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眼鏡、緊張と興奮の初デート

 いつも来ているニコマートの駐車場、友達に選んてもらった服を着て普段あまりしないお化粧をしてアクセサリーを付けたいつもと少し違うわたし。

 いや、服装や装飾品は変わっても中身は全然変わってない! 心臓はバクバクしているし気を抜いたら頭の中がこんがらがって畠山さんにまた変なことを言ってしまいそうだ。

 ニコマートの店内には香苗と千紗ちゃん以下、数名の友達や先輩後輩が待機していてわたしを見守っている。SNSに励ましたり元気付けようとするメッセージが入っているけど、いつの間にかニコマートのオーナーとその奥さんもグループに入ってる!


 時間が経つにつれてドキドキしてきた、さすがに約束の一時間以上前に来るのは早すぎたかもしれない。

 チーちゃんと香苗に張り切り過ぎと言われたけど全くその通りだ。まだ待ち合わせ場所に彼が来ていないのに浮き足立っている。

 落ち着けわたし! 落ち着けわたし! と胸に手を当てて自分に言い聞かせていたら駐車場に軽のSUVが入って来ていつも羽柴冷凍運輸のトラックが停まっている場所に駐車する。


「真田さんもう来てたんだ。女性を待たせるのは良くないと思って早めに来たのに先を越されたな」


「わたしも今来たところですよ、畠山さんとのドライブが楽しみで早く来過ぎちゃいました」


 よし! 自然に返事が出来た! 今この瞬間も脳からいろんな物質が出て暴走しそうだけど、出会った時に見せた数々の失態を絶対に繰り返しちゃいけない。

 いつもの自分を保て! 平常心だ! 平常心! 今日はいつも通りの自分で畠山さんと話すんだ。


「俺は緊張し過ぎて早く目が覚めちまったよ。自分から誘っておいて緊張するなんておかしな話だよな」


 畠山さんって異性と付き合った無いって言う割には、わたしや他の女の子とも普通に話してるんだよね。彼の職場にバイトで入ったチーちゃんの話だと真面目過ぎて興味と機会が無かっただけで女性が苦手なわけでもコミュ力が無いわけでもないそうだ。

 それに比べてわたしは男の人が苦手だと言って逃げてばっかりだった……だけどせっかく人を好きになったんだから出来たらちゃんとお付き合いしたい。


「いえっ! 今日はお誘いいただきありがとうございます。わたしってバスとお爺ちゃんの軽トラしか乗った事が無いんでドライブって初めてなんでとっても楽しみなんです」


「あっ、車酔いとか大丈夫?」


「うふふ、田舎の農道と山間部のクネクネ道で慣れてるから平気だと思いますよ」


 凄く緊張はしているけど暴走する心配はもう無いかな。少しずつだけど畠山さんとの会話にも慣れて来たしたぶん大丈夫。


「じゃあ行こうか」


「はい、今日はよろしくお願いします」


 畠山さんの軽SUVに乗り込むとほのかに彼の匂いがする。エンジンの振動とエアコンの風、そして彼の香りがなんだか懐かしい雰囲気を感じさせる。コンビニの駐車場を出ると彼が申し訳なさそうに声をかけてきた。


「狭いし振動が強いから乗り心地良く無いだろ? 友達が女の子を乗せるなら買い替えた方が良いって言うんだけど俺はジムニー好きなんだよな」


「いえ、なんだかお爺ちゃんの軽トラに似ていて懐かしい感じです。軽トラや田舎のおんぼろバスに比べたら乗り心地も良いですよ」


 そう返すと畠山さんは少し笑った顔になって車を走らせる。市街地から高速道路に乗ると街の景色から緑の多い山の景色に変わっていく。

 お盆やお正月に帰省する時も街中から山の景色に変わる様子は見てるけど、公共交通機関で見る景色と気になる男の人と車に二人きりで見ている物とは全然違う。


「そういえば真田さんの後輩、立川さんって言ったっけ? 今週からうちの会社にバイトに来てるみたいだよ」


「千紗ちゃんですか? アルバイトを探してる時に畠山さんのトラックに付いているQRコードで応募したみたいですね。働きやすい職場だって喜んでましたよ」


「ウチは女性のドライバーや従業員も多いし、自称事務員の副所長が目を光らせているからね。前のバイト先をセクハラが原因で辞めたって言ってたからちょうど良いんじゃないかな」


 正確には接客業でお客様のセクハラに腹を立てて水をかけてクビになったんだけど……わたしのために畠山さんの情報集めに潜入してるって言ってた事も含めて黙っといたほうが良さそう。


「そう言えば真田さんってアルバイトしてるの?」


「わたしは男の人が苦手なんで、女性だけでやっている仕出し弁当屋さんの朝の仕込みのアルバイトをしています」


「それで料理が上手いのかな? 若い女の子であんなに和食をあんなに上手に作れる人ってそんなにいないと思うから」


「長野で暮らしてるときは和食ばっかりだったんで慣れてるんですよ」


 うん、話題が話しやすいことばかりだから今のところは上手くいっている。車が長いトンネルを抜けると風景が今まで走っていた緑の山道から青く広がる水平線へと変化した。


「海だっ!」


 わたしは思わず大きな声を出してしまった。もちろん生まれて初めて海を見るわけではないんだけど、学校行事や通り道としてではなくデートで海の見えるところに来た事でわたしのテンションは爆上がりしていた。


「これから灯台のある岬に行ってそれから海辺のカフェに行く予定だよ。昼食はカフェのランチにするつもりだから、友達に教えてもらった店なんだけどシーフードを使ったパスタやピザ、サラダがおすすめだって言ってた」


 海辺のドライブに灯台、カフェでランチなんて本当にデートみたい……って今わたしデートしてるんだよね?

 意識するとまた緊張してきた、でもなんだか楽しい!


 またテンパって暴走しないように気を付けないと……。

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