26:8歳の誕生日
「シロー!」
「どうしました王子」
なんだかこうやって王子と話すの久しぶりに感じる。
王子は騎士団の方に行って最近は剣術を学んでいるらしいから城にいても話すことはほとんどない。
「今日、マリアの誕生日じゃん?」
「それは初めて知りました」
「みんな慌てていたよ」
「私、今起きたばかりですからね」
午前7時、王子は早起きなので何時も4時に起きているから急いで俺の方にきたのだろう。
俺が起きる時間は7時だから、王子の部屋と遠いし5分はかかってしまうもんね。
息切れしてるけどこいつ、どんだけ本気で走ったんだ?
「誕生日プレゼントを買いに行きたい!」
「ちゃんと朝食を食べて、顔洗って、準備をしっかりとしてください」
「顔は洗った」
こいつが少しずつ成長しているだと......信じられない。
『シロではないか』
「お、わんころ」
『誰がわんころだ!我はスティーリアという名があるぞ』
あれから、フェンリルは姫の使い魔におとなしくなってくれた。
城の中でも基本わんころで居てもらっている。
わんころは嫌だと言っているが、皆んな子犬のように可愛がってくれてスティは満足しているようだったので、此奴は素直じゃない。
「で、何か用か?」
『魔王を見込んで頼みがある』
スティには魔王ってことが一瞬でバレた。
魔力とか色々と違うからとか言っていたけど流石は神獣だな。
『我もマリアのたんじょーびぷれぜんと、とやらを買いに連れて行ってほしいのだ』
「わかった。スティ、大人しくしてろよ」
「久しぶりの外だー!」
「騎士団の拠点に行ってるじゃないですか」
「街が久しぶりなの」
スティという名のわんころは俺の頭の上に乗っている。
重力魔法を使って少し軽くしたので俺の負担は一切ない。
ああ、強いていうなら上できゃんきゃん吠えていることが煩いことくらいだな。
『見ろシロよ!人間が沢山いるぞ』
「なんだよ俺が今まで人と無縁だったみたいに......」
『実際そんなもんだろ』
「喋らせておけば偉そーに。残念ながらここに来てから3年も経ってるんだよ」
スティは、俺が来たばかりだと思っていたようで......我らは人間を知らない仲間だろう?と事あるごとに仲間アピールをしてくるのでめんどくさい。
......いや、俺は前世があるし何年も経ってるから100年くらい人間と関わらずに生きているフェンリル様よりかは圧倒的人間のことを知っているんだよな。
「王子、決まっているんですか?」
姫のプレゼント。
王子が決めているとは思っていないし彷徨う覚悟も出来てはいるのだが聞いといて損はないだろう。
「もちろん決まってないよ」
『我も決まってないぞ』
「ああ、そうですか......」
期待を裏切らないのが、ブルーライズの王子だった。
「でも、マリアの好きそうなものにしたいな!マリア......本が好きだから本屋さんに行きたい」
「本屋ですね。すぐそこなので行きましょうか」
本屋までは歩いて3分だから、すぐに着くだろう。
スティは俺の上で悩んでいた。
食べ物をあげるって言っても姫は王子と違って甘いものはそんなに好きじゃないから考えないと。
抹茶とかあげたら喜ぶだろうなぁ......。
本屋では、王子が上級魔法の本を買っていた。
スティの願望でフェンリルの本を少し読んで、伝説上かっこよく書かれていたのでスティは大はしゃぎして尻尾を振っていた。うん、わんころだな。
城へ戻って来た。
姫は外出をさせられている......わけではなく、今日が貴族たちとのお茶会だったため庭へと出向いている。
その間に使用人たちはせっせと働いているのだ。
とても大変そうではあるが、俺も王子もスティも手伝う気は一切ない。
いや、お前らは絶対に手伝わなくてもいいと言われてしまったのだから。
基本俺が王子と姫の世話をしてスケジュール管理、実質護衛、それからこのような料理などの雑用までやってしまっているから今回は良い姿を見せるぞと使用人たちが意気込んでいるのだ。
で、王子はもちろん手伝わなくてもいいし、スティは見ての通り役にはたてない。
無事、買い物に行けたからいいとしよう。
しばらくして姫がぐったりとした顔のまま帰ってきた。
「あ、お兄様たち......」
「マリア、大丈夫?」
「見てわかりませんか」
つまり、疲れたとでも言いたいのだろうか。
うん......お疲れ様です。
「あ、こっちきてマリア!」
「えっ......お兄様?待ってください!」
「王子、廊下走ると転びますよ」
「いでっ!」
『......言わんこっちゃないな』
王子が走ったところを注意したのだけど、すぐに転んでしまった。
ゆっくりと歩いて食堂まで向かうことになった。
「お誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
なんとも仲のいい兄妹だ。
パーティーは進んでそろそろお開きに近づいてきた。
王子は今からプレゼントを渡すらしい。
上級魔法の本......、ま、姫なら喜びはするだろうな。
「シロさんは何かないの?」
「ちゃんとありますよ。お誕生日、おめでとうございます」
装備を渡させてもらった。
見た目はペンダントだけれど、光属性効果が上がるというなかなか良い値段のする装備だった。
王子の誕生日に渡したものよりも全然高かったので、もう買わないことに決めようと思う。
『我からももちろんある』
此奴......結局決まらなくて買ってなかったのに!(フェンリルなのでお金はない)
スティはわんころから立派な狼へと成長した。
正確には元に戻ったが正しいのだけど......ま、いいか。
スティは姫の前で魔法を使った。
『終わったぞ』
「何をしたの?」
「姫の片目に氷のような模様が刻まれてますね」
創造魔法で鏡を作り、姫へと渡す。
「本当だ......」
『これで氷属性も完璧になるだろう。それと魔法の技術がだいぶ上がるぞ』
姫は前へと歩いて行き......。
「みなさん、どうもありがとう!」
最高の笑顔を見せてからお辞儀をした。




