異世界転移
「ダンジョン?そもそもこの世界には魔法とかないけど?」
「確かに魔法を使うものはおらん。だが、魔素の濃度は極端に高い。今ならば直ぐに魔法士として実力をつけられるだろう。」
「仮にダンジョンができたとして、それにあんたがどう関係してくるんだ?」
「俺はこれでもある世界では魔神なのだ。ダンジョンに出てくる魔物や魔族たちは私からすれば子供のようなもの。発生する地にて監視するのが私の役目。」
「それで肉体を?」
「そうだ。だが、監視するだけではつまらんからな。そなたを鍛えることにした。当分の間は恐らくダンジョンの存在はこの星の人間にバレることはなかろう。その間に着実に鍛えるのだ。」
「わかった…というか、あんたは元の世界からどうやってきたんだよ。」
「そりゃゲート。異世界転移魔法だ。」
「あ…そ。」
ったく。簡単に言ってくれちゃっさ。この魔神さんは今すぐ出発するから準備しろとか抜かす。俺はとりあえず、スマホと部屋に有ったモバイルバッテリーを数個、後、冷蔵庫の飲み物を数本リュックに入れた。
そして…
衣装扉を開け、動きやすいように黒い衣装を身に纏う。俺の好きな伝説の深夜アニメの主人公のコスプレだ。
最後に…
部屋に置いてある死んだ爺さんから貰った鎧櫃の中に入れてある戦国時代から代々引き継がれてきた戦鬼の面頬を装着。そしてその横に置かれている日本刀を手にする。
この刀は伊勢国桑名(現在の三重県桑名市)の刀工一派であった村正によって作られた妖刀であり、この刀には代々の使用者の霊が守護霊として憑くというものだ。ただ、普通の人間がこれを持つと爺さんの恐ろしい姿しか見えない。それは刀との相性が悪い証拠だ。俺は特にこの刀に適しているようで、この刀の初代使用者、家の先祖の姿から代々の使用者の姿まで最盛期の姿によって見ることができる。
そうすると、自分の力ではなく彼らの力を流用することができる。特に初代を含め3名は特に過去の時代で無類の強さを発揮したようだ。そもそも家の流派は、殺人剣だ。複数人の相手を残雪することに特化した剣術。
剣道のように美しいものではなく、効率化したとても恐ろしいもの。俺は適格者としてこの刀に選ばれたことで幼い頃から爺さんに流派の真髄を教え込まれた。
まぁ、そのおかげか…俺は学生時代には剣道部に入り、中学から大学まで続け、一度たりとも負けなかった。同級生も先輩も後輩も顧問も、他校の実力者も相手にならなかった。
俺には最強の守護霊が憑いていたから…
「あの男は信用できん。」
「大貴…儂らをあの男に会わせてくれ。」
「儂らの大切な弟子を守るためにちゃんと話そう。」
先に挙げた無類の強さを発揮した3人が甲冑を着込んだ状態で俺の背後に立った。全員、かつて室町時代末期、戦国時代、江戸時代末期。それぞれの時代で最強の剣客として恐れられていた。その上、誰も彼らを倒すことができず、刀を後世継承して畳の上で息を引き取った。
初代 殺人剣三上流創始者 三上惣之助
三代 日本史謎の最強剣客 三上宗介
十二代 京を恐怖に陥れた最強の人斬り 三上羅殺
この三人が俺の背後にいるんだ。まぁ、俺のことを孫のように可愛がって、教える時もいつも優しく教えてくれたから俺にとっては最高の守護霊だ。
「わかりました。」
俺は着替えとリュックを背負うと、あの男のいる寝室へと戻った。俺の戻りを確認した魔王はあんぐりと口を開け固まった。
「父上…なのか?」