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第3話 報酬が高い依頼はだいたい怪しい

冒険者ギルドは、朝から騒がしかった。


 酒の匂いと、汗の匂いと、貧困の匂い。


 混ざってる。


 私は入口で立ち止まった。


「帰る。」


「入ったばっかりだろ!」


 ガルドが肩を掴んだ。


「面倒。」


「働かないと死ぬぞ!」


 死ぬのは面倒だ。


 だから仕方なく中に入る。


 掲示板の前には、依頼書がびっしり貼られていた。


 ゴブリン討伐。


 護衛。


 荷物運び。


 どれも安い。


 非常に安い。


「銅貨5枚……」


 少なすぎる。


「地道にやるしかないな」


 ガルドが言った。


 地道、嫌い。


 非効率。


 その時、一枚の依頼書が目に入る。


———銀貨25枚


 これだ。


 それを剥がす。


「おい」


 ガルドが覗き込む。


「銀貨25枚!?」


 声が裏返った。


 読む。


――森の奥に現れた“影”の調査


 それだけ。


 討伐ではない。


 調査。


 それだけで銀貨25枚。


 怪しい。


 非常に怪しい。


「宿屋の修理費を差し引いても釣りがくる…だがやめとけ。」


 ガルドが即座に言った。


 こういうのは危険———


 正しい判断だ。


 間違いなく危険。


 だが。


 銀貨25枚。宿屋の修理費を差し引いて18枚。


 パンどころか、肉も食べられる。


 ケーキも買える。


 数日ではない。


 数週間、生きられる。


 魅力的。


 腹が鳴った。


 ぐうぅ……


 ガルドがこちらを見る。


「……やる気か?」


 依頼書を見た。


 言った。


「調査だけ。」


「レティ。」


「爆発しない。」


「それはお前次第だろ。」


 違う。


 私は爆発させていない。


 たぶん。



「調査だけなら安全だ。」


 言った。


 ガルドが目を細める。


「その台詞、この前も聞いたぞ。」


 無視。


 受付へ向かう。


 受付嬢が微笑んだ。


「依頼ですか?」


 私は依頼書を差し出した。


 受付嬢の笑顔が、一瞬だけ固まった。


 ほんの一瞬。


 見逃さなかった。


「……こちらの依頼がですね…」


「問題ない。」


「え?」


「受ける。」


 ガルドがため息をついた。


 受付嬢は少し迷ってから言った。


「この依頼、すでに何人かが向かっていますが……まだ戻っていません。」


 問題ない。


 戻っていないだけ。


 死んだとは言ってない。


「調査だけ。」


 繰り返した。


 受付嬢はゆっくり頷いた。


「……では、お願いします。」


 依頼は成立した。


 ギルドを出る。


 ガルドが言った。


「絶対に危険だぞ。」


「調査だけ。」


「お前が言うと不安しかない。」


 意味がわからない。


 慎重だ。


 無駄なことはしない。


 森の方を見る。


 昨日とは違う森。


 そして銀貨25枚の価値がある。


 それだけだ。


「帰る。」


「まだ行ってない!!」


 ガルドが叫んだ。


 仕方ない。


 行くしかない。

 

 銀貨25枚のために。


 調査だけ。

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