第81話 とある家の末路
私は、王城に戻って、聖女の仕事をしていた。
しかし、今日やっているのは、今までの聖女としての仕事ではない。後任を育成するための教育を行っているのだ。
「やっぱり、ムルルには大きな魔力が宿っているようだね」
「そうなのでしょうか?」
「うん、自覚はないかもしれないけど、ムルルの魔力は私が今まで出会ってきた人達の中でも一番だと思う。ムルルなら、聖女も務めることができるよ」
私の目の前にいるのは、小さな村で出会った一人の少女である。
ラプレノス家の隠し子であるため、不当な扱いを受けてきた少女は、今は聖女候補として、私の指導を受けているのだ。
「セレンティナ様、大変です!」
「ラカニア? どうかしたの?」
そんな私達の元に、訪ねて来る者がいた。
焦った様子のラカニアが来たのである。
どうやら、何か大変なことがあったようだ。面倒なことでないといいのだが。
「えっと……ムルルさんの前で話していいのかはわからないのですけど、ラプレノス家に関して、ある知らせが届いたのです」
「そうなんだね。ムルル、大丈夫?」
「あ、はい。私は大丈夫です」
ラカニアは、ラプレノス家に関する知らせを伝えに来たらしい。
現在、ラプレノス家は、ロクス様率いるヴァンデイン家によって、大変なことになっているはずである。
そのラプレノス家についての知らせということは、彼等に何かあったのかもしれない。一応、ムルルには辛い話かもしれないが、見た所聞いても特に問題はなさそうだ。
「ロクス様が調査にあたった所、ムルルさんのことだけではなく、ラプレノス家からは色々なものが出てきまして……」
「色々なもの?」
「えっと……不当な税を領地の民に強いたり、領地の問題を放っていたり……とにかく、色々とやっていたようです」
「それは、かなりまずいことだね……」
ラカニアの言葉に、私はかなり驚いた。
まさか、そんなに色々とやっていたとは思っていなかったからだ。
そのような問題を起こした貴族が、どうなるかなどは大体決まっている。思っていた以上に、大変なことになるかもしれない。
「これから、ラプレノス家は罰を受けると思います。場合によっては、没落する可能性もある……というか、まず間違いなくそうなのではないでしょうか」
「そっか……」
ラプレノス家は、これから罰を受けるだろう。
その罰によっては、没落してしまうかもしれない。
その話を聞いても、ムルルは特に表情を変えなかった。もしかしたら、心の奥では何か思っているのかもしれない。
それが喜びか悲しみかは、わからない。どちらにしても、彼女にはしばらく注目した方がいいだろう。
彼女を支えることも、先代の聖女としての務めだ。私の先代であるエンティリア様がそうだったように、彼女が悩んでいるなら相談に乗ってあげられるような存在で、いなければならないのである。




