11:社交界
もう少しで王子の社交界が始まってしまう......。
なんで俺がこんなにも緊張してるんだ。
俺は魔王だ。今まで、緊張なんてほとんどして来なかった。幼少期に迷子になった時くらいしか俺は緊張なんてした事がない。
王子、失敗したら俺の運命が崩壊するからお前に託す。
「シロ、少しいいか?」
「はいっ!......なんだ、王か」
よかった、暗殺者とかじゃなくて。
変に元気よく返事をしてしまった......学校なら満点の返事だろうな。
ところで、王が何の用だ。まさかクビとか......?
王は手に持っていたものを俺に差し出した。
「レイを見てくれる礼だ。受け取っておくれ」
「王子の世話をするのは当たり前ですよ」
「家庭教師だがな」
王は俺に新しいローブをくれた。
ちゃんと魔力を抑えられるローブだ。これでもうちょっと恐れられずに済むか。
「シロのローブは庶民のものであろう」
庶民の出って事になっているからしょうがないだろ。
「これから此処で暮らすにはそれなりの格好をしてくれ」
「感謝する。あと、一応言っておくが本当はクロスだ」
「今はシロであり、魔王ではないからな」
はっはっは、と高らかに笑った王を横目にローブを着てみる。
貴族が着るものなだけあってなかなか良い素材が使われている。
着心地がとてもいい。この布ってまさか魔王城付近で取れる物じゃないか。
一人で感心してると、王子がドタドタと走って来た。
いや、走んなお前。はしたないぞー。
「シロ!僕、頑張って来る」
「頑張ってくるのはいいが、走らないでくださいね」
「わかってるよー!」
分かってるなら走るな。転けるぞ。
王子は再び走って行ったので生憎様だが顔面から転けてしまった。
俺みたいな性格の悪いやつに笑われるからこれから気をつけたほうがいいな。
転けた後、少し泣きそうなのは実に滑稽だった。
王子は本日初の社交界だから失敗しそうだよ。とても怖い。
それが婚約発表とか荷が重いだろうけどステージに立って堂々としている姿はなんとも王子らしい。
悪く言えば我儘とも捉えられるが出会った時よりかはマシになっただろう。
ユナ様もステージの上で王子の横へ立った。
頑張ってください王子、ユナ様。暗殺者は任せてください。
礼儀については、何とかして敬語を教える事に成功した。開始10分前にだけど、王子が着替えている時にだけど!して......王子が頑張らないと暗殺者を捕まえられない。
王子に運命がかかってるのは結構本気な話だ。
「本日は......」
挨拶が、始まってしまった。




