47:龍という種族
星零のシズクが仲間に加わり、そこから歩いておおよそ1日。
伝説の地ってこんなに広かったか……?
現在は、野原をのんびりと歩いている最中だった。
「ねぇー、あそぼーよ!」
「だってよセイラ。相手しろ」
「妾だけか!?」
シズクはこれでも小学1年生くらいなので、遊びは大切だ。
しばらく休憩しよう。
シズクとセイラは野原で走り始めた。
広いし、ひらけているからそこまで迷子になる要素はないと思うけど、心配だな。
「遠くに行くなよー!」
「わかっておるぞ」
「いってくるね〜」
適当に椅子でも作ったらフェルが一瞬で座った。
俺が座ろうと思って作ったのに……。
「星零は、人の願いを聞き星を零すと言われている人間界でいうと御伽噺にもなっている架空の存在」
フェルがゆっくりと話し始めた。
星零についてみよく知っているようだったのでそのまま聞くこととする。
「凄い昔、星零は困った人間の元に現れて願いを叶えていたり、星を零す……流れ星をしたり、古代属性魔法とも言われる星魔法を操る凄い種族。でも、いつの日か良いように利用されて人間嫌いになった。
伝説の地で生まれた種族は皆んな、同じようなもので人間が嫌いなんだ」
「へぇ……」
「反応、薄い」
「フェルが饒舌で話す事ってほとんどないから驚いていただけ」
俺が使っていた古代属性魔法のなかの星魔法。
それをいつでも使えていたシズクは家族に鍛えられ逃げてきた。
たまたま俺がいたから良かったものの、あのままだと本当に餓死していたかもしれない。
「にしても、帰ってこないな」
「探し行く?」
「行こうか。フェル、ノヴァ」
「ノヴァ」
すぐ見つけるには技術魔法を使うしかない。
少し行くと木々が生い茂るところがあるので2人はここにいったのだろう。
遠くには行かないでと言ったのに目を離したのが間違いだった。
「ーーーー!!」
「これは……」
「叫び声だよ。多分2人の」
「流石、耳いいな。フェルは上から見てくれ、俺は下から行く」
「了解」
身体強化魔法、俊敏。
しばらく走るとセイラとシズクが見えた。
意外となんともなくて大丈夫そうだな。
「クロス、来てくれたのか!妾はもう、怖い思いをしてたおれそうだぞ……」
「何があったんだ?」
「なんか、あそんでたらおおきなドラゴンにこーげきされた」
大きなドラゴンが無差別に攻撃……。
ドラゴンは、伝説の地にいるイメージが全くないのだが、シズクが言うなら間違いない。
となると、此処はドラゴンの住処に近いようだな。
上から猛烈な風が吹き荒れる。
真っ赤な鱗、大きな牙、間違いなくドラゴンだった。
「戻って来たのかよ。セイラはシズクを守るように」
「ラジャー、なのだ」
「フィニッシュ!!」
上から来たフェルによって、ドラゴンは落ちて来た。
長期戦の予定であったがフェルが強くてすぐに終わってしまった。
さすがに可哀想だし、回復魔法でもかけてあげようか。
「……ん?貴様が倒したのか」
「違う、僕」
「そうか!その黒髪強いな」
「さっき殴ったから頭のネジ外れたみたい」
そして勘違いをするドラゴン。
まて、なんでドラゴンが喋っているんだ。
俺の知っているドラゴンは喋らないし知性も何もかもない。
恐るべき伝説の地。
「どうして喋るのだ、という顔をしているな。俺らは龍神だよ。だから人にだってなれるのさ」
「へぇ、そうか。うん、元気でな」
「おおい!貴様待て、俺に勝ったんなら里へ案内してやるよ」
「あ、結構です」
さてと、未だに種族に国へと行くことが出来ていないのだが……。
フェル(人間の姿)の上にシズク(羊の姿)が飛び乗った。
セイラは迷子にならないように、ナルにつけられていた呪魔法をかけて……よし。行こう。
「ちょちょちょーい!ちょっと話を聞け貴様ら」
「え、なんかの勧誘?もう足りてるんで」
「足りてるってなんだ!ってか、勧誘ではない!!」
里へ案内してやるってことは勧誘じゃないのか?
こいつ、言葉の意味分かっていないみたいだな。可哀想に。
星零のところだけは避けて進みたいから、次に行くとしたら此処から東に進んで行くか。
「俺らの里っていうか国に来ないかって言ってんだよ!」
「あ、国だったんだ。うん。行く」
「行くのかよ!」
フェルに殴られたからテンションも壊れてしまったみたいだ。
ちょっと五月蝿いから静かにしてほしい。
ドラゴンが人へと姿を変えて歩き始めた。
多分、付いて来いって事なんだろうけど言ってくれないと分からない。
「おい、ドラゴン」
「俺にはリュウガだ。リュウガっていう名前があるんだ!」
ドヤって言われてもだいたいは名前付いているんだからなぁ。
それに龍のリュウガって名前、結構しのまんまだなって思う。
本人は気に入っているみたいだから文句を言うことは何もないけど。
「ね、ドラゴン」
「だー!俺はリュウガっつってんだろ!!」
「ふむ、そなたは名前をどうしても呼ばれたいみたいだな!」
「ボクドラゴンこわい……」
3人のおかげでメンタルボロボロなリュウガは一瞬にして切り替えた。
「で、どうしたんだ?狐娘よ」
「君に一撃いれたの僕なんだけど」
「え?……じゃあ、狐娘が1番強いのか?」
「まあ、此奴これでも神の子だしな。妾より強いのは確かである」
「ボクよりもつよい」
俺も本気のフェルに勝てるかと言われたら絶対に無理だろうな。
◇◇◇◇◇
「此処が我ら龍神の国クリゾベリルだ!」
「なんていうか……」
「むさ苦しいのだ」
活気があふれているから、叫び声とか五月蝿い。
というかなんだ此処。
クワルツ・ド・ロッシュは水晶でできていたけど此処は赤い宝石が輝いている。
全部宝石で国ができていると考えると人間との貿易は本当に要らないんだなって思う。
「さあ、案内するぞ。おーい、皆んな。此奴らが俺に勝ったやつだぞー!」
「違う。勝ったのは僕だけ」
「思いっきりもてなしてやるよ。そーだ、貴様らなんて名前だ?」
めっちゃフェルのこと無視するじゃん。
「妾は誇り高き3代目死神のセイラなのだ。あ、妾の上にいる羊はシズクだぞ」
「僕はフェル。ドラゴンを倒したフェル」
「俺はクロス」
「よろしくなー!」
しばらくリュウガと一緒に過ごしてわかったのは今まで出会った奴の中で1番五月蝿い。
龍神というのはどうやら宴が好きらしい。
俺らがやってきたことですぐに酒を飲み始めて、目の前にいるリュウガもたくさんの酒を俺らの元へ持ってきた。
「妾はいただくぞ!」
「俺はいい、一応未成年だしな。シズクも絶対に飲んじゃダメだぞ?」
「うん……ねむい」
「僕が寝かしつけてあげる」
セイラはやっぱりノリが似ているから龍神に混じっていった。
今日は此処で泊まらせてもらえるらしいので貸してもらえる家へ向かうこととする。
結局シズクは寝てしまったから俺が運んでいる。
「ひとつひとつの家が大きい」
「だな。まあ、龍神でかいもんな。此処が今日泊まらせてもらえる家だ」
「まずシズクを寝かせてあげよ」
シズクをベッドに寝かせる。
「伝説の地は星が綺麗に見えるな」
「これは、人の涙。人が死んだ時に天へ登った魂。だから時々、落ちる。また、新たな命として落ちる」
「新たな、命」
「そう、新たな命。信じる?信じなさそうだけど」
「いや、俺は信じるよ」
俺が、生まれ変わったように人は記憶を持たぬまま生まれ変わるのだとしたら……この世界はたくさんの繰り返しで出来ている。
永遠に、魂が枯れない限りは続く輪廻転生。
「……むにゃぁ」
「俺らも寝るか」
「外にいるおチビさんは?」
「ほったらかす」
二日酔いの面倒は嫌なので外で寝ていただこう!




