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拾いふだ  作者: lycoris
11/27

お見舞い

「おーし、本を片付けろー。朝の会を始めるぞー!」

朝読書の時間が終わり、先生の呼びかけで委員長がみんなに号令をかける。

「起立!、礼!、着席!、」

ガタガタと騒がしい椅子の音が止む前に先生が話し始める。

「えーと、まず、今日は大山が休みだな。さっき電話があったな。他に休んでるのは居ないなー?」

居たとしても聞こえるはずのない返事を少し待って先生は続けた。

「大山は風邪だとよ。春休みにはしゃぎ過ぎたのか?とにかくお前らも病気には気をつけろよ。」

「はーい。」

何人かの生徒が返事をした。

「おし、じゃあ今日の予定は・・・」


それから昼休み。

休みが出たので当然デザート争奪戦が起きる。

興味はなかったが、謎の使命感に駆られ、参加した。

結果。最初のじゃんけんで僕の一人勝ち。

参加者はもちろんクラス中で騒然となったが、当の本人、僕はあまり驚かなかった。

参加する前から出す手を決め、参加した時からこうなるような気がしていた。

そうして得たプリンは、なんだか食べる気が起きなかった。

なので、今日のお見舞いに行く時に持って行くことにした。

それを聞いたクラスの何人かが感銘を受けたらしく、ついてくる事になった。

だが、あまり大勢押しかけるのも迷惑だろうし、そこで普段からよく遊ぶ奴で今日暇な奴になった。

プリンとプラスチックの小さなスプーンをまとめてランドセルの空いているスペースに積める。


授業が全て終わり、帰りの会を終え、一旦ランドセルを置いてからプリンと他の見舞い品と連絡事項のプリントを入れたかばんを持って再集合となった公園へ向かった。

「あ、いたいた。」

「お、来たか。」

「うん、じゃあ行こうか。」

「ああ、あんまりここに居たくないし。」

齋藤君はそう言って自転車のペダルを漕いだ。

公園から離れて友慈の家に向かう途中で思い出したように齋藤君は僕の荷物を取り上げ自転車のカゴの自分の荷物の上に置いた。

「ありがとう。」

「いや、別にこれくらいは…」

それから僕のペースに合わせて、道案内でもするかのように一歩先を自転車で先導してくれた。


友慈の家に着く。

発案者として僕がチャイムを鳴らした。

「はい、大山ですけど。」

出たのは友慈の母親だった。

「友慈くんのお見舞いに来たんですけど。」

「あらー、そうなの。ありがとう。ちょっと待っててね。」

友慈の母親がドアを開け、「さ、入って入って。友慈も今目が覚めたところだから。」と手招きをする。

靴を脱いで家に上がった僕らは、友慈の部屋にまっすぐ向かった。

部屋に入ると布団から手だけを出してゲームをしている友慈が居た。

入ってきた僕たちに気付いてゲームを一旦止めてこっちを向いた。

「よう。」

片手を上げて友慈が挨拶をする。

「おはよう。」

「よっす。」

僕と齋藤君が順番に返事していく。

「見舞いか?」

「うん。」

友慈が上半身を起こして、猫背になる。

僕たちは友慈の布団の近くに寄ってあぐらをかく。

「これ。」

かばんからプリンと見舞い品を取り出して渡した。

「俺からも。」

友慈が僕のを受け取った後に齋藤君も自分の分を取り出した。

それらを受け取って、手の中で見つめたまま

「ありがとうな、わざわざ。」

無愛想に礼を述べた。

「なんの。」

「これくらいは。」

僕と齋藤君の言葉が偶然続く様な形になった。

「はっはっは。なんだお前ら、はは。」

友慈が笑った。

それに釣られて僕らも少し笑った。

部屋の空気が少し楽になった。

ちょうどそこへ友慈の母親がお菓子とジュースをお盆に乗せて持ってきてくれた。

「あらあら、ありがとうねー。じゃあ、これ、みんなで食べて。」

「あ、ありがとうございます。」

「どうもです。」

「あ、母さん、これ冷蔵庫に入れといて。」

友慈がプリンを差し出す。

「分かったわ。」

友慈の母親が受け取る。

「あ、あの。」

このタイミングで僕も学校からのプリントを手渡した。

「あー、ありがとう。本当、助かるわ。」

友慈の母親がより一層笑顔になった。

「お、サンキュ。ところで「うん、宿題は今日は無かったよ。」」

「うん。」

僕の言葉の真偽を確かめるために目を向けられた齋藤君は、証言するように深く頷いた。

「そっかー、やったぜ。」

「うふふ。それじゃあ私は買い物に行ってくるから少しの間友慈の看病お願い出来る?」

「もう大丈夫だから心配しなくてもいいよ。」

「まあまあそう言わずに。とにかく頼んだわ。」

「はい!」「はい。」


それからすぐに玄関のドアの開閉音がした。

「はぁ、まあお前らもあんま気にしなくていいから。なんならもう帰ってもいいぞ。」

「そういうわけにいくわけないじゃん。」

「…」

「まあ昨日の夜よりはだいぶ楽になったから。それじゃあ、何かして遊ぶか?」

立ち上がろうとする友慈を制止する。

「いや、いいよ。もう少し居て、友慈のお母さんが帰ってきたら帰るよ。」

「ん、まあ、そうしたいならそうすれば。」

友慈は少しつまらなそうにして、脇に置いてあったゲームを取り再開した。

「そうする。」

と、言ってもただ待つのは暇なので、友慈の本棚から漫画を漁った。

齋藤君は黙って下を見つめて少しずつジュースを飲んでいた。

本棚の端で()たれて漫画を読む僕と下を向いて上の空の齋藤君で黙々とゲームをやる友慈を挟んでいる。

いつも騒いでる友慈とそれと一緒になって騒いでる僕、その中に入ってくる齋藤君。他にもいろんな友達もいるが、その一部が集まって出来たいつもと違うこの無口な空間、

提案した時はもっとうるさくなるかと思ってけど、

なんかこういうのも、

嫌いじゃないかも。


でもそんな空間はすぐに壊された。

あるかどうかも分からない、あってもなくてもいい、

元々そんな空間は存在していなかったのかもしれない。

嫌いじゃない、かといって。だから本当はどうでいいものだったかもしれない。

ただ、ただ壊れただけ。

ジュースを飲む手を一旦止めて、齋藤君が呟いた。

「なあ、あのプリンさ。」

「ん?」

声はそこまで大きなものでは無かった。

だが、ゲームをしていても聞き取れるくらいの距離にいた友慈が反応した。

その様子に気付いた僕は漫画を読む意識を齋藤君に傾けた。

「今日の給食のだったんだよ。」

「へぇー、わざわざ取っておいて持ってきてくれたのか。」

「うん、だから早めに食べて。」

「ああ、でも。珍しいな、デザートが残るなんて。」

友慈はゲームを一時停止させ齋藤君との会話に集中した。

なにせ、デザートが残るなんて本当に珍しかったから、その真相を知りたかったのだろう。

比較的活発な子が多いクラスに加え、人気のデザート、先生ですらじゃんけんに参加するプリンが余ったのに誰の手にも渡らなかったのだから。

友慈が手を止めたところで、会話の流れから嫌な予感がした。

もう少し書こうと思ったんですが、そうすると更新が遅れそうだったので一旦区切りをつけました。

誤字や変なところがあったらすみません。


それにしても小学生たちの性格と喋り方を考えるのは難しいものですね。

時々不安になります。


区切ったのだからせめて次回は少しでも早めに上げれるように頑張ります。

最近1週間が早く感じられる…


それでは

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