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ある意味巨乳祭り ~前編~

「おーほっほっほ、ここですわね…」



長い黒髪をなびかせて颯爽と現れたのは、西園寺小鳥。


前回の出来事など全く覚えてはおらず、意気揚々とスカウトされた事務所へとやってきた。



「ふっ、ついに私もプロデビューですわ。まずはアイドルから始まって、行く行くは女優……そしてイケメン俳優と結婚した私は、自分でプロデュースしたブランドショップを経営し女社長となり―――」



なにやら勝手な妄想を膨らませて、一人高まっている。


しかし見上げた事務所――いや、そこは風俗店が入りそうな汚い雑居ビル。


小鳥の目指す事務所とは、このビルの4階にある芸能事務所『日の出プロダクション』だった。



「くっ――、この私が…こんな聞いた事もない芸能プロへ入るなんて、屈辱ですわ……」



一時は大手プロダクションからのスカウトがあり、ほくそ笑んでいた小鳥だったのだが…


急遽キャンセルされてしまった。


仕方なく声のかかっていた『日の出プロ』入りを決めた。



「ま、まぁいいですわ……とっとと売れて、事務所なんて移籍すれば済むことですわ」



ポジティブに考えて気を取り直す。


そして大きな胸を張って、ポヨポヨと揺らしながら階段を登る…。



「エレベーターも無いなんて、終わってますわ」



家賃が安そうな、まさにボロビルだった。


凄く不安で不満だらけだったが、仕方がないので我慢して4階まで上がると、例の『日の出プロ』が見えてきた。


というより、見えてしまった。


恐らく入り口と思われるドア。


そのドアに張られたA3の用紙。


そこには、手書きで『日の出プロダクション』と書かれていた……。



ガク――――――――。



小鳥は激しくうなだれた。



「本当に、ここで大丈夫なのでしょうか……?」



そう思うのは無理もないのだが、ここまで来て後には引けない。


小鳥は、恐る恐るドアを開いた―――。



バッチーーーーーーッン!!



「痛っ!!」



開けた瞬間――スリッパが飛んできて、小鳥の顔面にクリーンヒット。


痛さよりも驚きで、その場にへたり込んでしまう。



「一体なんですの……?」


「あ~~~、ごめーーん」



顔を上げると、その先には小柄な少女が手をヒラヒラさせて申し訳なさそうにしている。


もちろん相手が少女だと分かれば、元々気性の激しい小鳥は黙ってはいない。



「なんですかいきなり!? それが来客に対するこの事務所のやり方なんですの!?」


「まぁまぁーそう怒りなさんな、たかがスリッパの一つや二つ」



少女は悪戯が大成功した後のように、ニヒヒと口元から八重歯を覗かせ笑っている。


その姿を見て、小鳥は何かピンとくるものがあった。


あったのだが、頭に血が昇ってそれどころではなかった。


小鳥はスクっと立ち上がると、スタスタ歩いてその少女の前に仁王立ちして言った。



「人の顔にスリッパをぶつけておいて、その態度は何ですの!?」


「えーーっ!? だからごめんって謝ったじゃんか~~人違いだってばー。最近、気持ち悪いファンがここまでやってくるようになっちゃってさー」



へへへ~~と、しまりの無い顔でバカっぽく笑う少女。


そんな軽いノリでスリッパバチンなんて、堪ったもんじゃない。


しかも全然悪びれない少女に、更に腹が立つ。


何か言ってやろうと思い、その少女全体を舐めるように見回す。


少女は学校帰りと見られる制服を着ている。


顔は可愛い感じだったが、頭に着けたリボンが小鳥にはとてもウザく見えた。


頭の左右に二つずつ、そして後ろ髪も大きなリボンで止めている。


しかも、そのどれもがピンク色。


そして身体は、全体的に細身で胸は貧乳―――。


―――と、そこで先日のコスプレ大会での出来事を思い出した。



「あなた! あの時のペタンコ娘!!」



小鳥は、少女に指を差して言い放った。


そう――この小生意気な少女は水沢小粒。


そしてここは、小粒が所属する事務所だった。



「誰がペタンコだーーっ!! こんにゃろ~~黙って聞いてれば調子に乗りおってぇ~~!!」



みるみる顔を真っ赤に染めて、怒り心頭の小粒。


胸の事は当然一番気にしているので、そこに触れてはいけない…。


いけなかったのだが、小粒は小鳥の事など綺麗さっぱり忘れていていた。


あっという間に怒りは治まり、目の前のデカ乳女に質問する。



「――あんた誰だっけ?」



両手をだらんとさせ、真顔で小鳥に尋ねる。


もちろん、そう言われたら小鳥もカチンとくるわけだが―――。


こっちは覚えているのに相手は覚えていないという事実に、少し恥ずかしくなり慌てて説明を始める。



「まさか…忘れたんですの!? コスプレ大会があったのは、つい先週ですのよ!?」


「コスプレ~~? んん~~そんなのあったかにゃー……」


「私よ私!! 大会で優勝した、西園寺小鳥ですわっ!!」


「ええ~~? さいおんじ? なんか聞いた事あるにゃ~~」



必死にアピールする小鳥を見て、小粒は考える。


腕を組んで、そりゃもう面倒くさそうに。


そしてポン――と腕を叩いた次の瞬間、猫のように後ろに飛びのいた。



「にゃーーーっ!! ここであったが百年ぶりっ!! スィーツの恨み、晴らさでおくべきかーーっ!!」


「おほほほ、やっと思い出したわね。小胸さんでよろしかったか―――」



小鳥が言い終わる前に小粒の引っ掻き攻撃が顔面へと炸裂し、会話が中断される。



「いやーーーーっ!!! 顔はやめ――やめなさい!!!」


「そんなの知るかボケーーっ!! 二度と外を歩けない顔にしてやるのだ~~!!」


「ゆ――許しませんわ!! 私の綺麗な顔に傷をつけようなど―――」



反撃を開始した小鳥と、攻撃の手を休めない小粒。


お互いが顔を引っ掻きあい、二人の顔はどんどん真っ赤に腫れあがっていく…。



いい加減勝負がつかないと判断した二人は、一度離れて態勢を立て直す。



「ハァ…ハァ…おーっほっほ……そろそろ貴方を葬り去りますわ。The end ですわよ?」


「そうかにゃ~~? お前は次の攻撃で死ぬだろう――なーんちゃって~、ひゃっひゃっひゃ」



体力のある小粒が若干有利であったが、所詮子供の喧嘩。


大した差はない。


そして二人が動き出し、お互いを掴んだ瞬間―――マネージャーの高島が帰ってきた。



ガチャ――――。



「ただいまー。小粒、ちゃんと留守番して――」



「死ねーーっ!!」

「殺しますわ!!」



帰ってきて早々、予想外の喧騒に声が詰まる高島。


だが大人なので動じない。



「止めなさい!!」



小さい子供を叱り付けるかの如く、声を張る高島。


その声に、二人はピタ――っと動きを止める。


しかし、その一瞬を小粒は見逃さなかった。



「――隙あり!! 死ねーーーっ!! ファイナルフィンガーーーーっ!!!」



叫びながら小粒は、二本の指を下から小鳥の鼻の穴に突き刺した。



「―――フガッ!?」



その指があまりに奥まで突き刺さった為、一瞬で涙目の小鳥。


ハンパない痛さだったが、キッ――っとすぐさま睨みつけ、小粒の鼻にも指をぶっ刺す。



「アギャ!?」



その光景を高島が黙って見ているわけはなく、すぐさま近寄って二人に向けて重いゲンコツを脳天に叩き込んだ。



ゴッチーーーーーン!!!



「ハギャ!?」

「フゴッ!?」



ゲンコツを貰った瞬間―――


二人の指が更に鼻の奥へと突き刺さり、慌ててお互いの指を引き抜く。



「痛い痛い痛い痛いーーーっ!! は、鼻が死―――死ぬっ!!!」


「は――鼻の感覚がっ、感覚がおかしいですわーーーっ!!!」



悶絶して転げまわる二人。


互いに鼻血を吹いて、床は血まみれのドロドロ状態に……。


見かねた高島は、片手を頭に当て溜息をつくと一息に言い放った。



「バカやってないで、汚した床をさっさと吹きなさい!!!」



高島の怒りのこもった言葉で、小粒はすぐに大人しくなり立ち上がった。


鼻血をどくどく垂れ流しながら。


その様子を見た小鳥はあざけるように、笑いながら小粒に言う。



「おほほほ、ザマーないですわね、早く掃除なさい」


「貴方もです!! 小鳥!!」


「へ――?」

 

「全く――出勤初日からなにやってるんですか!!」



高島に怒られた小鳥は、すみません―――と素直に謝った。


すかさず小粒がバーカバーカ――と楽しそうに罵るが、再びゲンコツを食らい大人しくなった。



◇◆◆◇



その後床の掃除を終えた二人は、血まみれのスプラッターな姿のままソファーで休んでいた。



「貴方がこの事務所だったなんて……最悪ですわ」


「それはこっちのセリフだってーの」



高島から改めてお互いを紹介された二人は、立場を理解して一応大人しくしていた。



「麗香ちゃーん、仕事はー?」


「有りません――有ったとしても、そんな腫れた顔で仕事が出来ますか!?」


「出来ないです……」



当たり前の事を言われて、言い返せない小粒。


しかし、仕事の無さは深刻だった。


先週――大会で目立った小粒であったが、それから入った仕事は一つも無い。


タレントも小粒一人―――以前はもっと所属していたのだが、みんな辞めてしまい現在の状況。


危機感を感じた高島は、なんとか事務所を立て直そうと西園寺小鳥をスカウトしたのだった。



「小粒――やる事ないのでしたら、小鳥にお茶でも入れてあげなさい」


「えぇ~~なんで私が~~」



相当嫌そうだったが、それでもお茶を淹れに行く小粒。


高島の言う事は、結構素直に聞くのだ。



そんな小粒だったが、お湯を沸かしている最中に突然ニヤリとしながら、先程投げたスリッパを取ってくると、それを小鳥にすすめた。



「ごめーーん、さっきのお詫びに靴拭いてあげるから、その間これでも履いてて~~」


「え? そ、そお? 随分と態度が変わりましたのね?」



折角の厚意なので小鳥は素直に靴を脱ぎ、スリッパを履いた。


小粒は靴を受け取ると、スタスタ早歩きで奥へ――お湯を沸かしている台所へと消えて行く。



「ケッ―――だ~~れがこんなもん拭くかってーの、ポイッ」



その辺に靴を放り投げ、ちゃっちゃとお茶を淹れて小鳥に持って行く。



「はいお茶。まぁ適当に、のんびりすればいいんじゃん?」


「ど、どうも…ですわ」



微妙な小鳥のお礼に全く興味を示さず、小粒は側にあった鞄を手に取り言った。



「麗香ちゃん、私もう帰っていいかなー?」


「そうね。これから小鳥と話しがあるし、たまには勉強でもしなさい」


「へーーい。んじゃ、おっさき~~♪」



スタコラ逃げるように事務所を出て行く小粒。


なんだか怪しい雰囲気だったが、気にしても仕方ないので出されたお茶を一口すする小鳥。



「げ――苦っ! なんですの、これ!?」



すすったお茶は、スーパー濃いお茶だった。



「ふん、子供ですわね」



下らない悪戯にげんなりした小鳥だったが、そういえば靴はどうしたんだろうと、ふと足元を見る。



「おや? 変なスリッパですわね――」



来客用にしては、随分とチャチなビニール製。


先程は小粒が履かせてくれたので、よく見なかったがどうも可笑しい……。


手にとって確認してみる。



「……………」



そのスリッパには、『Toilette』と書かれた文字。


しかも、その下には『♂』のマーク……。


怒りでワナワナと振るえ出す小鳥。



「最悪ですわ……絶対に許しません!! 次は、間違いなく殺しますわっ!!!」



今どき小学生の男子ですらやりそうもない悪戯に、本気で怒り心頭の小鳥だった。




◇◆◆◇ ~~サービスタイム、突入~~




チャポーーーーーーン



「――なんでデカ乳が一緒の事務所なの~~~?」


「そんな事言っても仕方ないガオ、事務所の事情ガオ」



ここは小粒の自宅。


今はのんびり入浴中―――ペットだか使い魔だか、正体不明の喋るヌイグルミと一緒に。



「むぅ~~そりゃそうかもだけどさー、あいつじゃなくてもいいじゃんかー」


「それも仕方ないガオ。質の良い原石は、みんな大手事務所に行くガオ」


「ムカ! それって、私が質の悪い原石って言いたいのかーーっ!?」


「そうじゃない――モガモガ……」



問答無用でヌイグルミを湯船に沈める。


なにやら苦しそうにしている姿を見て、息出来ないと死ぬのかな――等と思っていたが、大した興味もないので早々に手を離す。



「プハッ、助かったガオ…」



しかし――どうして自分の胸は大きくならないのかと、改めて触ってみる。


触るというか、念入りにマッサージ。


まだ小粒はあきらめていなかった。


きっとまだ成長期――そう願いを込めて揉みしだく……。



「小粒ちゃんも、やっぱり女の子ガオね」


「へ? 何が?」


「そうやってモミモミしてると、ちょっと柔らかそうガオ」



そう言われて、小粒は自分の胸を見る。


僅かに膨らんだそこは、丸みを帯びていて確かに柔らかい。


――が、はっきり言ってブラなど着ける必要もない、なだらかな丘だった。


これでは、服を着たらペタンコと言われても仕方ない。


小粒自信も、分かっていた事だった。


改めて、ズーーンと激しくヘコむ小粒。



「そんながっかりする事ないガオ、ペタンコだって一つの個性ガオ」



ピロピロに励まされる。


ぶっちゃげ、ちょっと皮肉まじりで言ったピロピロだったわけだが、その言葉で俄然元気を取り戻した小粒は、拳を握って勢い良く立ち上がった。



「そうだっ! これは私の個性! オッパイなんかあったって、どうせ垂れる運命なのだっ!」


「おお~~その意気ガオ~~パチパチ…」



手が届かないピロピロは、口でパチパチ言って小粒をあおる。


ただ、その貧乳の勇姿が面白かっただけなのだが。


しかし、小粒はお調子者。


すっかりその気になり、アイドルポーズを連発している。



「どお? どお? 可愛いかにゃ~~?」



素っ裸でポーズを決めてニッコリVサイン。


それを見たピロピロは、出るはずもない鼻血を吹き出しそうになる。



「ブーーッ!! な――中々可愛いガオ――」



元気っ子の――全裸で笑顔のアイドルVサイン――。


はっきり言って、スーパー可愛かった。


小粒には内緒にしているが、ピロピロは、元は人型の男性宇宙人である。


その身体が地球の環境には適していない為、敢えて少女に好かれそうな可愛いヌイグルミの格好をしていただけだった。


それだけに、本人の興奮は最高潮であった。



「もっと! もっと違う角度で!!」


「こ、こうかな?」


「い、いいガオ……ミラクルキュートなのガオ!!」


「そ、そこまで言われると、さすがに照れるにゃ~~」



健康的に張りのある太もも…


水を弾く、ほんのり上気して赤く染まったピチピチの肌……


さすがは女子高生である。


小ぶりだけど、引き締まったお尻は弾力がありそうだ。



「最高ガオ……」


「ふっふ~~ん、そうでしょそうでしょ――小粒ちゃんの裸姿は日本一なのだーっ!!」



エッヘンと、無い胸を堂々と張る。


その――ただのハト胸のような部分の中心にある、二つの小粒…。


そこだけは、普通に女の子だった。



残念ながら小粒のオンステージは終わり―――


まあピロピロは充分堪能したのだったが、これからお身体洗浄タイムです。


ふんふんふ~~ん♪――とご機嫌な小粒は全身に泡を塗りたくっている。


そしておもむろにピロピロを掴んで、



「今日は特別じゃ、一緒に洗ってあげるぞいっ!」



そう言った小粒はピロピロに泡をたっぷりと付けた。


そしてそのヌイグルミをスポンジ代わりにして、身体を洗いだす……。



「ゴッシゴッシゴッシ、ふふふのふぅ~~♪」


(な――なんとおーー!! なんですかこれは!? 堪らないガオ!!)



グイグイと小粒の身体に押し付け、擦られるピロピロはまさに大興奮。


しかし、それは小粒には内緒……もちろん、口には一切ださない。


左手から右手……ムチムチの足を洗って――足の裏をガシガシ擦り、思わずドMが目覚めそうになるピロピロ。



(ムッフーーッ! 楽しすぎるガオ……あの場所はまだガオか~~?)



ピロが期待してワクワクしていると、ついにその時が訪れた。


おもむろに、胸を擦り出す小粒。



「きゃん! くすぐったいよピロピロ~~動くなー」


「…………」



期待していたわりに、全くといっていい程弾力の無いそこ。


しかも、コリコリとした先端が当たり、ただ硬いだけ……。


激しくげんなりするピロピロだったが―――。


次の瞬間、幸福が訪れる。



(キターーーーッ!!! まさかの股間洗浄ーーーっ!!!)



当然のように、そこも洗う小粒だったのだが――まさか自分を使って洗うとは、思ってなかったピロピロ。


ふいを突かれて、思わず余計に興奮しだす。



(ムッハ~~!! なにやらプニプニ柔らかいガオ!! 泡で何も見えないのが悔しいガオッ!!!)



しばしその感触を堪能したかったピロであったが、あれが当たって笑い出す。



「ぎゃはははは!! こ、こしょばいガオ!! け、毛が当たって……ぎゃはは! 我慢出来ないガオーーっ!!!」


「やん! う、動くなピロピロ~~……きゃん! ちょ――静かにしろーーっ!!」



ピロが激しく手足をバタつかせたせいで、そこの泡はすっかり流れて丸見えになった。


当然、至近距離で凝視するピロ……。



「ぬおおおおーーーーっ!!! 秘密の花園がーーっ!?」



実際には、実年齢のかなり低いピロ。


人間での年齢では、小粒よりも若かった。


なので、初めてみたそこに驚いて大量の鼻血を放出してしまった。


一体どういう仕組みかは、もちろん不明である。



「のわっ!! 何この赤い液体は!? ちょっとピロちゃん!?」


「はわわわ……女…女の子の――小粒ちゃんのあそこ~~~フニャ…」



既に意識が朦朧もうろうとしているのか、目を回しピクピクしているピロピロ…。


その様子を見た小粒は、段々怒りが込み上げてきた。



「まさか貴様ぁ~~、Hな妄想してたのかーーーっ!!!」


「も…妄想じゃない…ガオ……現実ガオよ……」


「うっるさーーーっい!! 死ねーーーっ!!!」



ピューーーーーーー。



お風呂場の窓から、思いっきり外に投げ出されたピロ。


その後彼は道路に落ち、車にひかれてしまう。


更には野良犬に食えられ、遠くへと旅立ち、翌朝まで戻って来れないのであった。


実はこの後、小粒の身体に異変が起き始めていたのだったが、ピロが近くにいなかった為その悲劇は回避出来なかった。




◇◆◆◇ ~~翌朝~~




目が覚めた小粒は、いつもの感じとは違う寝起きに違和感を感じていた。


うつ伏せに寝ていたわけだが、何か胸の辺りがポヨポヨしている…。


まだ完全に覚醒していない小粒は、う~~んと寝返りを打って仰向けになる。


すると―――なんだか胸が重い……。



(ん? なぁに……? 何か乗っかってる?)



気になった小粒は、おもむろに自分の胸の辺りをサワサワして―――


――ビックリして飛び起きた。



「な――これは―――!!!」



両手で胸を揉む……。


超デカい―――。


慌ててパジャマを脱ぐ……。


当然、必要のないブラジャーなど着けてはいなかったので、脱いだとたんに現れる二つの双璧。


見慣れない、初めてのそれに再び驚いた小粒は、ゆっくりとまた触ってみる…。


デ――デカい―――。


たぶん…小鳥ぐらいの大きさ―――いや、もしかしたらそれ以上―――。


パツンパツンに張ったその胸は、まさに大きな水風船のようだった。



「つ――ついに私の時代がキターーーーーッ!!!!」



大喜びで鏡の前に立ち、自分の姿をいろんな角度で廻し見る。



「ふふん♪ 見よ! この巨乳!! これでもう、完璧なアイドルだぜい!! ふっふっふ…小粒ちゃんに、死角はないのだっ!!!」



手を高く振り上げ、宣言する小粒。


しかし、その姿には激しく違和感があった。


元々、細身で小柄な小粒。


その胸に、突然現れた巨乳…。


その形は綺麗なオワン型をしており、しかも重力に逆らって上にツンと向いていた。


どう考えても可笑しいこの状況で、小粒は何の疑いも見せない。


自分にとって都合の良い事には、一切の疑いをしない――まさにご都合主義全開であった。



「よーーっし! 早速制服に着替えて、学校へゴーだぞっ!!」



が、しばし考える……。


これに合うブラなど持ってはいない。


当然である。


だが、



「まいっか♪ 放課後買おっと…」



構わずノーブラのまま、シャツに手を通す。


そして、ボタンを締めようとして固まる…。



「じぇ、じぇんじぇん届かない―――」



それも当然である。


一気に数十センチ増した胸囲では、合うシャツなど小粒にはなかった。



「ふふふ……恐るべしは巨乳の力……今日は学校行くのやーめよっと!」



あきらめの早さも小粒の持ち味であり、良くない一面でもある。


とりあえず何か着なくていけない―――。


そう思った小粒は、普段ダボユルファッションをする時に着るセーターを取り出した。



「これなら着れるっしょ」



よっこらせ――と、年寄りくさい掛け声と共に頭から被り、長い後ろ髪をバサッと跳ね上げる。


そしてセーターを下げてまたもや固まったしまう。



「パンパンじゃんよーー、しかもこれは……ちょっち恥ずかしいぞい」



パツンパツンに張った薄手のセーター。


完全に伸びてしまって、少し透けてしまっている。


しかも、先端がくっきりポチッとしている。



「これは無理っ!!」



そう思ったが他に着るものも思い浮かばないので、とりあえずその上から上着を羽織る。


当然、上着のボタンは締まらない。


これでいっか―――と、再び軽いノリで済ませた小粒は、適当にミニスカートとニーソックスを組み合わせて部屋を出る。


途中、洗面台でいろいろと準備を整えたら、家族に声をかける。



「ママーーっ、今日は朝ごはんいらなーーい。行ってきまーーーっす!」



私服がバレないように家を出る。


いきなり娘の胸が大きくなったら、どういう反応をするのか――家族に見せたかったが、自分も恥ずかしいので素早く退散。


そして駅前のデパート――その中のランジェリーショップへと向かう。



「見てる見てる……みんな見てますな~~、ふっふっふ……」



駅へと向かう道中…すれ違う男性のほぼ100パーセントが、小粒の胸に熱い視線を送ってくる。


当たり前であった―――。


ブラも着けていない――しかも重力判定の可笑しいポッチン胸を、ポヨンポヨンさせながら歩いているのである。


中にはこっそり、写メを撮る男性も居たぐらいだ。


かなりのエロ熱視線を集めていたわけだが、当の小粒は注目を浴びてかなりの上機嫌。



「ルンララ~~ルンララ~~♪」



何かのアニメっぽいメロディーを口ずさみながら、軽快にスキップを始める。


しかし―――



「痛っ!! 痛いぃ~~胸が―――!!」



胸を押さえて立ち止まる…。


あまりにも胸があっちこっちに引っ張られ、かなり痛いのである。


これも当たり前であった。


そんな巨大な質量の水風船を振り回したら、余計なGがかかって大変である。


さすが、巨乳初心者の小粒だった。




◇◆◆◇




小粒はマックでコーヒーにポテチをつまんでいた。


颯爽と駅前にやって来たものの、時間が早すぎたのだ。


仕方がないので、デパートの開店まで時間を潰す…。


暇だったので、携帯を取り出して友達宛てにメールを打ってみる。



『なんか朝起きたら巨乳になってたんで、学校行かなーーい』



可愛いデコメで送信。


一斉に数人へと送ったので、続々と返信してくる。



『へーー良かったね』

『もっとまともな遅刻の言い訳しろ!! ボケッ!!』

『胸が膿んで、黄色い液体が出たってみんなに言っとくね』

『そりゃ大変だ、私も巨乳になったらどおっすかな』



誰一人として、信じている者は居なかった。


普段の行いが重要なのである。



「まいっか……めんどくさい」



興味を失って、携帯をしまう。



その後しばし待ってランジェリーショップへと向かい、念願の下着&私服も何着かゲット!


しかも毎回店員さんに、



「形が良くて、大きな胸ですねー」



等と褒められるもんだから、小粒は有頂天だった。



「ふっふっふ……奨められ、思わずセクシーな下着を買ってしまったのだ――」



現在小粒は、人生初とも言えるセクシーランジェリーを装着していた。


もちろん、上下お揃いの。


ぶっちゃげ下はTバックだったので、必死に手で押さえて駅の階段を登る。


しかし――はっきり言って、それでも下からは男性がチラチラ覗いていた。


たまに見えてしまうそのT型に、何人の男の心が癒された事だったか…。



そして電車へ乗り込む――。



「変だなー……今日はやけに男の人ばっかだ―――」



若干混雑していた車両の中――小粒が立っていた周辺には、大勢の男性が取り囲んでいた。


実は、混んでいたのはこの車両だけ。


得てして、巨乳という物は男を呼び寄せてしまうのである。


しかも小粒はかなりの童顔で小柄だった為、日本人に多く見られる『ロリ巨乳好き』を集めてしまったのだった。


そんな事とはつゆ知らず、小粒は何か忘れていたことに気が付いた。



「なんだっけ――?」



それはヌイグルミ宇宙人のピロピロであったが、思い出す前に興味を無くしてしまう。


それから何駅か目で電車を降りた小粒は、真っ直ぐ事務所を目指していた。


まあ他に行くあてもなかったので、最善の選択だ。



「ぐふふふ……小粒ちゃんの変貌ぶりを見て、麗香ちゃん――なんて言うのかにゃー」



ニヤニヤ顔の小粒は意気揚々と、事務所のドアを開けた。


中には高島が居て、デスクに向かってパソコンを操作している。



「麗香ちゃーーん、おっはよーーっ!」


「……あら? 小粒? 今日はやけに早―――」



早いのね――と続けようとした高島だったが、小粒の胸を見て仰天する。



「―――って! 貴方誰よ!?」


「へっへ~~ん、小粒ちゃんだよーーん」



胸を張ってまさに得意気な小粒である。


しかし高島は、あきれたような顔をして言った。



「ハァー、バカな事やってないでこっち来なさい…丁度話しがあったから――」


「あーーっ! 信じてないな!? この胸は自前だぞい!!」


「はいはい分かった分かった……もう――小粒は呑気でいいわね…」



全く信用しない高島。


無理も無い、普通たった一日で貧乳から巨乳へと成長する生き物などは、この世には居ない。


そこのところ、小粒には真剣に考えてほしいものだが…。


小粒本人は、高島の興味の無い素振りにご立腹。


スタスタ歩いていき、高島のデスクのすぐ横までくると、おもむろにブラのホックを外し服を持ち上げる。



「麗香ちゃ~ん、ほらほら~~」



日本女性には恥じらいという、外人さんも大変喜ぶ文化がある。


しかしそんなものどこ吹く風―――。


全開にしたおっぱいをプルプルと揺すり、高島へと猛アピールする小粒。


当然見せられた高島は、ただ呆然と――あきらかに小粒には似合わない、それを見つめるばかり。



「ほれほれ~~触って確かめるといいぞーー」



両手で巨乳をプランプランさせ、大喜びの小粒。


仮にもアイドルなのだが……。


そこまでしても、微動だにしなかった高島だったのだが、何やら考え込んでその胸を触り始めた。



「いやん、麗香ちゃんだいた~~ん!!」


「…………」



いやんいやんと首を振る小粒を、冷めた目で見つめていた高島だったが、決定的な一言を言い放った。



「小粒…貴方のコンプレックスはもちろん知っているけれど、ウチのタレントにシリコン胸は不要なの。絶対すぐに元に戻しなさい」


「ほ、本物なんだってーーーっ!!」



すぐに言い返した小粒だったが、全く受け付けてもらえない。


それどころか、高島はかなり怒っていた。



「どうすんのよ……今日は夕方撮影会があるって言ってあったでしょ!?」


「う――うん……だから今日はこれで行けば、みんな喜ぶかな――なんて…はは…」


「いきなり胸が大きくなった貴方を、連れて行けるわけないでしょ!!」



ごもっともである。


そんな事されても、ファンは喜ばない。


それどころか胸整形アイドルとして、評判はガタ落ちに―――。


まさかそんなオチが待っているなんて、超ポジティブな小粒には全く予想出来ない展開だった。



「まあいいわ…明日のロケはそれで行ってもらうから。来週中には元に戻しなさいよ!」


「ロケ?」


「社長がなんとか仕事取ってきてくれたのよ。泊まりだから、ちゃんと準備してきなさい」



そう言うと、高島は鞄を手に取り急いで事務所を出ようとする。



「ちょっと待ってよ麗香ちゃん! ロケの内容教えてよ~~」


「貴方の仕事キャンセルしなくちゃいけないでしょ!? 忙しいの!! 後でメールします!!」



バタン――――――。



一人取り残された小粒。


その表情は、既に泣き出す一歩手前だった。


しかし、バックから鏡を取り出すと、必死に脇の下を確認し出す。


聞いた事があった。


胸にシリコンを入れる時、脇の下を切ってそこから入れるのだと。


小粒は念の為両方の脇を確認したが、当然切った後などなかった。



「やっぱり本物だよねー…」



激しく落ち込みつつ、事務所を出る。


腰を曲げて、下を見ながらトボトボ歩く。


さっきまでのハイテンションが嘘のように、今はどんよりと小粒の周りだけ暗雲が立ち込めているかのようだった。



「とほほ……現実って厳しいにゃー…」



しかし、悲劇はそれで終わりではなかった。


そのまま失意のどん底で帰宅した小粒は、家族にその胸を見られ、またもやシリコン疑惑が浮上。


両親にこっぴどく怒られ――いや、最後には母親が泣き出す始末。



「ごめんなさいごめんなさい……貧乳に育てたお母さんを許して!」



いろんな意味で、もう泥沼だった。


テンション120パーセントダウンし、もう死んでしまいたいくらいのダメージを負いつつ、小粒はフラフラと自室まで辿り着いた。


まるっきりの無表情で、ドサッとそのままベッドに倒れ込む…。


とその時、例の警報が鳴った―――。



ウ~~~~ピ~~~~ヒャララ~~~~~。



「はにゃ!? 宇宙人!? …………ま、どうでもいいか……」



一瞬起き上がった小粒だったが、それ以上の元気は無く、すぐさまふて寝してしまう。


しかし――すぐにガバッと起き上がる。



「ピロピロ!! ピロちゃんどこ!?」



その存在を思い出し、慌てて部屋中探しまくる…。


でもどこにも見当たらない。


あきらめようかと思った小粒だったが、ベランダで干からびているヌイグルミを発見。


急いで拾い上げたが、車にひかれたであろうタイヤの跡や、犬の唾液の匂い等でとにかく汚かった。



「ピロちゃん……こんな姿になって―――」



悲しそうな顔でヌイグルミを見つめていた小粒だったが、



「くさっ!!」



と言って、そのままピロはゴミ箱へとポイされてしまった。


当の本人―――ピロピロは意識はあったものの、力を使い果たしてしまい只今回復中だった。


しかし――先程鳴らした警報――もちろんピロピロが発したものだったが、それは小粒に向けてのものであった…。



そんなピロの警告などすぐに忘れた小粒は、上半身裸で鏡の前に立っていた。



「あ~あ……どうして大きくなっちゃったのーー?」



あんなに嬉しかった胸だったが、今はとっても恨めしい。



「時間をかけて大きくなれば、何も問題はなかったのにさっ」



それでも、まだ普通に成長したと思っているらしく、どこまでおバカなんだか…。



「あーーっ、もお!! 母乳でもドピュッと出ちゃって、縮めばいいのに!!」



賢明に乳を搾るが出るはずもない…。


その後、しばらく無駄な抵抗を続けていたが、あきらめて結局普通に寝てしまった小粒―――。



そして夜が明けた―――。



朝―――。



小粒は普通に目を覚ました。



―――ガバッと飛び起きる。



そして胸を見る―――。



やっぱりデカいままだった…。



しかし、どうも胸がかゆくて片手で揉んだら―――



ドピュ―――――。



「え……?」



じんわりと濡れるパジャマ……。



何が起こったのか分からない小粒は、恐る恐るパジャマを脱いだ。


すると――胸の先端には、白い液体がべっとりと付いている…。



「あはははー……嘘に決まってるって~~やだなーもー…」



信じられない現象に、ただ唖然としてしまう。


しかしまた湧き上がる、胸の痒み…。


思わず両手で胸を揉んでしまった。


その瞬間―――ピュッと飛び出す母乳…。


半ばやけくそでそのまま揉み続けると、面白いようにピュッピュピュッピュと飛び出す母乳。



「エ~~~ンなにこれ~~~」



もう悲しみを通り越して、怒りが込み上げてきた。


試しに少し舐めてみる……



「甘い―――」



間違いなく、カルシゥムたっぷりのあの液体だった……。




3話へ続く

え~~っと……読みたい人だけ読めばいいんじゃないかな^^;


いや! 違うんですよ! 僕は脅されてこんな小説を書いたんです!!


誰だ!! 僕を脅すのは!?


出て来い!! そこに居るのか!?


…………(笑)


笑って許そうよw 次もあるんだしw

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