第13話 回収部隊は働きすぎ
嫌な予感で目が覚めた。
最悪。
こういう日は、大抵ろくでもないことが起きる。
起きないでほしい。
本当に。
ベッドから出ないでいようかと思った。
でも。
起きないと、パンが食べられない。
それは困る。
仕方なく、起きる。
窓を見る。
空、普通。
雲、普通。
黒ローブ、増えてる。
「……。」
増えてる。
一人じゃない。
二人、三人、四人。
多い。
本当に多い。
働きすぎ、回収部隊。
そういう感じ。
「ガルド。」
呼んだ。
床で寝ていたガルドが起きた。
寝袋。
節約。
いいこと。
「ん?どうした?」
「増えてる。」
ガルドは窓を見た。
止まった。
「……多いな。」
「多い。」
同意。
黒ローブたちは、動かない。
立っているだけ。
整列、真面目。
融通が利かないタイプ。
嫌い。
コンコン。
扉の音。
来た。もう来た。
早い。
朝ごはん前。
非常識。
「……出ないとダメ?」
「出ないと壊される。」
それは困る。
修理費は払えない。
最悪。
仕方ない。
扉を開けた。
黒ローブがいた。
昨日と同じ個体。
覚えてる。
嫌な記憶は残る。
「レティシア・ヴァール。」
「朝早すぎ。」
文句。
当然。
「用件は昨日と同じだ。」
「帰って。」
即答。
効率。
大事。
「拒否は受理できない。」
融通が利かない。
本当に、嫌い。
「回収対象を確認。」
後ろの黒ローブたちが、一斉に構えた。
宿屋なのに。
統率。
取れてる。
真面目、働きすぎ。
「……ねえ。」
聞いた。
「給料出るの?」
黒ローブは少し止まった。
予想外の質問。
「出る。」
出るんだ。
いいな。
羨ましい。
本当に。
「いくら?」
「機密事項だ。」
けち。
本当にけち。
ガルドが後ろに立った。
剣を持っている。
「レティシア。」
小さく言った。
「俺が前に出る。」
「無理。」
即答。
事実。
黒ローブ一人でも無理。
四人は無理の四倍。
「でも…壊れる。」
ガルドは止まった。
正しい判断。
壊れるのはよくない。
修理できない。
「……。」
黒ローブたちは、じっと待っている。
命令待ち。
真面目。
本当に真面目。
「回収を開始。」
昨日の黒ローブが言った。
面倒。
本当に面倒。
「動かないで。」
言った。
空気が止まった。
黒ローブたちも止まった。
全員。
完全に。
止まった。
静か。
いいこと。
そのまま。
五秒。
十秒。
誰も動かない。
平和。
このまま終わってほしい。
本当に。
でも。
一人だけ。
少し動いた。
昨日の黒ローブ。
「……やはり。」
声がした。
止まりながら。
動いている。
強い。
本当に強い。
「…続行は不可能。」
そう言った。
認めた。
いいこと。
帰ってほしい。
「本部へ報告する。」
ぜひ。
本当にぜひ。
黒ローブたちは、ゆっくりと後ろに下がった。
整列。
変に礼儀正しい。
それは嫌いじゃない。
全員、去った。
静か。
終わった。
たぶん。
しばらくは。
「……帰ったか。」
ガルドが言った。
「帰った。」
確認。
大事。
扉、閉めた。
鍵、した。
意味はないけど。
気持ちの問題。
ガルドが言った。
「レティシア。」
「なに。」
「お前。」
止まった。
またそれ。
そういう話は嫌い。
「すごいな。」
「普通。」
本当。
普通。
昔から。
ずっと。
「……俺は」
ガルドは、剣を見た。
「守られてばかりだ。」
言った。
大事なこと。
本当に大事なこと。
ガルドは笑った。
それでいい。
それがいい。
外。
黒ローブはいない。
でも。
また来る。
今度は。
もっと増えるかもしれない。
もっと強いのが来るかもしれない。
面倒。
本当に面倒。
だから。
働きたくない。
本当に。
でも。
パンは食べたい。
私は椅子に座った。
「ガルド。」
「なんだ。」
「パン。」
「ああ。」
ガルドがパンを渡した。
温かい。
いいこと。
世界がどうなっても、パンは温かい方がいい。
本当に。




