44友達の家
脱いだ服のポケットに鍵はあったのか確認するためにアニカさんを探す。
飲食をするお客さんの人数は、先ほどガルラと食事した時と比べて減っていたので、おそらくピークは越えたのだろう。
しかし、料理中に声をかけるのは憚られる。どうすべきか考えていると不意に声をかけられた。
「アラタくんだよね?どうしたの?」
ピンク髪の店員が首を傾げて不思議そうにしていた。
確か…サヤナさんだったかな?
とりあえず、サヤナさんに鍵のことを伝える。
サヤナさんは相槌を打ちながら一通り聞いてくれた。
「よし!私がアニカさんに聞いてきてあげるよ!」
サヤナさんは胸をポンッと叩く。
「でも、まだ忙しいんじゃないですか?」
「ラストオーダーは済んだし、今日は空いてる方だから大丈夫!アラタさんは、適当な場所に座って待ってて」
そう言うとサヤナさんは厨房に向かっていった。
言われた通り、空いている席に腰掛けてまっているとアニカさんが服を持ってやってきた。
「サヤナから聞いたよ。確かに鍵はポケットに入ってたよ」
アニカさんは畳んだ服を差し出す。服の上には受付でもらった鍵が置いてあった。
ほっと胸を撫で下ろして、アニカさんから受け取った。
「本当は帰ってきた時に渡す予定だったんだけど、ちょうどピークで忙しかったから忘れていたよ。本当に悪かったね」
アニカさんは気まずそうに苦笑いしている。
正直、元々の原因を作ったのは自分だったので謝られると気まずい。
「いや、むしろ帰りが遅くなってしまってすいませんでした」
服を持ちながら頭を下げる。
「いや別にいいさ。それに遅くなったとはいえ無事に帰ってきたんだから」
何気なく言ったことだと思うが、ジャックさんの話を聞いた後だと何か含みがあるように感じる。
「あっ!そういえばガルラから話を聞いたよ。今日はドワーフさんとの話が長引いて、あまり村をみれなかったんだろう?もし良かったら明日もガルラと一緒に出かけてくれないかい?ガルラはアラタさんのことを相当気に入ったみたいだからさ」
一体どんな話をしたんだろうか?
気にはなったが、鍵を見つけた安堵感からか急激な睡魔に襲われたため深堀りはせず、アニカさんのお願いに快諾した。
「ありがとうね。あっ、もしも明日の宿が決まってないならウチに泊まってくれていいからね。ガルラの友達なら料金はいらないからさ」
「えっいいんですか?」
この上なくありがたい話だけど、お金を払わず無料で泊まるのは申し訳ない。
「いいんだよ!友達の家に泊まるときにお金なんて払わないだろう。それにウチのガルラが世話になってるんだから遠慮しないでくれ」
そこまで言われて断るのも無粋に感じ、言葉に甘えることにした。
「じゃあお願いします」
「よし!何なら何日でも泊まってくれていいからねっ!」
「流石にそれは…」
「アッハッハ。まぁこれからも息子ともどもウチをよろしくねアラタ!」
それから少し明日の話をして、アニカさんと別れた。
別れ際に、アニカさんから「おやすみ」と言われたので、軽く会釈してから階段を登る。
何だか温かい気持ちになった気がした。




