42:ハッピーエンド
「ここ、は……。おれ、死んだは……ず」
死者蘇生は成功したようだった。
シューヴァが言葉は詰まりながらも喋ることができたので呪魔法も大丈夫だな。
エレニアを倒せるのはシューヴァだけなはずだ。
ノーチェルとして、シューヴァに倒してほしい。
「シューヴァ、お前に魔力提供をする。聖魔法、幸福を」
そーいえばユーフォリアを姫に教えてなかった気がする……。
味方全員一斉回復だ。
もう少し頑張ってくれ。
俺らは全力で援護にまわって、シューヴァを手助けする。
「呪魔法!」
「スペクター、飲み込め」
「闇魔法!!」
「アクアウォールー!」
「ライトニング・ソード!」
「呪魔法、モルテ」
「影魔法。残念だけど封じ込める」
「魔眼、なのだ!」
さあ、道は開いた。
全てを出し切って、ようやくエレニアに届くことができる。
「出し切れ、シューヴァ!」
「古代属性魔法、メテオ!!」
エレニア・ノーチェル……ノーチェルはもう、終わりだな。
今までの事を後悔して転生したら人のために生きるといい。
そして、来世ではきっと心優しい人間へと生まれるといい。
こうして、エレニア・ノーチェルはその場に倒れた。
◇◇◇◇◇
エレニア・ノーチェルの悪事は全てバラされた。
バラされた、というかノーチェルの罪が全部露わにされたのだ。
ノーチェルが行ってきたことは、貴族として、人間として正しくないものだった。
奴隷を飼って、痛めつけることもあった。
まだ生まれて5年の子供を……殺してしまうこともあった。
得られたものはただの優越感で、失ったものは数多の命、信頼……数えてしまえばキリがない。
ノーチェルへ託された希望はここで終わってしまったが、目の前にいる男の顔は笑みを浮かべている。
あれから3日後、俺はフェルを頭に乗っけてセイラを連れギルドへと立ち寄った。
輝にいろいろと話すため、そしてメルさんに謝罪しに来ていた。
「すみません、メルさん」
「ああ……大丈夫です。ギルド長の行いは決して善いものとは言えませんでした」
「メルさんが無事ギルド長になられたのですね」
「はい。無事ではありませんでしたが……」
メルさんによると、ギルド長をやりたくない人が沢山いたらしい。
それで1番しっかりしているメルさんが適任だと押し付けられた……そう考えると可哀想だな。
でもメルさんだからこれから何があってもいい感じに物事が収まる予感がする。
俺を1番叱ってくれるし目上の人にも堂々と立ち向かえるだろう。
「で、輝の3人に会いに来たんですけど……」
「少々お待ちくださいね。部屋まで案内出来る者を連れて来ます」
1分くらいしてギルド員がやって来た。
輝きの人が話を聞きたいとか言っていたので密会をしにきたのだが、場所がないので冒険者ギルドになった。
だけどセイラが騒ぐだろうから……音が漏れないように部屋を借りたのだ。
「ありがとうございます」
「いいえ、当然のことですので」
ギルド員が去って行った。
よし、少し緊張するが頑張ろう。そう心に決めて扉を開いた。
「えー、嫌だよぉ!絶対にこっちの方がいいよー!」
「いいや、今回だけはサナに反対する!シューヴァはどう思う!?」
「俺はどーだっていい……」
「「はぁ!?」」
なんとも騒がしいのはどーいう事だろう。
一応シューヴァは病み上がりだけど2人ともうるさくないか?
……ってか、こいつらなんで揉めているんだ?
シューヴァが俺に気づいたようでライとサナに軽くげんこつをした。
うわぁ、聞いてはいけない音を聞いてしまったよ……痛そう。
「おう、シロ!元気にしていたかな」
「俺はいつでも元気だ」
「そうだよぅ、シロは1番強いんだからー!」
「……シロが悩んでいる事、よくある」
「えー、意外だなー」
出会った途端こんなにも騒がしくなるなんて誰が予想しただろうか。
改めて部屋を借りてよかったと感じた。
「さてと……俺の知っている限りの情報を教えるよ。
まず、エレニア・ノーチェルは罰されて生涯、牢屋で過ごすことになるらしい。
新しい当主としてはシューヴァの父親だった気がする」
ノーチェルへ託された希望はここで終わってしまった。
シューヴァを捨てたのは紛れもなく祖母のエレニアだから、ノーチェルへ戻ることはできるだろう。
俺が情報を話して、シューヴァは笑みを浮かべていた。
ノーチェルを1番憎んでいたのはこいつだもんな……エレニアのことを聞けて嬉しいのか。
「そーいえばさぁ、シロがシューヴァを生き返らせる時に使ったのってなにー!」
「あれは禁忌魔法のひとつ死者蘇生だよ」
「お前、よく生きていたな」
フェルとセイラの膨大な魔力のおかげだろう。
2人にも感謝しないとな。
「俺は輝を抜けようと思う」
「それって……」
シューヴァが口にしたことは突然の出来事で、俺らは静寂に包まれた。
「皆んなには迷惑をかけてしまった。
俺がシロに相談したのが間違えだったかもしれないけど、沢山迷惑をかけてしまった。
だから俺は1度冒険者から足を洗う……そして」
「やめてくれ、それ以上聞きたくない!」
重々しい話を断ち切ったのはライ。
サナもシューヴァの事を真剣な目で見ている。
「俺はっ、シューヴァと旅をしてきて楽しかった!
もちろん辛かった事も目の前で絶った命を見て悲しい事もあったけどシューヴァとの思い出は一生の思い出だ。なのに……抜けるなんて言わないでくれ。……お願いだからこれ以上逃げないでくれ!」
「ライの言う通りだよー。あたしも楽しかったし、シューヴァが加わってからはもっと冒険をするのが好きになったのに……シューヴァは秘密を黙っていて、事実から逃げていた。もう、やだよ。次命を絶える時があったら絶対にあたしたちの前で幸せじゃなかったら許さないんだからねー!」
ライもサナもそれぞれの思いを持っていた。
シューヴァの背中を押してあげるのが、第三者の役目かな。
「別に、強がらなくてもいいんじゃないか?」
「強がってなんか……!」
「お前は逃げすぎだ。仲間を騙してきたぶん、言う事を聞いてやれよ。もう子供じゃないんだ」
シューヴァはふっと笑った。
俺、なにか可笑しなことを言っただろうか……。
しかし、前を向けるみたいならよかった。
「俺らより子供にそれを言われちゃあな!」
そうか、俺輝より歳下だった。忘れてた。
「それよりー、あのシロってクロって感じだったよねー」
「ああ、見た!シロよりクロの方が似合っていたよな」
「もしかしてお前ら気づいてないのか……?」
シューヴァが信じられないとでも言うようにライとサナに問いた。
まさか、魔王ってことがバレていなかったなんてなぁ。
こいつらまさか魔王についてなにも詳しくないのか!
「で、気づいてないってどーいうことだ?」
「あー!むしゃくしゃするなぁ!俺が魔王だよ。お前らが恐れる魔王なんだよー!!」
「これがー?」
「これってなんだ馬鹿」
「うわぁー。ひっどーい」
「えぇ!?妾の主人殿が妾の絶対的王だったのか……!?」
「お前も気づいてなかったのかよ」
「しょーがない。おチビさんは頭に詰まってるの、なにもないから」
「1回やるのか?妾がフェルの事を叩きのめしてやるぞ……びゃあああ!」
「五月蝿いよ。おチビさん」
なんだか、仲が良いんだか悪いんだか……。
ってか、ここギルドなんですけどー!
魔法を平気で放つのやめてもらっても良いですかねー!




