ディープインストール
近未来。
本来、亡くなった人間の人格を再現していたいくつかのAiデータがハッキングされ、その人格のディープフェイクがデータがでまわり人々は体の端末からそれにアクセスできるようになる。
あるハッカーの男が手首の端末から、有名人の人格データをインストールし改造する。彼は自分の体に埋め込まれた端末に、彼のしぐさ、言葉遣い、ふるまいなどを、いつでも真似できるように、脳内に映像を転写するようにプログラム組む。
男は某映画俳優、有名人のオーラそっくりにふるまい、すぐにもてもてに、職場でも大人気になる。だが周囲の人間もそれを真似し、様々な有名人のディープフェイクの人格をインストールをはじめる。初めは違法だとして躊躇していた人々も、自分に利益があるならば、と続々とデータをインストール。そして男の周囲は似た者だらけになる。結果、本来の状態と同じく、それなりにもてるだけの男になった。ただ、それをしていない人や人々とくらべると、インストールした人々の人望や人気はとても高く、法律で重く禁止されるまで、こうした状況が続いた。
そうしてしばらくこの世から“非有名人”の“個性”なるものは消失していたのだった。
やがて法律が厳罰化し、そうした出来事も一応収まりをみせた。
だが、結果として最初期に人格をインストールした人々をとりしまることはできず、人々は各々に“有名人そっくり”な自分たちになり、その中ではしばし、有名人本人よりも雰囲気がよく、オーラがあり人々を魅了することで、有名になったり人気になったりする人々もあらわれたのだった。まさに、モノマネ芸人のように。その中には、まるでクローンみたいだとして本人から“家族”扱いされるものまで現れるのだった。そこまでは笑い話だったが、ある上品なよく笑う女優に外見まで似せたものもいて、二人は、本人がなりすましの人のほうをかわいらしいと気に入り、それからは双子のようになかよく、いつも一緒に過ごして、二人一役で同一人物として一緒に暮らしていたのだが高齢になり寿命で亡くなったとき、どちらがなくなったのか区別がつかなかったので、そこから人々はこの話題を話すのをやめた。