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8話-⑥ 消えた吸血鬼




街に入ってから何日かたったある日。


師匠は相変わらず帰って来なかった。


俺は、認証書の発行を済ませており、認証について簡単に説明を受けた。


まず、これがあれば、基本的にはどの街でも出入りが可能になる。


身元の保証をしている街が存続する限りは有効という事。


そして、職業につく事が出来る。例えば冒険者だ。


こんな境遇にならない限り、俺には程遠い存在だったが、近くで見ていると、冒険者の仕事も悪くは無さそうだ。


もちろん、命を掛けて戦う分危険は付き物だが、腕っ節一つで、切り開いて行く事が出来るというのは、何とも魅力的に思える。


他にも、商人や、荷馬車運びと選べる仕事も様々のようだった。


もしこのまま、師匠が姿を現さなかったら、いっその事冒険者になって、師匠を探すのもありだな。


幸いにも、名前や住所だけが記載されるだけで、年齢は乗っていない。


つまりは、不死身になった俺にとっては好都合である。


ちなみに、何故年齢が乗って居ないかというと、このご時世、避難民として訪れる子供や御年寄は、俺みたいに以前の発行元が分からない場合が多く、とりあえずは名前と、居場所だけ管理出来れば問題ない、らしい。


そうして、今後の事も少し考えていた俺だが、今すぐという訳では無かったのだ。


具体的にここを出る日程を決めなかった理由はこれだ。


「ナウス兄ぃ! 見て見て! 今日も沢山山菜が取れた!」


「ねぇ、ねぇ、僕も」


「私も」


「分かった分かった! そんな一斉に話すなって」


ここに居る子供達は、皆俺より幼く、親が居ない。


全員が口を揃えて魔族に襲われたと言って居るが、恐らくは人外騎士アイツらの仕業だろう。


記憶改ざん等の魔法で、都合の悪い記憶だけ、消し去り、自分達に都合が良い記憶だけを植え込む。


「あ、ナウスさんお帰りなさい! 今日も御苦労です!」


「シスター、ただいま! 今日も全員無事だったぜ!」


「ふふ、ナウスさんが居たお陰ですね!」


こんな、普通のやりとり、俺が失っていた、会話だ。


俺は、こいつらと出会ってから、灰色に曇った心が少しづつだが、明るくなっている様に感じたんだ。


だから、あんな事になるまでは俺は一切の決心がつかなかった。


何故って?


ここの居心地がいいからだ。


俺はいつもの楽しい日常があると直ぐに忘れてしまう。


世界はどうなっているのか、俺の立場は、愛する者をどうされたのか。


こんな、忘れっぽい俺が言っても、安っぽいだけか?


いや、そんな事はどうでも良いんだ。





森に来た子供が、一人居なくなった。


今は、居なくなった子供の名前を呼びながら、必死に辺りを探している。


「ティム!! どこいった?! ティム!!」


(くそっ! 完全に油断していた! まさか、こんな日中に居なくなるなんて思わなかった!」


いなくなったのに気付く事すら出来なかった俺は、呑気に山菜を積んでいた。


鼻歌混じりで、山菜を積んでいる姿は、呼びに来てくれた子供から、したら随分呑気な姿に見えたかも知れない。


だから、こそ居なくなった訃報を聞いた俺はつい大きい声を出してしまい、他の子供達を驚かせてしまったのだろう。


とりあえず、秀でて幼い子供達と、俺の次に年上の一人をシスターの所に帰し、応援を呼んだ。


「ナウスさん! ティムが居なくった聞きました!」


慌てた様子でやって来てくれたシスターは、相当急いで来たのだろう、頭にいつも被っているウインプルを付けるのを忘れている。


しまいには、門の前に居た守衛さんが、異変に気付き、一緒に探したが、結局夜まで見つからなかった。


「全部、俺のせいだ」


俺が、ボソリと呟いたが、シスターには聞こえていたようだ。


「ナウスさんが、悪い訳ではありません。 きっとみんなを喜ばそうとティムが奥まで入ってしまったんだと思います。 ですから、明日の朝一番にもう一度探しにいきましょ」


シスターはそう言って俺を励ましてくれてはいるが、俺の耳には一切入っていなかった。


俺の脳内では、永遠とティム鳴き声と、その表情が流れており、夜になった事で、より一層怯えているであろうと、俺を悲観させるだけだった。


俺は、家族を失い、見つからない師匠の帰りを待っている。


ここに来て、また誰かを失うなんて、耐えられない。


そう思った俺は、今晩、街を抜け出し、森に入る事を決めた。

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