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呼吸を分けた日  作者:
7/14

限られた時間の中で

退院してから数日後、俺と柚月は病院で過ごした日々を思い返していた。


「ねえ、透真。やりたいこと、書き出してみない?」


柚月が小さなノートを取り出して、俺の横に座る。


「やりたいこと?」


「そう。せっかく生きてるんだからさ、私たちにも“青春”ってやつを味わう権利があるでしょ?」


俺は少し考えてから、ペンを取った。


「そうだな……じゃあ、まずは花火大会を見に行きたい。」


柚月は嬉しそうに頷き、ノートに書き込んだ。


「いいね。じゃあ、線香花火も一緒にやりたい。」


「いいじゃん。夏の夜にさ、のんびりしながらやりたいな。」


ペンを持ち替えながら、俺たちは次々と願いを書き出していった。


打ち上げ花火を見たい。


線香花火を一緒にやりたい。


遊園地に行ってジェットコースターに乗る。


海辺を裸足で歩く。


一緒に手作りの料理を作る。


夜の公園でブランコに乗る。


初日の出を見に行く。


「……こんなところかな。」


「結構書いたね。」


柚月は満足そうにノートを見つめた。


俺たちは誰かと同じような“普通”の高校生活を送れるわけじゃない。


でも、それでも——いや、それだからこそ。


限られた時間の中で、どう生きるのか。


何を感じ、何を残していくのか。


それを決めるのは、俺たち自身だった。


「透真、全部叶えようね。」


柚月が優しく微笑む。


俺は、その笑顔をずっと覚えておきたくて。


「……ああ、全部な。」


そっと、ノートを閉じた。



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