レモンティにアイを込めて
『ミントティにアイを込めて』の続編です。
ではどうぞ。
なにもする気がおきない。
あたしの頭のなかをぐるぐるまわりつづけるのは彼の声。
頬は溶けてしまうほどあつかった。
「う――…。あたまいたい」
まるで何かが圧迫してあたしの頭をつぶそうとしてるみたいに。
どうしようもなくいたい。
「風邪?これ羽織りな。保健室行くぞ」
彼の学生服は彼の香りがした。
押し返す暇もなく、カラダは宙にうく。
「あたし……、重いでしょ、ひとりで行けるから大丈夫だよ」
「ばか、オレがいないとアンタ何もできないじゃん」
なにそれ。
なんだか飼いならされたような気がしてムカムカした。
だけど頭のいたみでなにも言えない。
――…なんだこれ。
「落ちんなよ?」
そう言われたから彼の背にひっしにしがみついた。
とびこえたはずの校舎がみえる。
やだ、もどりたくない。
きめたんだ。
もうあそこには戻らないって。
だけど彼の足はとまらない。
……ああ、またあそこに戻るのか
あんなところに、意味なんてないのに。
あそこには、なにもないのに。
門のきしんだ音は、うなだれたあたしを哂っていた。
*
「熱があるわね、ねてなさい」
かすかに感じたのは冷房の掠れた声。
それから柔らかいとはお世辞を混ぜても言えないベッドだった。
「きみは、教室にもどりなさい」
「――…でも」
彼があたしをみてる、一緒にいたいとでも言うように。
「彼女のことは私に任せて、ほら行きなさい」
「……ハイ」
保健の先生にうながされた彼はあの場所へともどっていった。
やだ、あたしはやっぱり彼がいなきゃなんにもできない、行かないで。
ことばにならなかった想いと一緒に眠りにおちてゆく。
どうしようもなく、ねむいんだ。
*
白衣をきた女のひとがあたしのおでこに乗せられたタオルを引っくりかえす。
だいぶ良くなったわね、そう呟いてあたしにレモンティを渡す。
せんせいの入れてくれたレモンティ、ばかみたいに甘かった。
「どう?きぶんは」
「……だいじょぶです」
それでも頷くことしかできない無愛想なあたしとほほえむせんせい。
まるでセカイが違ってみえた。
「あの、せんせ……」
「ん?」
「むねがいたくて、くるしいです」
いきぐるしくて、つらくってこわくって。
これが風邪のせいなのかなんて知らない。
だけど、せんせいなら救ってくれるような気がした。
「それはきっと」
きっと?
きっと何ですか?
「彼に会いたいからじゃない?」
「彼……、に会いたいから?」
「ふふ、安心して?ほうかご、迎えにくるって言ってたわよ?」
せんせいの言葉きいたら、むねのいたみが少しだけ和らいだ。
ばかみたいに過敏なあたしを笑っているのか、それとも恋にほほえんでるのか。
せんせいは優しそうなかおしてた。
――ねぇせんせ、どうしたらあなたみたいにきれいになれますか?
あたし、ほんとは何もしらない。
彼の想いもしらない。
だってあたしたちは付き合ってるわけじゃないから。
…end
あ、そこまでお久しぶりじゃないけどお久しぶりです。
一応これは、教師との恋ではありません。れっきとした、生徒同士の恋なのです。
それから、只今絶賛スランプが続いております。
短編はなんとか書けると思うんですが、連載が……書けなさそうです。
とくに『夢想舞踏会』。
内容は浮かんでるのに書けない((殴
がんばって書いてみますが、遅れます。
えっと、それからあと一つ続編があります。
これじゃ終われませんです!
『ハーブティにアイを込めて』です。
よろしくでーす。