たんぽぽ。
1日1時間。
その時間で書けたところまで投稿する。
いつか、1時間で完結する物語もあるかもしれない。
けれど、完成させないという選択をすることも、
人間らしさなのかもしれない。
この物語の続きをどうするかは、僕にもまだ分からない。
だから、続きはあなたの想像通りに。
世の中に蔓延る有象無象。
私はこの特等席でいつも眺めていた。
日が落ちるのがずいぶん遅くなった頃。
甲高い声と、この時期になるとこのぐらいの年の子が放つツンとした匂いが耳と鼻に響く。
この街の小学生だ。
この匂いはというと、プールの匂いらしい。
私は入ったことはないけど。
「ユウキ!お前には才能がないんだよ!!俺と違って!!」
「ご、ごめん。」
「まぁ良いんじゃね。天才の俺がいたらどのみち勝てねーし!じゃあな!。」
「・・・はぁ。どうしよう。また最下位だった。夏休み中ずっとだ。何やってもうまくいかないな。」
情けない少年だな。そんなに落ち込んで。
「え、え!?たんぽぽ!?もしかして今話しかけたのって君・・・?」
そうだけど。てか他に誰もいないじゃない。
「わぁ。・・・綺麗。」
まぁね。よく言われる。で、何をそんなに落ち込んでるのよ。
「水泳クラブで、ずっと最下位で。それだけじゃなくて、何やってもうまくいかなくて・・・。僕。なんで人間に生まれちゃったんだろう。」
贅沢な悩みね。ねぇ知ってる?私たちはたとえ1tもの圧力で踏まれても、一週間後には起き上がるのよ。
起き上がる方向が変わることもあるけれど、起き上がるの。たとえ踏み潰されても。
「いいな。僕もたんぽぽだったらよかったのに。」
ふーん。本気でそう思うならなってみる?たんぽぽに。
「え、なれるの!?」
うん。私と体を交換するの。ただし、一週間は戻れないけどね。
「・・・大丈夫。人間はしんどいもん。」
そっ。ちょうどよかった。私も人間には興味があったの。
「水泳クラブは開放は8時だけど、レッスンは毎日10時からだから。忘れずに行ってね。」
わかったわ。しょうがないわね。じゃあ契約成立ね。
「たんっぽぽを楽しんで。」
グチャ。
痛!!!何するんだよ!!って、ほんとに入れ替わってる!?
「せいぜい頑張って起き上がりなさい。」
こういってたんぽぽさんは立ち去った。地面に這いつくばった僕はなかなか動くことはできない。
そうこうしているうちに日は落ち、夜が過ぎ、あさが来た。
夏休みとはいえこの道は騒がしい。
目の前の駅の時計の短い針は7を指していた。7時だ。
子供達は休みだとしても大人はスーツを着て仕事に行っている。
大変だな。
そんなこんなで初めてこんなに早くの駅前で人々を眺めていた僕は、7:30に見知った顔を見つけた。
いつも僕を揶揄ってくるシュン君だ。まだレッスンの時間じゃないのに。
声をかけようとしたけど、たんぽぽの僕の言葉は伝わらなかった。
それから少し時間が経って9:30。僕が来た。
目が合った気がしたけど、話しかけられなかった。
レッスンにはちゃんと行ってくれるみたいだ。
僕は今日はレッスンに行かなくていい。なんて嬉しいことだろう。
地面に這いつくばった僕は今は起き上がることに集中しようと頑張った。
けれど、なかなかうまく行かない。
そんな日が6日間続き、今日で一週間。
起き上がるのは難しくて、少しずつ少しずつしか起きれなかったけど、ついに明日には元に戻れそうだ。
頑張って起きあがろうとしてきた甲斐があった。少し自分にもできることがあるんじゃないかと自信がついた気がした。明日は約束7日目だ。そろそろ元に戻してもらおう。
グチャ。
イタタタ。なんだ。
「久々だな。」
あ、たんぽぽさん。なんで踏むんだよ。
「理由なんてないわ。人生なんてそんなもんよ。じゃ。」
待って。そろそろ元に戻して欲しいんだ。
今ならもう少し水泳も頑張れるがして。
「何言ってるのよ。そんな体に戻りたくないわ。ちゃんと起き上がってから行ってちょうだい。」
そんな、踏んだのは君じゃないか!もう少しだったのに。
「ま、。せいぜい頑張ることね。あなたが望んだことなんだから。」
這いつくばったままの僕は、何も言い返すことができなかった。
その日の太陽が沈み、夜が来て、朝日が僕の目を覚ました。
まずは起き上がらないと。体を返してもらうことができない。
7:30にシュンくんを見送って、9:30に僕を見つけて話しかけたけど無視されて、4日が過ぎた頃、前と同じくらいに起き上がっていた。前は6日かかったけど、今回は5日目の明日には起き上がれそうだ。
そして同じ日がもう1日続き、6日目の朝。完全に起き上がった僕は達成感と共に。
シュン君を見送り、僕を引き留めた。
待って!!!
「あら。」
起き上がったよ。元に戻して。
「こないだより早く戻れたのね。明日まだ戻ってなかったら、もう少し人間を楽しもうと思ったけど、良いわ。戻してあげる。けどその前に、たんぽぽはどうだった?」
地面から這いつくばって起きるのはしんどいけど、案外悪くなかった。
「そっ。」




