39:エレニア・ノーチェル
ひとつ、解決していないことがある。
ライとサナの呪いは解けたがノーチェルの手はすぐそこにある。
2人が無事になったからといって終わりはしない。
何故それが分かるかといったら、この冒険者ギルドのギルド長であるエレニアがノーチェルの1人だからだ。
敵に出てきてもらうため冒険者ギルドで呪いを解いた。
自分から出てきてもらったほうが探す手間も省けるだろう。
「ちょいと時間を頂けますの?」
来た。此奴がエレニア・ノーチェル……。
真っ黒な扇を持って、シューヴァと同じ銀髪の髪の毛を上で結んだ女。
瞳の色も同じ事から血が繋がってることは確かだ。
「時間なんてない」
「あら、残念ですわ」
「誰」
「妾よりも弱いな」
「ここのギルド長だ。一応、無礼のないように」
「「りょーかい」」
といっても一応だ。
貴様の悪事を晒してギルド長の座はすぐさまメルさんへ譲ってやる。
「其方の者、此方へいらっしゃい」
「……嫌だ。実家に帰ってたまるか」
「実家、ってどーいう事だシューヴァ」
「……何でもない」
エレニアは扇をピシャリと畳んでシューヴァへ突き刺す。
成る程、これは魔法武器だ。
闇属性の魔法武器だが呪魔法に長けているようで、此奴がこの事件の黒幕ということは一目でわかった。
魔力が含まれているにしては量が多い。
まるで魔物をそのまま取り込んだように感じる。
「早く帰って来なさい。貴様にはやる事が残っているであろう」
優しい口調。だけど棘のある言葉。
口を閉ざしたシューヴァと何も言えない2人。
状況がなにも分からないのだから仕方がないかもしれない。
今迄シューヴァが黙って来ていたのだから。
「貴様は早く魔力を捧げるだけの存在となれば良い」
「嫌だ」
「何故?冒険者より家に居る方が安心して暮らせる。贅沢な思いを出来る。だって貴様は貴族なのだから」
「貴族だって!?」
ようやく口を開いたライが信じられないと言うように叫んでいた。
立ち上がって、机を叩き、目を見開いている。
「だから早く帰って来なさい」
「聞こえてなかったのか?嫌だと言ったんだ」
「ええ、聞こえている。でも、ノーチェルは王族の次に絶対的な権力を持っているの。それでも嫌だと言うのなら力で連れ戻す」
「それでも、嫌だ!」
ああ、此処では戦いたくないと思っていたんだけど……。
エレニアもシューヴァもやる気だ。
ひとまず先に結界を張った後ギルドにいた人を避難させる。まとめて空間転移。
フェルはノヴァと唱え俺の影へと入っていった。
影魔法。流石はフェルだ。
古代属性魔法には含まれないが極めれば圧倒的な強さを誇る影魔法を使いこなせるなんて……。
セイラも弱くはない。
だから、死神って事もあるのか大鎌を何処からか取り出した。
多分異空間からだろう。空間魔法を使えるのは魔力が多い証拠だ。
ライもサナもよく分からない状況だろうが武器を構えた。
危険であるということ、そして戦うべき相手と判断したみたいだ。
「シューヴァ・ノーチェル。貴様が従わないと言うのなら私は貴様を此処で処します」
「望むところだ」
戦いが今、始まった。




