29:神の子
宮廷魔導師として国の周りに結界を張った。
そして、ようやく忙しい仕事が終わって帰ってきたのが夜の8時。
「仕事、おわったー......」
よし、ベッドにダイブしよう。
この城のベッドふかふかだからな......流石は城の部屋とでもいえる。
「あら、おかえりシロちゃん」
「妃様!?......すみません、どうしたのですか?」
「レイを連れて来てほしいの」
「すぐ参ります」
妃様は去っていった。
......あー、俺のベッドへダイブする時間が遠のいた。
なんか、もう疲れているので王子のところまで空間転移して行き、無理やり連れて来た。
「もう寝ようとしてたのに......」
「王子が4時に起きる理由が分かりました。8時に寝てるからですね」
「せーかい」
もう眠いのか、王子はうとうととしながら妃様の元へと向かった。
こればかりは仕方ない。妃様の命令には俺も逆らえないのだ。
「失礼します」
「待っていたわ〜」
いつもマイペースでおっとりしてるよなぁ。
暇そうだけど、今日はなんだか楽しそうにしている。
妃様は妖精使いで自由に妖精を操れるから珍しくて狙われやすい。
その人の瞳は黄金に輝いていると言う......妃様の瞳は見事な黄金だった。
「レイももう、眠いでしょ〜?」
「知ってるのになんで僕を呼んだの?」
王族とはいえ、親子だ。
暖かな雰囲気が2人を包んでいる。
「2人に見てほしいの」
妃様は、部屋の奥の方まで行って毛布を持って来た。
いや、毛布に包まっている何かを持って来たが1番正しいな。
なんだ?......獣の耳が生えている。
魔力がないと言われる獣人にしては、魔力を感じるし......可笑しいのは確かだ。
「この子、多分神の子なのよ〜」
こんな子供が、神の子?
神の子は伝説上神の化身ともされていて、その力は神の血をひいているのでとても強い。
だいたい獣耳があって、猫・狼・兎・狐の4種類に分けられている。
この子は狐だ。狐は魔法に特化していて変身系の魔法が得意らしい。
しかし一体、人間の前に姿を現さないとされている神の子が何故ここに?
「実は外で蹲っていたのよ〜」
「外に出てはいけないのでは?」
「......妖精と視覚を共有したの」
「ああ......」
目は泳いでいるけど、そういうことにしといてあげよう。
今は俺たち......というか王子を見て怯えている神の子をどうにかしないと。
「私がお世話してもいいのだけど......もっと外を見せてあげたいの〜」
「外、ですか?」
「子供だから、外を見せてあげたほうがいいと思うのよ〜」
王子は半分寝ていてほとんどこの話を聞いていないのだろう。
お詫びに明日何かを作ってあげよう。
「王子だけ呼べばいいと思うのですが......」
「シロちゃんはもう家族同然じゃな〜い」
「はぁ......」
そうですか。
でも、どう見たってこの子怯えているんだよね。
「......おいで」
王子が神の子へ手を差し伸べた。
そしたら俺の方に来て隠れてしまったのだ。
少し王子の方へ向かうと俺を盾にして王子と距離をとる。
「なんで、嫌なんだ?」
まだ子供だから優しく声をかける。
「あのね......人間、怖いの」
「妃様は大丈夫だったじゃないか」
「一緒いると居心地がいい」
「......俺は?」
「人間と同じ変な居心地がしない」
俺が人間じゃないと言われている気分だ。
いや、実際人間じゃないんだけど元人間として少し寂しい気持ちになる。
「多分王子と一緒の方が楽だぞ」
「やだ!」
「うぐっ......」
正直に断られて心にダメージを受ける王子......。
「妃様......」
「ええ、いいわ〜。この子の望むようにしてあげてね〜」
「ありがとうございます」
「僕もこの子と仲良くなりたい!」
「......うぅ」
王子がジリジリと神の子に近づいたため神の子が余計怯えてしまったようだ。
俺が怒ろうとしたがそれよりも先に妃様の手が出た。
凄い鈍い音がしたから痛そうだな。
「痛いよっ!なにすんのさ」
「そんなにすぐ仲良くなれるわけないじゃない!よく考えて行動しなさい!!」
凄い迫力。
え、何時もの口調はどうしたんだ?
「お母様、昔は冒険者で物理攻撃が得意だったんだよ......」
俺の心を見透かしたように王子が教えてくれた。
「そうなのですね」
「それは禁句よ〜」
戻ってくれて何よりだ。
しかし......これから神の子と呼ぶのもよくないな。
名前でもつけてあげたい。
「フェルとか、どうだ?」
「......フェル。僕の名前、フェル!」
フェルは長い髪の毛をなびかせて、にっこりと笑ってくれた。
王子が少し泣いていたのはいうまでもない。




