48:幻の存在
龍神の国、クリゾベリルへと来て夜が明けた。
俺は珍しく早起きをしたので散歩に出ることとする。
セイラは結局家の中に入って来てソファーで爆睡をしていた。
元気って羨ましい。
空は藍色で、星が煌めく夜。
この星がこの世界の人の涙だとするのであれば、地球で見えていた星に俺はなったのだろうか。
いずれ、終わりがやって来たとしても……俺は勇者に討伐されて幸せの記憶がなくなってしまうのだろうか__。
◇◇◇◇◇
「リュウガ、ありがとう。わざわざ家を用意してくれて」
「客人をもてなすのは当たり前だろ?俺ら龍神は人間ではなく魔王にお供出来るのが1番なんだよ」
伝説の地は人間よりも魔王の方が人気らしい。
星零だって、シズクによるとそうだった。
「せっかくだから幻獣に会いに行けばどうだ?歓迎してくれると思うぞ」
「幻獣か。わかった行ってみる。何処にいるかわかる?」
「幻獣は、普段いろんな所を巡ってる。僕が魔力で探しても出会うのは難しい」
衝撃の事実だ。
フェルの魔力で探しても見当たらないのであれば運任せになって……それで野宿を1週間ほどする羽目になって、さらに……。
あ、城に帰れるのが遥かに遅くなるのだけはわかった。
「さ、行くか」
「見つけ方分からないのであろう?どうやって見つけるんだ?」
「……それは運任せだな」
沈黙が続く。
もう、戻るのは申し訳ないから歩みを止めるわけにはいかない。
運任せでなんとか見つけるためにひたすら歩くのだ。
フェルとシズクはノヴァって貰えば大丈夫であろうが、セイラは……頑張ってもらうしかない。
「おーい、幻獣出てこいよー!」
「そうだぞー!妾たちは偉大なる者たちだぞー!!」
「……五月蝿い」
「「ごめんなさい」」
なかなか幻獣は見つからない。
リュウガは簡単に見つかるみたいなノリで言っていたけど本当に見当たらないんだな。
シズクはずっと寝ているから起こさないようにしないと、という……地味に疲れる。
「……おはよぉ。ボク、げんきなったよ」
「あ、シズクおはよう」
「いま、なにしてるの?」
「幻獣を探して1週間くらい彷徨う予定で迷子になってる」
嘘ではない。
1週間くらいきっと彷徨うだろう。
しばらくは見つからない気がするし、てか幻獣がいるのかがわからないし。
「ボク、げんじゅーのいるとこしってる。そこにいるよ」
「そこ……?何もいないけど」
「シズクは何を言っておるのだ」
シズクが指差した場所には確かに空が見えるだけ。
広い野原に空色で綺麗な空。
そこには何もいない。
「ほら、いるよ。みえないの?」
「俺らは見えないな」
あ、シズクが泣きそう。
王子と違って繊細だから優しく扱わないと……そして、シズクは可愛いから甘やかすつもり満々だし。
なんか、見えるように魔法を使えたらいいんだけどそんな都合のいい魔法があるわけ……。
「シズク、ほら俺らは此処で生まれていないわけだ。此処で育ってもないからずっと此処にいるシズクよりわからないことがおおいんだよ。だから見えないみたい」
「そっかぁ……ボク、いいマホウしってる!ほしマホウ、たいようっていうマホウ!みえないものをみえるようにするマホウなんだぁ〜」
星魔法はメテオしか知らなかった。
星魔法を操る星零だからこそ知っているみたいだし、シズクは使えるみたいだ。
なんという魔力量……成長したらセイラを越せる。
にしても太陽か……もしかしたら月とか木星とかあったりしてね。
「取り敢えず使ってみるか。よし!星魔法、太陽」
「妾は使えないのであるな。何てったって、妾は古代属性魔法を使えないからな!はーっはっは!」
「笑い事じゃないよおチビさん」
太陽と唱えると春みたいな暖かさに包まれる。
これは練習が必要だ。魔力がどんどん吸われていく。
で、肝心の幻獣だが普通に見えた。
目の前には立派な角を携えた白い馬、ユニコーンがいる。
そして泉のあるところには水の精ルサールカ。
ドラゴンや妖精も幻獣として含まれるが、実際に見れることは少ないので伝説の地でみる幻獣はもっと珍しいということ。
『ソナタら星零に魔族、神の子まで……なんとも珍しい組み合わせですね』
「幻獣って喋れるんっすね」
『幻獣は神に力を与えられた存在なのです』
伝説の地には神に力を与えられた生物が多いようだ。
フェルもそのうちの1人だし、魔族には程遠い神様にいずれ会えることが出来るのだろうか。
神の子とは出会えたんだけど。
『ソナタらを歓迎いたします。さあ、我らの背中に乗ってください。幻獣の国まで案内致します』
「なんともご丁寧に……」
幻獣はとても礼儀正しい。
落ちないように、酔わないようにユニコーンが飛び立った。
やっぱり魔法で浮遊するよりも速いし、爽快感があっていい。
セイラは自分の翼で飛んでいる。
幻獣でも酔うつもりでいるんだな此奴。
『少々揺れますのでおつかまりください』
「え?ああ……」
わかった。っという前に魔法が空を切った。
「何が起こったんですか幻獣さん。今のは魔法ですよね」
『稀にあるのです』
「稀にあったら怖いって!!」
突然魔法が向かってきたら怖いだろ!しかも稀に!
揺れるって魔法が来ることを察知してたんだね……幻獣おそるべき。
『もう直ぐつきます』
「おぉ……!神秘的だな」
『ようこそ、幻獣の国……スマラルダスへ』
エメラルドを基調とされて作られている国。
人魚は水晶、龍神はアレキサンドライト、そして幻獣がエメラルド。
伝説の地では宝石を使われているところが多いらしい。
山の上なので下には雲海が広がっている。
夕方だから雲の色は橙で、なんとも幻想的だ。
「ちなみに、幻獣って人型になれるんですか?」
『なれますよ。よくご存知ですね』
「龍神もそうだったからな……伝説の地にいるのは珍しいのばかりですね」
『別名自然の神殿ですから』
神を祀っていなくても神のいる場所。
自然にある神殿というとても人間が勝手につけたような名前。
まあ、人間が勝手につけたんじゃなくて観光目的で神様が自らつけたという説もある。
『我ら一同、誠意を持って……祝福をお贈りいたします!』
空から綺麗な光が舞い込んできた。
「回復の魔法……なかなか大規模なものだな。流石幻獣」
『お褒めいただき光栄です。旅の疲れを癒してください』
泊めるところと、温泉まで用意してもらって極楽気分で観光した。
幻獣万歳。




