第76話 少年の思い
私は、ムルルから色々と話を聞いていた。
しかし、彼女からはいい情報が手に入りそうにない。何かを隠しているムルルに話を聞いても、この歪な村の体制を知ることはできないだろう。
だから、私はもう一人に聞くことにした。恐らく、ムルルよりも彼の方が事情をきちんと話してくれるだろう。
「ドルス、少し聞いてもいいかな?」
「え? 俺ですか……」
「うん。この村で何が起こっているのか、君は知っているよね?」
私の質問に、ドルスは目を丸くした。
だが、すぐにその表情を変える。私の質問の意図を理解したのだろう。
それに対して、ムルルは少し焦ったような表情になる。ドルスに言われたくないことが、彼女にはあるのだろう。
「セレンティナ様、実はムルルは……」
「ドルス、余計なことを言わないで」
「余計なことじゃない。この人達はすごい偉い人達だ。この人達に真実を話せば、全て解決するかもしれないんだぞ!」
「でも、そうなるとは限らない。現状が、もっと悪くなるかもしれないのに……」
「違う! 悪くなるなら、そうなってしまえばいいんだ。お前を助けない村に、何も価値なんてないじゃないか!」
話そうとしたドルスを、ムルルは制止しようとした。
しかし、その言葉にドルスは大きく反論した。その反論には、とても思いが籠っている。彼が、どれだけムルルのことを思っているか、それはしっかりと伝わってくる。
「ドルス、私は皆のために犠牲になってもいいと思っている。だって、そもそもは私のせいで……」
「違う。お前のせいじゃない。村人達もそう思っているのかもしれないが、そんなことはない。本来なら悪いのは、お前をこんな所に閉じ込めた奴らだ。でも、他の奴らはお前に矛先を向けている。それは、お前が弱い立場にあるからだ。俺は、そんな性根が腐った奴らを助ける価値なんて、ないと思っている」
二人の会話から、少しだけ話が見えてきた。
どうやら、ムルルは何者かにこの家に閉じ込められているらしい。その人物は、村人を押さえつけられる程力を持っている人物だ。それがどのような人物かは、なんとなくわかる。
村人達が本来恨むべきなのは、その人間。そのように、ドルスは考えているのだろう。だから、薄情な村人を助ける必要がないと説いているのだ。
ムルル本人は、自分に責任があると思っているらしい。だが、話だけ聞いていると、とてもそうは思えない。
私個人の感情としては、ドルスに軍配が上がると思ってしまう。彼の言っていることの方が、ムルルより私の考えに近い。
とにかく、二人の話をもっと詳しく聞く必要はあるだろう。全て聞いて、私も色々と判断した方がいいはずである。




