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師匠はヴァンパイア、スキル強奪で世界に反逆をします。  作者: 一色ONLINE
既にBADENDしている世界から
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プロローグ[改稿済]




夜空が、霞む程の暗雲が立ちこむ深夜、とある村の見張り台から、大きな鐘の音が村中に響き渡る。


敵襲! 敵襲! 魔界の軍団が迫って来ている!


そう叫ぶ男は、先程の鐘を打ち付けていた男だ。


鐘の音で目が覚めた初老の男性は、「ついに来たかと」と呟く。


寝室を出ると、寝巻きの上に革服だけ簡単に羽織り外へ向かう。


「村長! お目覚めでしたか!」


そう初老に話し掛ける男は、先程の鐘を打ち付けていた見張り役だ。


初老の男はこの村の長であり、突然の襲撃にも動揺を見せる事は無く、迅速に指揮を執る。


「避難を急がせなさい、女と子供を優先し、担いででも逃げなさい」


「年寄り連中はワシが川沿いを南側に連れて行く、そなたらは橋を渡たり川沿いを北側に進むのだ」


見張りの男は村長の指示を聞いて、唇を強く噛む。


「そなたの様な男がワシの息子であった事が何よりの幸せだ。時間が無い、直ぐに行くのだ」


見張りの男と村長に血縁は無かったが、身寄りが無かった男からすれば、父親同然の思いであった。


だからこそ、この作戦に異議を唱えたかったが、しかし有事の際の行動は既に決まっていた事であった。


村の存続すらも困難な状況であれば、足の遅い老人を囮に、若い衆だけでも逃げ遂せる事がだ。


これ程までにも脆弱なのが人類であり、大戦中の村民の生きる術なのである。


見張りであった男は自分が次期当主としての自覚を持っていた。


だからこそ、責任があり忍耐力を必要とする、見張り役を率先して全うしていたのだ。


男は微力な同胞を守る為に村中を駆け回る。


「急げ!!時間が無いぞ!!」


幸いにも見張りの初動が早かった為か、敵に目撃される事は無かった。


男の村は、西の外れの魔界との境界辺りに面している。


有事の際には真っ直ぐ東側に向かう事になっており、村長達とは逆方向に進む手筈になっている目印だ。


(ここだ。 ここを超えれば橋を落とす…… 親父ぃぃっっ! どうか、どうか無事であってくれぇぇ!)


橋と言っても簡素な物であり、ロープと打ち板だけで作り上げられている頼りない橋だ。


そんな橋でも万が一にでも落ちる事があれば、激流に飲まれて命は無いだろう。


元々この川は、ここまで勢いが強くは無かった。


普段の河原であれば脆弱な人間ですら、容易に渡れるだろう。


しかし、気運にも季節の変わり目であった事もあり、山に積もった雪解け水が、土砂と混じり合い、この時期には何日も抉り取られる程の勢いになっている。


岩や、木々を薙ぎ倒して襲い掛かる激流に身を差し出せば、一刻であっても耐え凌ぐ事は出来ない。


(それは魔物とて同じはず!!)


「急いで橋を渡れぇぇ!!」


率いて来た村人は、日頃からの鍛錬もあったからであろう。


誰一人としてこの激流に臆する事無く、全員が無事に渡りきった。


先頭を率いていた男は、腰に下げていた鉈を構えた。


橋を落とせば、若い衆は十中八九助かるだろう。


脳裏を過ぎるのは親父であった。


血縁は無くとも、自分を本当の息子の様に扱ってくれた父親だからだ。


自分だけでも、助けに行く事は出来ないか? ここまで来れば後は真っ直ぐ進むだけだ。


他の村人だけでも逃げ切る事は容易だ。


俺は構えていた鉈から力を抜いた。


(そうだ、俺だけでも助けに行こう)


魔族の襲来を目撃したのは男だけだった。


数にしてゆうに百を超える明らかな劣勢ではあるが、足が遅い事に気が付いた。


危険は承知ではあるが賭ける価値はある。


そう男は判断し、村人に意志を伝えようとする。


っっ?!


男の考えは村人に筒抜けであった。


実際に声を出していた訳では無いが、男の陰鬱な雰囲気や日頃の態度を知っている隣人は、酷く惨烈な表情で男を見つめていた。


そこに、村人達の間から一人の女性が男の前に出てきた。


女性は静かに男の手を取った。


「気持ちは皆、一緒です。 それでも行くと言うなら止めはしません」


「アイナ……」


女性は男の妻であり、村長の実の娘である。


妻が男を心配そうに見つめるその表情は、父親の救出を肯定する事でも、残った村民を助ける為に、否定する事でも無かった。


あったのは次期当主の意見を尊重する姿勢だった。


「決めた。 救出に向かう」


先程までの、酷く陰鬱だった雰囲気は男から消えた。


同様に惨烈視をしていた村人からも、勇猛な姿に安堵する様な表情を浮かべた。


村人達が男を見る視線は、引っか掛かりを拭ってくれたかの様な羨望な視線だ。


ーー突然、男の背後の森から大量の鳥が飛び立った。


余りの異常事態にその場にいた者が東の森を見ていた。


数百羽の鳥が一斉に飛ぶという異常な事態に、誰もが言葉を失っていたが、直ぐにその静寂は打ち破られた。


森の奥より聞こえる地鳴りが、村人の恐怖を煽る。


数にして数十から数百にも聞こえる地鳴りはあっという間に木々の間から、影となってこちらに迫って来る。


(ヤバい!! 囲まれた!!)


男は、先程みせた鼓舞など無かったかの様に動揺しており、村人も同じ様に絶望を感じている。


足が遅いと侮っていた、魔族が村人を先回りするとは思ってもいなかった。


あの時に、直ぐにでも橋を落として逃げていれば……


男は今更ながら後悔していた。そして、愛する妻を見つめた。


アイナも同様に動揺している。先程から掴んでいた手は敵影が濃くなる程に震えがまして行く。


男は唯一持っていた鉈を握り、愛する妻を守る為、僅かにでも抵抗をしよう強く握り直す。


男は次期当主として、愛する者の夫として、愛していた者の娘を守る為に決意を固めた。


(この命に変えても彼女を守る!!!!)






ーーだがしかし、その決意は無駄になった。



東の森から飛び出して来た。敵影の正体は、酷く醜悪な魔族とは違ったのだ。


人界騎士じんかいきし


永きに渡り、繰り広げられる戦争を止めるべく、集められた軍隊だ。


人界政府じんかいせいふによって、世界から選りすぐりの人材を集めたとされる、勇者にも引けを取らない存在。


西の最前線に近い村から東の辺境の地まで伝わっている。誰もが知っている容姿。


白銀の甲冑を纏う騎士団は、それぞれの特徴に合わせて特注された、甲冑を身に纏っている。


男は今まで騎士団など見た事は無かったが、噂通り、透き通るかの様に磨かれた鎧は、紛うことなき歴戦の猛者と言わざる負えない。


男はその場を動く事が出来無かった。


騎士が森を抜け、村人達を横切り、橋を超えて行くまでの間。


鉈を構えた状態からピクリとも動けなかった。


安堵だったのだろうか、感謝だったのだろうか、呆然としていた男は妻の声で正気になる。


男は村人達と共に、騎士を追い掛ける様に村へと戻る。


道中は流石と言わざる負えないが、騎士の足跡が村へと真っ直ぐ続いていた。


騎士団の中に魔法使いが居るのだろうか? 何かしらの魔法で村へと進んでいるのだろう。


迷いなく進む道なりに、男も含めて村人は頼もしいと感じていた。


(どうか、親父達も無事で居てくれ!!)


心からの安堵とは違った男は、父の無事だけを祈っていた。


「お前ら無事だったのか!」


声の持ち主は親父だった。


やや苦労の表情ではあったが、他の連中も無事そうだった。


ああ、良かった。 男にとっては最良の喜びを感じる瞬間であったーー





それからというもの、事態は呆気なく収束した。


(あれだけの魔物の軍勢が瞬く間に撃滅されるなんて……)


騎士団は総勢三十名前後の騎士で構成されていた。


それぞれ所持している武器や防具がそれぞれ違っている。


統一されているのは、純白の鎧と、顔を全て覆うフルヘェイスの甲冑と、騎乗をしている事ぐらいだ。


だが、その装飾も全員が何処と無く違っている。


無事に村に戻って来れた村人達は、今度はそれぞれが家の無事を確認する為に各々戻っていく。


男も自分の家を確認しに戻るが、殆ど荒らされた形跡は無かった。


と言っても、多少は散らかっており、魔族が村人達を探していたかの様な状況だ。


(これじゃあ、盗賊が強盗に来た様な探し方だな)


だが、男はここで疑問に思う事が出来てしまった。


疑問と言うより、在るべき物が無いのだ。


いや、在って欲しい訳でも無いが絶対にある筈の物が無い。


(魔物の死体等は何処に行ったんだ?)


そんな疑問を不意に思ってしまった。


男は自身が、やぐらで魔物の集団を目撃した事を思い出した。


村を捨て、逃亡を図る事しか出来ない程の絶望的数であったのにも関わらず、騎士団は住民や住居に殆ど被害を出さずに事態を収束させた。


本来であれば喜ばしい事実であり、最前の理想である。


だが、日頃から危険地域に住む男には、不可能という事を理解していた。


突如として現れる魔族ならまだしも、魔界まかいに隣接した地域に住む男達には、軍団単位で押し寄せる事が可能なのである。


であれば、被害が出ない事は不可能で有り、不可避だ。


それが分かって要るからこそ、男達や村人は老人を見捨てる判断を下したのだ。


なのに、被害が無ければ、死体も無いと為れば、嫌な予感しかない。


(魔族は討伐されて無いのか?)


男は現実的に、今の現象を理解しようとする。


可能性として一つだけ思いついた。


それは戦略的な撤退だ。


魔族に人類は怯え、恐怖し続ける。


しかし習性や実態を把握、理解をしている訳では無い。


全くと言って'未知'なのだ。


そもそも、魔族は醜悪な見た目であり、人間を襲って食い殺す、以外の知識を俺達は有していない。


だが、醜悪な見た目と言っても男が見る限りに数種類の、異なる顔を持った魔族に対して、等しく同じ'価値観'しか持っていない、人類にとってはどれも同じと言う総評になっている。


であれば戦略的撤退ですら、魔族にとってはある程度の犠牲が有れば成立する話であって、死体の一つも無いのは異常である。


男は今後の為にもこの疑念を晴らす為に、騎士団に直接聞いて見る事にした。


まだ家に入って居るのだろうか、村人の姿は殆ど見えず、変わりに騎士団の数名が集まって話あっている。


「あの、騎士様……」


男が近付き声を掛けたが、その発言を遮る様に鋭い眼光で睨まれた。


その鋭利な眼光は、甲冑越しでも、はっきりと視認出来る程の圧力を感じさせた。


「お助け頂きありがとうございました」


男は、やや怯みながら、感謝を述べる。


「貴様は、この村の長か?」


「私の父がこの村の村長です」


「伝えたい事がある。 連れて来い」


男が騎士に対して、魔族の死体の件について問おうとするが、怯んだ事により、逆に騎士の頼みを聞いてしまった。


だが、これは別に間違っている訳では無い。


命を助けて貰ったからには、礼を尽くし持て成す事は、至極当然であり、真っ当であるだろう。


であれば、騎士の些細な願いも叶える姿勢が正しいと言えるだろう。


男の疑念を晴らすのは願いを聞いた後でも遅くは無い。


男は、村長である義父を呼びに行く。


村長は村の広場で、天幕の準備をしていた。


「村長、騎士様が呼んでいます」


「そうか、ワシも騎士様の為に休息所を用意してたのじゃ」


他の村人が、家に戻り安否確認をしている内に、休む事無く、村長としての責務を全うしている。


この様な姿が出来るからこそ、村長を全う出来るのだろう。


村の代表をする人間として尊敬出来る姿勢が有るからこそ、男は慕っているのだろう。


「村長、俺の事も呼んで下さいよ。 こういうのは村人総出でやるべきです」


「皆、疲れておるのじゃ。 少しは休まさせてやらんと」


初老の男の腕は、男と比べる必要も無いくらいに細い、だからこそ、村長は休んで欲しいと思う。


男は、後で手伝う約束を村長と交わし、騎士の所へ向かうーー






「この村の長を、連れて参りました」


騎士は先程の場所から動いて居なかったが、最初に居た他の数人は居なくなっており、鋭い眼光を放った騎士が一人でいる。


「我々騎士団に、負傷者が八名出た」


一体どういう訳か、屈強な風貌を漂わせる騎士ですら、負傷者が出た事に、後ろで聞いていた男は疑念を増す。


「であれば、休息所の準備をしておりますので、そちらでどうか手当を」


「要らぬ」


その返答には、男も村長も、疑念の声を我慢出来なかった。


「我らに八人の贄を差し出せ。 その人選は貴様に任せる」






ーー意味が分からなかった。


男や、村長の知っている知識では、到底理解出来ず、困惑するだけだった。


(贄って何だ? まさか、生贄の事ではないだろうな? そもそも傷の手当も要らないって何なんだよ)


「仰る意味が分からないのですが……」


男と同じ様に困惑している村長は、冷静に騎士に問いかける。


「こういう事だ」


騎士がそう言うと、スパッッと言う音にわすがに遅れて、男の視界が赤く染まる。


そして、赤く染った視界には騎士の姿が広がって見えた。


それは、親父の首が無くなったからだろう。


親父は、俺の足下で、先程まで騎士に向けていた、疑念の表情で男の事を見上げている。


「後、七人で良いぞ。 こうなりたく無ければ、早急に連れて来い」


男の思考は完全に壊れた。


何がどうなって、こうなったか。


何がいけなかったのか、村長の対応に不手際があったのか。


尊敬すべき親父は、俺の足下で無惨な姿になっている。


「あれ、師団長。 まだやっていたんですか?」


後の方から、別の騎士がやって来た。


村長を切った騎士は返答しない。


「ヒァッハハハッッ! これまた随分な脅し方ですね? 師団長は乱暴なんですよ」


後ろからやって来た騎士は男の肩を組み、耳元で話掛けた。


「まぁ、あれだ。 落ち込むな? 魔物が来てたら皆死んでたんだぜ? それがたったの八人で済むんだ。 安いもんだろ?」


安い? 安い訳ないだろう。


俺や俺達がどんな思いで逃げたかお前達に、何が分かるんだ。


俺は騎士の発言で、正気を取り戻した。


だか、やはり正気では無かったのだろう。


正確には、気を取り戻しただけだ。


気を取り戻しただけであった男は、正気では無かった為、不埒な発言をした騎士に、拳を振るった。


村長、いや親父を慕うその男の拳は、男の眼孔から伝わる'叛逆'の意思である。


だが、それを察知していたかの、肩を組んでいた騎士は男から離れ剣を抜いた。


再び、鋭い刃音と共に男の利き手は血に染まる。


既に振りかぶっていた男の拳は騎士に当たる事は無く、地べたで、親父と共に並んでいる。



頭から、血を被り利き手までを血みどろにした男に最早、痛覚は無く。 有るのは眼前の騎士達に対して一矢報いる為だけの、気概だけだ。


まさに、もう一振り振りをお見舞いしてやる瞬間だった。


?!?!


男の胸辺りから、甲冑かと見間違えられる程に磨かれた、ロングソードが突き刺さっている。


その瞬間、男は身体から力が抜け、地べたに突っ伏す様に倒れ込む。


「遊んでる暇は無いぞ。 次の村に向かわなければならないのだ」


親父を斬った騎士が、もう一人の俺の腕を飛ばした騎士と話している。


「ヒァッハハハッッ! 師団長も遊ん出たから、俺も遊んで良いかと思ったぜ」


「そんな訳ないだろ」


「あぁ、そうだ! 俺は準備出来た事を伝えに来たんだったぜ!」


「準備? あぁ、'記憶削除'か。 もう時間が無い。 皆殺しにして、先を急ぐぞ」


騎士達はさも当たり前かの様に、男を斬り殺し、この出来事が無かった様に別の話をする。


「ヒァッハハハッッ! やったぜ! コレでまた強化が出来るぜ!」


「コイツら如きでは、強化は出来ん。 精々回復位だ」


「良いんだよ! 精神的なアレだ! 人を殺すと心が癒される的なアレだ!」


騎士達の話を遠のく意識の中、男は聞いていた。


(あぁ、駄目だ。 このままじゃ皆殺される…… 誰か、誰かこいつ等を止めてくれ)


男の意識はここで途絶え、絶命したーー







「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

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