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5話-⑥ エルフの里


彼女らエルフの話を聞いた俺達は薄々であるが、そんな気がしていたのだ。


師匠、いやエリーザ・バートン・テリーナ伯爵の噂を。


「やはり、人界でも噂になっておったのか」


「では、本当にあの伯爵家の当主様であらしたのですか?!」


「まぁ、伯爵と言っても既に守るべき領地は無いがの」


「噂は確かに御座いました。 魔族の中でも良識と叡智があり、慈悲深く頼もしいと」


……



何と言うか、前々から思っていたが、師匠はわかり易いと言うか、素直だ。


褒められたら、謙遜する事無く喜び、虐げれば容赦無く反撃をする。


愛する者に対する慈悲深い心と言うより、'助けたい'と言う思いがあるだけなのだろう。


これは愛の深さでは無く、平等と表現するしか無い。


決して守れなかったからと言って諦めるのでは無く。


守れなかったのであれば取り戻すと言うからこそ、師匠の慈愛なのだろう。


それであって、魔族だ。


だからこそ、有名になり、伝説の存在になるのだろうーー


先程まで、皆が目を丸くさせて師匠の話を聞いて居たが、セラスさんは三度口を開く。


「これで、我々の予言に合点が行きました」


「実は、我々の村は、明日か明後日には滅亡します」


セラスさんの話は俺達の予想を超える内容の話であった。


ーー遥昔、と言っても1700年程まで遡るだけだ。


人界じんかい魔界まかいでの戦争が起きるより、少し前だ。


エリーザ・バートン・テリーナ伯爵の領地にある噂が広まった。


人界にあるエルフの里が魔族に襲われた。


「有り得ない」


これが誰もが考える結論だ。


人界での噂ならともかく、人界に侵入する事すら出来ない魔族からすると、おとぎ話の様な出来事であるからだ。


互いが互いに不可侵であるのにも関わらず、仮に出れたとして、何故襲うのだろうか?


我々は普通に暮らしているだけだ。


もちろん邪悪な考えをする者も居るが、それはごく一部であり、世間に少しでも露見すれば、領主が黙っていない。


であればこの噂は都市伝説の様な、娯楽に近い内容なのだろう。


だがどうだろうか?


もし万が一に魔族の襲撃が事実出会ったとすればどの様な結末を迎えるのだろうか?


ーーエルフ。


人は語る。 エルフとは森の守護者だと。


森に愛され、森を愛し、自然と共に生活を行い、森を守る長寿の種族と。


彼等は森への邪悪を許さない。


よからぬ事をする者へは、鉄槌を。


自然に容赦は無かった。


だが、そんな守護者のエルフにも弱点はあった。


炎だ、これは自然全体にとっての脅威である。


されど、炎を森に持ち込む事は困難である。


何故なら、守護者が居るからだ。


彼等は強かった。


彼等にとって、自然とは家族そのものであり、森を縦横無尽に移動する事が出来る。


それに、奇襲とも取れる配備をする事によって、不埒な輩を寄せ付けない事に長けていた。


では外からの攻撃に強かったエルフだが、どうやって攻撃されたのだろうか?


答えは簡単だ。 それは内側からの炎の消し方を彼等は知らない。


ましては、真っ先に疑うのは身内であるだろう。


かつてはエルフもここまで閉鎖的では無かった。


近くの街などと交易をする事で、鉄武器との交換をして貰った。


だからこそ、真っ先に疑ったのは、他国のスパイだ。


だが、実際には違った。


いや、違っては無かったが予想もしない相手であったのだ。


そう、魔族である。


知識として知っていた魔族だが、実物を見るのは初めてだっただろう。


彼等の醜くおぞましい姿は、まるで地獄で待ち構えるであろう鬼だ。


鬼の背中よりから燃え盛る炎はエルフの里を焼き落とす。


同胞は炎に包まれ、生きたまま焼かれた。


人生で肉を焼いた事も食べた事も無かった彼等だが、一晩のうちに彼等の鼻腔には同胞の焼き焦げた匂いが残った。


エルフの長い耳は他種族からしても特徴的であり、ヴァンパイアの耳も長いが、エルフからすると赤子の耳と大差ないだろう。


そんな耳にも同胞が焼け死ぬ悲痛と、魔族の不気味な高笑いだけが残っており、赤いものを見た時には、里が焼け落ちる炎を連想させて、嘔吐する者もいるだろう。


もうこれで終わりだ。


生き残った避難民の誰もが思っただろう。


だが、1700年もその避難民を守り、導く事が出来るエルフもいた。


いつから予言を使える様になったかは、正確には明記されていないし、伝承も無い。


確実に言えるのは魔族が去った後、生き残った者を預言者が導く事が出来る。


その力は承継されると。


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