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金欠魔導士レティシアは働きたくない  作者: クッソデカパイのナギ


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第15話 働きたくないのに、魔物は働きたがる

 森は嫌い。

 

 歩くの疲れる。


 虫いる。


 土で汚れる。


 いいことがない。


 本当にない。


「依頼はこの辺りだ。」


 ガルドが言った。


 地図を見ている。


 真面目。


 いいこと。


 任せる。


 私は歩かない理由を探す。


 けど、ない。


 最悪。


「魔物、いる?」


「気配はある。」


 あるんだ。


 帰りたい。


 本当に。


 その時。


 ガサッ。


 草が動いた。


 出た。


 魔物。


 小さい。


 丸い。


 毛がある。


 目が大きい。


 弱い。


 知ってる。


 森にいる普通の魔物。


 名前忘れた。


 どうでもいい。


 魔物は、私を見た。


 止まった。


 動かない。


「……。」


 見てる。


 じっと見てる。


 ガルドが前に出た。


 剣を構える。


 正しい。


 仕事。


 いいこと。


 魔物は――


 震えた。


 小刻みに。


 ガタガタ。


 震えてる。


 寒いのか。


 違う。


 夏。


 暑い。


 震える理由は一つ。


 私を見てる。


「……おい。」


 ガルドが小さく言った。


「見てるな。」


「見てる。」


 魔物は一歩下がった。


 さらに下がった。


 そして。


 逃げた。


 全力で。


 転びながら。


 必死。


 消えた。


「……。」


 終わった。


 討伐。


 してないけど。


 いないから終わり。


 たぶん。


「……追うか?」


 ガルドが聞いた。


「やだ。」


 即答。


 走るの疲れる。


 本当に。


「報酬は討伐だ。」


「見なかったことにする。」


「無理だ。」


 残念。


 本当に残念。


 その時。


 また。


 ガサッ。


 別の魔物。


 今度は二匹。


 同じ。


 小さい。


 弱い。


 私を見た。


 止まった。


 震えた。


 逃げた。


 すごい速さ。


 さっきより速い。


「……。」


 楽。


 とても楽。


 働かなくていい。


 理想。


 本当に理想。


「レティシア。」


「なに。」


「何かしたか?」


「してない。」


 本当。


 何もしてない。


 立ってるだけ。


 省エネ。


 大事。


 ガルドは剣を見た。


 背中の剣。


 背負ってるだけの。


 普段使わない方の。


 抜けない剣。


 疲れるだけ。


 なのに。


 その時。


 カタリ。


 音。


 小さい。


 でも。


 聞こえた。


「……。」


 ガルドも聞いた。


 顔が変わった。


「今。」


「鳴った。」


 剣は動いていない。


 でも。


 確かに鳴った。


 私は剣を見た。


 普通。


 黒い鞘。


 普通の形。


 でも。


 さっき。


 少しだけ。


 嬉しそうだった。


 気のせい。


 たぶん。


 本当にたぶん。


 その時。


 茂みの奥。


 魔物たちが、こっちを見ていた。


 距離を取って。


 近づかない。


 逃げない。


 ただ。


 見てる。


 怖いものを見る目。


 ガルドじゃない。


 剣でもない。


 私。


 面倒。


 本当に面倒。


「……帰る。」


 言った。


「なぁ、討伐は?」


「いない。」


 事実。


 いない。


 逃げた。


 だから終わり。


 ガルドは少し考えて。


「あぁ…そうだな。」


 頷いた。


 いい判断。


 好き。


 帰り道。


 楽。


 戦ってない。


 疲れてない。


 理想。


 本当に理想。


 でも。


 背中。


 視線。


 魔物たちが、ずっと距離を取ってついてきている。


 近づかない。


 攻撃しない。


 ただ。


 見てる。


 面倒。


 本当に面倒。


「レティシア。」


「なに。」


「……嫌われてるな。」


「知ってる。」


 本当。


 昔から、ずっと。


 街が見えた。


 安心。


 パンがある。


 宿がある。


 借金もある。


 最悪。


 でも、ここにいれば、まだ働かなくていい。


 ガルドの剣がまた、小さく鳴った。


 いつも背負ってるだけの。


 普段使わない方の。


 少しだけ。本当に少しだけ。

 

 カタリ。


 まるで何かを、待っているみたいに。


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