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【書籍化】転生チート王女、氷の魔術王に溺愛されても冒険者はやめられません!~「破壊の幼女」が作る至高の魔法薬が最強すぎるので万事解決です~  作者: りょうと かえ
第6章 無敵なあたちとあたちのとーさま

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34.因果応報

 低空飛行するロイドがボルファヌ大公の前に着地する。


「おい、あれは……」

「陛下じゃないか……」


 アシュレイが瀕死と聞かされていたボルファヌ大公の兵が動揺する。


「陛下、ご無事で……」


 駆け寄るバルダークをアシュレイが手で制する。


「ああ、しかしそれよりも大義だった。貴卿の忠節、永久に忘れぬ」

「……もったいなき御言葉。ですが……」


 これまでアシュレイと接してきたバルダークは彼の異変を感じ取っていた。

 いつもならアシュレイの内には圧倒的な魔力の胎動があるはず――それがほとんど消え失せているのだ。顔色も明らかに良くない。


 赤き竜にしても……魔力はほとんどないようにバルダークには思われた。

 かなりの疲弊をしているのではなかろうか。その感触はボルファヌ大公も同じであった。


「ふん、竜に乗ってのご登場とは相変わらず派手で気に食わん奴。だが、そのざまはどうした……? いつもなら空から大魔術を撃ち込んで来るのが貴様ではないのか」

「叔父殿こそ、いつもはこそこそしているのに兵を率いてどうしたことです? 俺が死にかけているとの報で、気を強くされましたか」


 アシュレイの言葉にボルファヌ大公が顔を赤く染める。

 彼とて正面から万全な状態のアシュレイと戦うことはできない。図星であった。


「相変わらず減らず口を……! だが、それも終わりだ! この揺れがわからんか!」


 ボルファヌ大公の叫びに、バルダークがアシュレイへ進言する。


「そうです、陛下――お下がりを! この揺れは……!!」


 バルダークが言い終わる前に大通りががくんと跳ねる。

 土の底から何かが地上へと出ようとしていた。


「な、なにか来ますぅー!」

「デカいでしゅね……!」


 今や地下から巨大な魔力の塊が迫っているのが感じ取れた。


 ドン、という音ともに大通りのそばの家が完全に崩れ、穴が開く。

 その穴から黒の鎧をまとった巨大なワームが現れた。

 黒光りする身体をしならせ、全長八メートル以上の巨体が穴から突き出る。


「シァアアア……!」


 それは牙を備えたS級の魔物、アビスワームであった。

 地中に潜み、飛び出しては獲物を狙う魔物だ。


 黒い外骨格はミスリルと同等に硬く、魔力を反射してしまう。

 攻撃こそ単純な踏み潰しと噛みつきだけだが、極めて強力な魔物であった。


 さらに地中からもう一体、アビスワームが飛び出す。

 アビスワームは誘魔の薬を浴びたバルダークの隊に狙いを定めていた。

 これらの魔物がバルダークを攻めれば勝利は疑いない。


「ははは! どうだ、貴様らにこいつらと我々を相手にする余力があるか!」


 そこに割って入ったのがライラだった。


「そうはいかないでしゅよ!」

「誰だ、貴様は!」

「あたちはライラ=ヴェネトでしゅ! この国のおーじょでしゅよ!」

「なんだと……? その髪色、魔力……」


 ボルファヌ大公も魔術師である。ライラがただの子どもではないのはすぐわかった。

 しかしこの状況で子どもが出てきても無力だ。


「ふん、貴様がどうだろうと何ができる!」


 言い放つボルファヌ大公に向かい、ライラが瓶を掲げる。


 まばゆい銀光を放つ魔法薬だ。

 これこそ誘魔の効果を打ち消すべく、ライラが開発した魔法薬であった。


「いくでしゅよ! モーニャ!」

「いつでも大丈夫でーす!」


 ライラはフルパワーで銀光の瓶を空へと高く放り投げる。それを追って飛び上がるモーニャ。

 瓶が最高度に達したところで、モーニャが風の魔力を全力で解き放つ。


「えーい! 広がれー!!」


 モーニャが爪を振るい、瓶を破壊する。

 大気中に銀の粒がぱぁっと輝き、拡散した。


 ライラの魔力で生まれた銀の粒子は太陽光を受け、閃光を生む。

 閃光は誘魔の力を飲み込み、激しく中和する。

 降り注ぐ銀の粒によって甘い匂いが即座に消え去った。


「こ、これは……!? まさか!!」


 ボルファヌ大公が啞然と空を見上げる。

 ライラの反発薬はボルファヌ大公の魔法薬を完全に上回り、消し飛ばしていた。

 アシュレイたちにもはっきりと誘魔の薬が打ち消されたのが分かった。


「……どうやら魔法薬は頼りにならないようだな」

「く、くそ……!! 奴の後ろで魔法薬を作っていたのはお前か!」


 ボルファヌ大公に指差されたライラが胸をどーんと張る。


「そのとおーりでしゅ!」


 そこに首を縮めたロイドがライラに問う。


「で、あの魔物はどうなるんだい?」

「……あい?」


 ライラが顔を向けると、アビスワームは頭を右往左往させていた。


「シャアァァ……?」


 新作の昆虫系を寄せ集める魔法薬。それを打ち消す魔法薬。

 ふたつの強力で馴染みのない作用がアビスワームの本能をかき回し、混乱させている。


 空から戻ってきたモーニャがライラの周りで跳ねた。


「もう呼び集められちゃった魔物は……帰ってくれるんですか」

「えーと……」


 本来は魔物が到着する前に打ち消し薬を使うのがベストだった、とは言えない。

 ここからアビスワームがどう行動するか……全然読めなかった。


 それはボルファヌ大公の兵も同じようで、どうしたらいいか迷って動きを止めている。

 ボルファヌ大公が動かない兵に叫ぶ。


「ええい! こうなったら……強行突破だ! 全軍で前に進め!」


 腕を振り上げ、部下へ号令する。

 切り札を失っても彼はまだ諦める気はなかった。


「し、しかし……アビスワームはどうしたら……」


 ボルファヌ大公のそばに控える兵が戸惑う。


 アビスワームは混乱しているが、刺激を与えたらどうなるか分からない。

 矛先が大公側に向くこともあり得る。だが、焦るボルファヌ大公は怒声を飛ばした。


「うるさい! このままここにいて、どうするつもりだ! 魔物がどうした、前進しろ!」


 ボルファヌ大公が軍を進ませるために右腕を掲げ、魔力を集中させる。

 とにもかくにも、兵を戦わせなければならない。


 炎の魔力がボルファヌ大公の腕に集まり、業火が蛇のように渦を巻く。

 その魔力の大きさはアシュレイの叔父というだけあり、この場の誰よりも大きかった。


「さぁ、儂も戦うぞ! 貴様らも躊躇するな――」

「…………」


 アビスワームの群れが唸りを止め、巨大な魔力を発したボルファヌ大公に頭を向ける。

 昆虫族の異質な瞳がボルファヌ大公へ注がれた。


「なに……?」

「シャアア……」


 明らかな攻撃魔術の兆候を感じ取り、アビスワームが唸る。


「あー……」


 モーニャが呆れた声を出す。


 刺激するなと言われたのに、ボルファヌ大公は思い切り攻撃魔術の準備をしてしまった。

 敵味方もわからないのなら、もっとも敵になりそうなモノを攻撃する。それが本能だ。


「シャアアーー!!」


 混乱したままのアビスワームがこの場でもっとも危険そうな魔力の使い手――ボルファヌ大公へと飛びかかる。


「なっ! 来るなぁー!!」

「うわぁぁっ! 逃げろー!」


 ボルファヌ大公の兵が慌てて大公から離れ、逃げる。


 だが肥満体のボルファヌ大公は逃げられない。

 やむなく彼は腕にある火炎の渦をアビスワームへと解き放った。


 巨大な火炎がアビスワームの頭部に直撃する。

 しかしこの程度で怯む魔物ではない。


 むしろアビスワームはボルファヌ大公を完全に敵として認識し、突撃した。


「うわあぁぁー!!」

「シャアアアーー!!」


 抗する術もなく、アビスワームがボルファヌ大公を押し潰す。


「…………」


 アビスワームはそのまま地面に穴を掘ると、どこかへと潜っていってしまった。

 あまりのことに大公とバルダークの両軍とも顔を見合わせるしかない。


 地面に空いた大穴からはもう、ボルファヌ大公の声はしなくなっていた。

 その中でいち早く気力を取り戻したアシュレイが呟く。


「……自滅したか」

「愚かな人でしゅた」

「うん、まぁ……」


 アビスワームをけしかけようとしたボルファヌ大公も大公だが、それを打ち消したあげくにこんなことになってしまうとは。

 ロイドはちょっと――いや、かなり引いていた。


「でもこれで一件落着でしゅよ!」


 ライラの声にアシュレイが全員を見渡す。

 すでに戦闘は終わっていた。あとは幕引きだけだ。


「そうだ。双方、これ以上無益な戦闘で血を流すことはない! 諸悪の根源であるボルファヌ大公は死んだ! 戦いは終わりだ!」


 大公がいなくなっては、戦いを継続する意味はない。

 それを悟った大公の兵が続々と武器を置く。


 それはすなわち、ヴェネト王国を巡る内部闘争が終わったことを意味していた。

 ……こうして戦闘が終わり、負傷者の救助が始まる中、モーニャがふぅーと息を吐く。


「これで大丈夫ですかねぇ」

「でしゅね。とりあえず……きょーは終わりでしゅ」


 なんだか余りにも色々なことがあった気がする。もう4歳児の体力では限界だった。

 ふらふらするライラの背をアシュレイが支える。


「疲れただろう。後のことは気にせず、ゆっくり休め」

「……いいんでしゅか?」

「もちろん」


 アシュレイがライラへ微笑み、頭のてっぺんを撫でる。

 大きな手がとても心地良く感じられた。


「よくやってくれた。さすがはサーシャと俺の子だ」

「……えへへ」


 心と心で繋がっている。確かに、そうなのだ。


「とーさまも、無理はダメでしゅからね」

「わかっている。安心して寝てくれ」


 ライラはゆっくりと目を閉じて、身体をすぐ後ろにいるアシュレイへと預け――眠気に誘われるまま、寝ることにした。

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