「やっぱり」など聞こえてきた。負け惜しみだと思うと少しは気が軽くなった。

先生が今日も持っていくのかと聞いてきたが、家も知らないし溶けるのでという事で僕が食べる事にした。

元からそのつもりだったし。


シューアイスを食べている時、ふと気になった。

もしあの時友慈が勝っていたら。

称賛はされていたはずだ。だがたぶん陰口も言われていただろう。

霊能力者の僕を倒すんだから。

ろくな証拠もなく僕を霊能力者と断定するような(やから)だ。

きっと友慈もあらぬ疑いをかけられ変に扱われてたかもしれない。

そう考えると勝って良かったし負けられないと思った。


それから午後の授業、掃除と過ごし帰りの会も終えた。

いつものメンバーで帰るかと思いきや、友慈はトレーニングがあるからと足早に帰り、それに続いて何人かが習字などで帰ると言い出し、いつもの半分も残らなかった。

その日の帰りはいつもより気まずくいつもより口数が少なくいつもより少し早足気味だった。



次の日、齋藤は元気に学校に来ていた。

僕は昨日通り。

いつもよりつまらない学校生活を送っていた。

今日は眠かった。

昨日ほど当てられなかったので、授業中にしばしば寝てしまうほどに。

友慈もトレーニングで疲れたから と授業中に寝てたいた。

その割には、時間が無い と放課中は運動場を駆け回ってた。

友慈は昨日の事が嘘のようにいつも通り接してくれた。

どうやって謝ろうかを悩んでいたらしい。

今日は来た齋藤にもちゃんと謝っていた。

僕はというと気にしないように何事もなかったように齋藤を避けていた。

それは向こうも同じようだが、元々向こうが望んでいた事だろうから、何も湧かなかった。

それから、前よりも他人を避けるようにした。

これも最近僕とすれ違う時に無駄に距離を空ける生徒が居たので、ちょうどよかった。

何度か放課と授業を繰り返し、給食の時間になった。

今日は寝すぎたのだろうか、いつもより食欲がわかない。

でも、いつもと食べる量は同じだ、減らさないけど増やしもしない。

今日はデザートはなかった。

例えデザートがあって、それが余ったとして、今日は参加する気はなかった。もし、そうなっていたら周りはどんな反応するだろう。

そんなことどうでもいいか。

周りになんと言われようと少しでも後悔が残る事はしたくないし。

また、午前のループのように時が経ち、掃除は進んで角を掃除し進んでちりとりをやった。

帰りもいつものグループといつもより幾分か重い空気で帰った。


家についた。

今日はつまらなかったな。

いや、昨日もか。

明日からもだろうか。

そうだったら、

なんてつまらないんだろう。


なんでつまらない?

考えてみた。

答えがいくつか浮かぶ。

それらすべては正解だろう。

ただ一番の解答は、おじさんに会ってないことか。

会ってみよう、なにか変わるかもしれない。

周りからなんと言われようと。


手ぶらで家を出て公園へ向かう。

公園の中を見渡す。

学校から帰って少し経った。

少し太陽が傾いた。

なのに公園にいる人間は少なかった。

これが最近のここでのいつも通り。

でも今はそれが好都合だ。

見渡す。

が、

居ない。

いつも、いつでもここにいると言っていたのに。

ベンチに一人で座る。

この状況からありえもしないような事が次々頭をよぎり、不安を掻き立てられる。

周りから言われた事が頭の中で蘇る。

それから様々な結論に辿り着く。

何通りかの結論は、すべて否定した。

否定したが、今はそれらしか思い浮かばない。

必死に頭を抱えて考える。

「なんで…なんで…いつもここに居るって、言ったのに…」

不満が声になって出た。

「そうだったな、すまん。遅れた。」

久しぶりに聞いたその声に今までの結論が消えていく。

おかげで少しだけ冷静さを取り戻す。

そして、もはやそんな事は考えなくなった。

今は一つだけ重要な事を確かめたかった。

「おじさん、どこ行ってたの?」

「すまんな、そう怒るなよ。」

「別に怒ってないよ。だから言い訳を聞かせて。」

「そうか?ならいいけどさ。まあ、最近お前が来ないし、ここで遊ぶ子も減ったからさ暇になったから、やる事思い出したからそれをやってた。」

「それは何?ここでは出来ないこと?」

「うーん、説明が難しいけど、ここでは出来ないのは確かだな。」

「そうなんだ。」

「ああ。」

「で、それは何なの?」

「あー、うん。お前が大人になったら分かるさ、たぶん。」

「絶対に?」

「あー、あっはっはっは」

顔を逸らして下手な作り笑いをして話を逸らされた。

これ以上言及しても無駄かもしれない。

「まあ、それは僕も別にいいんだけどさ。」

「なんだよ、今日はいったい。」

「ちょっと最近いろいろあってね。」

「ほー。」

感心したような相槌をうたれた。

「何?」

「いや、今までは楽しい話しかしてこなかったからかね。」

そういえばそうだけど、それがどうかしたかと追求すれば話が逸れると思ったのでやめた。

「それで?」

話すように(うなが)される。

「真剣に聞くから、嘘をつかないでね。ちゃんと答えてよ。」

「おう、任せとけ!」

本当に真剣なのか不安になった。

だが、聞かずにはいられない。

「幽霊なの?」

「はぁ」

「いや、だからおじさんは幽霊なのかって」

「んー、前にも答えた気がするんだけどなぁ。」

「前はあやふやだったよ。だから、ちゃんと答えて。」

力を込めて言う。

「…じゃあ、その質問にはNOだな。」

「本当に?」

「ああ、ただ幽霊みたいなものではあるけど、幽霊ではないよ。絶対に。」

「じゃあ、なんなの?」

「…悪いけど、答えられない。ってのはダメか?」

「どうせ聞いたって答えてくれないんでしょ。まあ幽霊じゃないって分かっただけいいんだけどね。」

「そうか、なら良かった。」

「でも、それじゃあどうしよう。」

「困ってるのか?俺が幽霊じゃない事で。」

「その逆で困ってたんだけど。うーん…じゃあじゃあ、生きてるの?死んでるの?」

「実は俺にもよく分からない。」

おじさんの答えたは冗談をいうようだった。

黙っておじさんの様子を伺うと観念したようで、

「さすがにダメか。」

自嘲気味に笑う。

「生きてるよ。」

「本当に?」

「ははは、幽霊じゃないなら生きてるに決まってるでしょ。」

「ありえないけど神様とかって可能性もあるんじゃない?」

振り返ると友慈がいた。

「友慈!?」

「よう。または悪魔とか。」

友慈が半笑いでおじさんの居る方向に向かって問いかける。

「はは、面白い子だね。この子の友達かい?」

「ええ、そうですよ。」

「えっ、見えてるの!?」

「見えるだけじゃないよ、話も出来る。これで俺もお前と同じになったって事だな。」

友慈がさも何でもないように言う。

「…前から?」

そうだとしたら、僕だけ避けられてたのが…

「いや、最近だよ。前からだったらたぶん周りに自慢してたよ。それにお前を庇うことも出来た。」

「じゃあ「でも今はもう遅い。悪いが俺には何も出来ないと思う。」

「ふむ。」

最初こそは真面目だったが、だんだんとどこか不真面目になって話を聞いていたおじさんが僕と友慈の話をチャチャを入れずに聴いている。

「これはお前の問題だ。発端はお前じゃないけどな。だからお前にしか解決出来ない、お前が解決しなきゃいけない。」

「…」

何も反論出来ない。

「ふむふむ。」

「ま、お前がこのままでも良いってんならそれでも良いんじゃないか。俺は変わらず友達のままだぜ。」

「…ありがとう。」

今言えるのはそれだけだった。

「おう。無責任だけど、頑張れよ。それじゃあ俺はトレーニングに戻るから。」

「あっ、待って」

「何?」

恐る恐る聞いてみる。

「昨日のじゃんけんは、ワザと?」

「ワザと?何言ってんだよ、じゃんけんは運だろ?」

「…それもそうだね。」

ちょっと面食らってしまった。

「まあ俺はいつも通り今のままだ。フォローとかはしてやるから。」

「ありがとう。」

「おう、じゃあな。」

「じゃあね。」

手を振り合う。

「変わった子だな。」

「うん。でもいい奴だよ。」

「そのようだな。じゃあそろそろお前も帰れ。問題を解決しなきゃいけないなら長い時間ここに居ない方がいいだろ?」

「いや、別に関係ないと思うよ。それにもう手遅れだし。」

「そんな事はないぞ。彼だって言ってたじゃないか。だからお前なら出来る!」

「それを無責任って言うんじゃないの?」

「ませてんなぁ。そんな事言わずにやってみろって。俺が責任取ってやるから。」

「どうやって?」

「それはその時になってからだ。いいから、頑張れよ。どうせ今日はもうそんなに長くここにいれないだろ?日も沈んできたし。だから家に帰って作戦でもたてて来い。」

「まあ、今日はそうするよ。じゃあね、おじさん。」

「おう、俺はお前を信じてるぞ!負けんじゃねーぞ!お前は1人じゃないからなー!」

公園を出ようとする僕の背中をおじさんの激励が押す。


いつまでも不貞腐れてないで、頑張ろう。

すみません。

最初は放置してていつも通りだったんですが、だんだん忙しくなって取り戻すのも難しくなって、だったらいっそ遅れる分だけ量を増やそうと思ったんですが、そんなことやってるから余計遅れてしました。

本当すみません。

今回のは2話に分けようかなと思ってたのを結合させた感じですかね。

ところどころ書き溜めのを継ぎ足ししてたせいで誤字脱字や普通のミスなどもちらほら。

間隔空けるとダメですね。


本当お待たせしてすみませんでした。

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