空気
夢をみた。
正夢になって欲しくない。
でも、起きた時、その内容はすぐに思い出せなくなっていた。
目元が熱い、涙でもたまってるかの様に。
喉も若干渇いている。
とりあえず、体を起こし洗面台まで向かって顔を洗う。
その後リビングに行き、牛乳か迷ったが麦茶にした。
とりあえずコップ一杯を飲み干すと体が少し重く感じる。
コップを片付けてソファに座りなんとなくTVをつける。
ボーッとしてるとドアが開いた。
「あら、やけに早いわね。」
今日は曇り時々晴れになるようだ。
「ん?ねぇ」
あと1時間もしたら家を出なきゃ。
「ちょっと!聞こえてるの?」
「ん?あー、おはよー。」
TVから視線を逸らさず母さんに挨拶する。
「どうしちゃったのあんた?」
「んー、いや、別に。特に、なんでもないけど。」
「歯切れ悪いわね、それにボーッとしちゃって。何かあったの?」
「変な夢を見て、目が覚めて。それから、なんか、ボーッとする。」
あまり見えてないけど、母さんの雰囲気が変わった。
声音も少しだけ真面目になる。
でも口調は変わらず、変えないようにしてるのかいつも通りだった。
「…風邪でも引いたんじゃない?」
「いやー、熱は無いと思うよ。」
「寝ぼけてる、だけだったらいいんだけど。何かあったらすぐに言いなさいよ。」
「うん」
「学校でもあんまりボーッとするようなら先生に言いなさいよ。」
「うん」
「それとも先に知らせとく?」
「いやー」
「気が抜けるわねー。あんたそんなに朝弱くなかったはずでしょ?」
「まーねー」
母さんが台所に向かう。
「じゃあご飯の準備するから、可愛いあんたの妹ちゃんを起こしてきて。ついでに一緒に目を覚ましてらっしゃい。」
「はーい」
TVをそのままにしてリビングを出ようとする。
ドアに手をかけたところで不意に母さんの方に目をやった。
母さんは小さな紙を、心配そうに見つめていた。
そのままぐっすり眠っている妹を起こすのに手間取ったが、おかげで段々と意識がハッキリしてきた。
意識が鮮明になるにつれ、今の自分の現状が思い浮かんでくる。
もう内容も覚えてない夢を気にする余裕は無くなった。
その後妹と一緒にリビングに入ってきた僕を見て母さんはため息を吐いたが、それは呆れからではないように感じた。
机には既に朝食の準備が終わってて、母さんはコーヒーを淹れているところだった。
妹と並んで母さんと向かい合って座って朝食を食べる。
父さんは早朝出勤らしい。
食べ終わって、今日の授業の準備をする。
そういえば、昨日は友慈や齋藤の事で頭がいっぱいで全く準備出来ていなかった。
急いで準備してパジャマからの着替えも済ませて、母さんと妹に見送られ家を出た。
「ねー、そういえばさー。」
「何々?」
「ここの公園、出るらしいってぇ」
「え?幽霊がー?」
「うんうん。」
「うわっ、本当ー?」
「それ俺も聞いた事あるぜ。」
「えっ、マジ?」
「幽霊と〜、あと、それでなんか、アレだ。拓人の名前が出てたな。お前何か知ってる?」
それは突然だった。
昨日まで一切触れて来なかったのに、今日に限って班の一人が、いつも通ってるこの道の、学校の近くのこの公園で、いつものこの公園に関する噂を話題にした。
「えっ、ううん。知らないよ。」
話題に驚愕してたので、咄嗟だったがなんとか誤魔化した。
「本当に〜?」
一瞬ドキッとしたとともにイラっとした。
「なんで急に僕の名前が出て来るの?それに幽霊のだって僕も最近知ったんだけど。」
おかげでさっきよりいつも通りに返答が出来た。
「ふーん。」
「あれー?なんだっけなー?」
「使えないなーお前。」
「うっせーな!」
「まあまあ、結局幽霊が出るってだけでしょ。そんなのどこにだってあるじゃん。」
居た堪れなくなって必死に話を無視するのに専念して登校した。
こんなに疲れて学校に来るのは初めてだ。
昇降口辺りでバラけて各々の下駄箱に向かう。
問題はここからだった。
「よう、おはよう!朝からおつかれさまだなー、ってあっはっはっは。」
「ぷふふ、馬鹿止めとけよお前、ぶふふ。」
違う通学路を辿って来た同級生が挨拶をしてくる。
前までは朝からハイテンションなやつらだと気にせず返していたが、裏を知った今は意識的に気にしないようにしなければならない。
こういう時はそうするのがいいらしい。
例えどんな理不尽な仕打ちが待っていても。
こちらが無視をしようと、あちらは普段から気にも留めてないのだろう気にせず自分たちの教室へ向かって行った。
ただ、最後に制止する気のない奴がこちらを一瞥した。
いつもより気分が悪い。
昨日は噂の事なんてあの時まで全く忘れてたのに。
今日は…
教室に入り自分の机に着く。
準備が終わらせ大人しく席に座る。
特にする事も無かったが、
この後からの事を思うとため息が出た。
たぶん今日は疲れるんだろう、すごく。
「おいおい、朝から暗いなぁ。」
自然と俯いていた顔を上げると友慈が居た。
「よっ」
「あぁ、おはよう。」
会話はそれだけだった。
いつもはここからアニメやゲームの話題で盛り上がっている。
でも、後で気付いたが、今日の友慈は素っ気なかった。
ただ、今は先の事への不安で感じなかったが。
いつも友慈との話に夢中になっているからだろうか、こうしていると周りが僕を注目しているのに嫌でも気付いた。
昨日の事もあるだろうが、やはり噂の方が圧倒的だろう。
中にはチラリと様子をうかがったり、指を指して有りもしない事をたらたらと語ったたり。
こういう視線は嫌いだ。
隠れるように机に突っ伏し顔を腕に埋めた。
その時最後に視界に映ったのは何か悩みを孕んでいるような友慈の視線だった。
一週間早いいいいいい
なんて言ってたら少し遅れてしまいました。
すみません。
GWで浮かれてました。
ほんとすみません。
もう少し書こうと思ったんですが、焦りで今回は少し短めです。
すみません。
それでは