4話-① 知らぬ不吉
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雷鳴が轟き今にも大雨が降りそうな程の黒雲が立ち込める、陰鬱な空模様。
人界首都アルカディア、その中心にある巨城。
その巨城の中にある一室。
そこに、円卓を囲む幾人かの人物が、集まっていた。
ここは人界政府の会議室である。
「ふむ、生存者無しとは些か、奇妙な結末じゃの」
円卓に集まる各首脳と思わしき人物のうち、白髭の老人が話す。
「報告によると、天命に赴いていた大隊が全滅と聞いたが、誠か? 」
「ワシの、騎士が全滅をしたのは間違えない。 しかもあっちゅう間に全滅したのじゃ」
そう話すのは、エナンと言われる魔女の帽子を深く被る人物。
「では、やはり魔族や魔人か…… 何方にせよ同胞である事は間違えなさそうじゃの」
「もしかすると、突発的に現れた勇者や英雄の類かもしれないんじゃないのか?」
円卓を囲むなかでも、若い部類に入るであろう、筋骨隆々の剃髪の男性が白髭に意見を出す。
「英雄ならまだしも、勇者は有り得ん…… それに、この世界の何処に英雄になり得るという人物が居ると言うのじゃ」
柔らかい口調とは違い、白髭の老人の眼孔は、剃髪の男性を鋭く捉える。
「俺は可能性を述べているだけだぜ? 無くは無い。 それはそうだろ」
一歩も譲らない二人を制止する様に、エナンを被る人物が割って入る。
「やめんか二人とも、まずば事態の究明を行うべきだとは思わんか? であれば、西方に再度部隊を派遣するべきじゃと儂は提言するぞ」
「ふむ、であればそなたの隠密を向かわせよ」
白髭がエナンに指示を出し、終始不穏な雰囲気の会議に幕が閉じる。
ーーーーーーーーーー
師匠の話によるとヴァンパイアは朝は弱いらしい、殆ど徹夜である俺は現在荷台を引いて歩いている。
ちなみに師匠と言えば、荷台に毛布を敷き詰めその中でくるまって寝ている。
日光を長時間浴び続けると、身体が崩壊する事は無いらしいが、夜になるまでは殆ど動けないらしい。
だから、こうやって天気の良い日だろうが、日光を避けて、くるまって寝ているんだ。
(まるで冬眠したクマだな)
俺達は現在、魔界を出てからは一旦村に帰り移動の準備をすませていた。
どうして、移動するかと言えば、人界騎士を全滅させた事で、必ず調査に誰かしらが訪れるからだと、師匠が教えてくれた。
その追ってから逃げる為に一旦北上してから、東に向かうらしい。
(とは言っても…… 流石にこの荷台だけで、長距離を渡るのはきついよな)
俺が師匠の睡眠を妨げ無いように丁寧に押している荷台は、以前俺が倒れて居た時に運ばれていた物であり、尚且つ師匠が道で倒れていた時に使ったのと同じである。
基本的に俺の村であれば、どの家も荷台程度なら所持していたが、馬車のような人力を必要としない高級品を持っている家庭は、何処にも無かった。
(まぁ、完全に自給自足だったしな)
だが、馬車を唯一使っていた人物を俺は知っている。
エイミーの父だ。
エイミーの父は首都の魔法学院で、魔法の先生をやっているらしい。
エイミーは幼い頃に母親を事故で無くしており、父親と一緒に住む選択もあったのだが、エイミーの母親同様に危ない都心より、平和な故郷の村を選んだのだ。
だが、それも一昨日までの話だ。
村は俺以外全滅、それに俺も人間ですら無くなった。
だけど、俺が絶対に皆を助けてやるからな。
だけど、親父さんには何て伝えたら良いんだ……
(あぁ、いつか俺も魔法を教えて貰おうと思ったのに……)
先程までは草原が広がる平地を歩いていたが、目的地である西の街へは森を抜けていかなければならない。
俺は村を初めて出た為、道が全然わかなかったが、師匠が真っ直ぐ行けば着くと言ったのを信じてまっすぐ進んでいた。
(どう考えてもこの森を抜ければ街に着くとは思えないんだが……)
だが、他に道が無い以上進むしかない。
所で、どうして俺が日光の下を平気で歩けるのか、気になってる人はいないかい?
俺はハーフヴァンパイアとして師匠の血を半分受け継いでいる訳だが、その為本来のヴァンパイアとしての力には色々と制限が出る一方で、日光の下を歩く事が出来るらしい。
しかも、何のデメリットも無くだ!
だが、そもそもの力に支障が出るという事で、ヴァンパイアとしての最大火力であった最大の利点が全て無くなっている。
これはどう考え大きなマイナスである。
つまり俺の場合は、朝も夜も変わらず弱いという事だ。
弱い奴に制限は要らないから、日光とかも平気だ。
何て悲しい生き物なのだ。
ーーーーーーーー
森の木々はかなりの背丈になっており、俺の村や魔界の入口らへんの木々の2~3倍の大きさはある。
季節はまだ、暑さが残る時期だと言うのに、日光が殆ど入らないのか、寒気を感じる。
寒気と言うか、もはや悪寒に近い。
近くに何か獣などが、居るのだろうか?
魔界の入口に近い物を感じる。
ヴァンパイアにとっては日光は敵だと言うが、この数時間浴びていないだけでも、恋しくなってくる。
幸いにもヴァンパイアになったお陰で体力は無限に近い位ある為、休まずここまで進んで居られるのだが、荷台が問題である。
ただでさえ、足場の悪い地面を走らせているのに、根っこや石にタイヤを取られ今に壊れてもおかしくない。
(この怪力が無かったら、絶対に無理だったな)
それにしても、エイミーの親父さんはどうやってこんな道を来たんだ? どう考えても馬車が通れる道も無ければ、その広さもない。
師匠が蹲って寝るのが、丁度良い程度の荷台で精一杯なのに……
ビュンッ
突然の事ではあったが、初めて聞こえた異様な音が、俺の視線を引き寄せる。
あっぶなっ!?
その音の正体は俺の眉間をわずかに逸れた。
いや、間一髪の所を俺が躱したのだ。
俺の後ろにあった大木には、矢が刺さっている。
これは明確な敵意を持った攻撃だった。
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