嫉妬し過ぎて見てまうわ!
容姿端麗、勉強は常に学年トップ、スポーツ万能、誰からも愛されるキャラクター。
何の非の打ち所も無い。
それだけに見ていて悔しくなる。
何でアイツは何でも持っていて私には何にも無いんだ。
「アカン! アカン! 落ちてる小銭見つけやすい以外、勝っとるとこないやん! 私!」
私のデカい嫉妬声を、周りの友達が止める。
その中の一人、市絵がこう言う。
「つーか、それ恋だし。気になり過ぎて恋してるし」
私は市絵のほうをキッと睨みながら、
「全然ちゃうし! あういう輩は裏でヤバイことをやってるんや!」
「いや由香は表でヤバイこと言ってるし」
「全然ヤバないわ! ホンマにヤバイことは内に秘める悪魔やねん!」
「その悪魔が出現するのも時間の問題だし」
市絵は全く分かっていない。
私のこの気持ちは純粋な嫉妬心なのに。
アイツこと葵は幼稚園からの幼馴染で、昔は全然そんな感じではなかった。
むしろおとなしくて、いつもモゴモゴ喋り、何やいっつも口の中に牛スジ入れとんかいというようなヤツだった。
それがだ、それがだ、小学校の頃にイジメられてから、毎日何キロも走るようになってから変わってしまった。
運動神経も徐々に良くなり、頭はまあ元々良かったけども、声もデカくなって、自信に満ち溢れるようになっていった。
なんやねん、オマエのアイデンティティ死んだんかい、それかアイデンティティ新段階やん、私がオマエの内部をしっかり見る診断回したろか。
意味無い押韻めっちゃ浮かんでワシャ、ラッパーか。妬みと嫉みのラッパーか。だいぶ社会に文句ありそうやないか。
いやいや! 私は葵にしか文句無いんや! それ以外は純白や! 純白のパジャマや!
惚れろ惚れろ! 私の純白のパジャマ姿見たら惚れろや! それなのに「今日休んだ分のプリント持ってきただけだから」て!
それ以外に言うことあるやろ! 好きって言えばええねん! 正直になればええねんて!
《《《それ私やぁぁぁぁああああああああああああああああああ!》》》
めっちゃ好きや! 葵のことめっちゃ好きやねん!
嫉妬し過ぎて毎日見た結果、めちゃくちゃ好きになったわ!
幼稚園の頃より好きになってもうたわ! なんやねん! ソレぇ!
もうやるっきゃないわ! よっしゃ!
「おい、葵。ツラ貸せや」
クラスメイトたちが「喧嘩じゃん」「昭和のヤンキーじゃん」「今、令和だぞ」とかうるさいが関係あらへん。
従順に私の後ろを歩く葵。
おうおう、そのまま従順にOKすればええねん。
人があまりいない棟の廊下で私は振り返って、こう言った。
「葵、オマエのことが好きやねん。嫉妬し過ぎて好きやねんて。付きおうてや」
すると葵は大きな声で笑い始めたので、私は力強く、
「ボケちゃうわ!」
とツッコむと、葵がこう言った。
「いやそんな嫉妬し過ぎてって何だよ、というかそうか、由香は俺のこと好きだったんだ。じゃあ両想いだったんだ、助かったー」
何が助かったやねん。
こっちの台詞じゃ。
(了)