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平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。  作者: 木山楽斗


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第75話 仕方がないこと

 私とロクス様は、アモルの村で出会ったドルスという少年とともに、ムルルの家の中に入らせてもらっていた。

 家の中は、とても綺麗にしてある。ただ、あまり物が置かれていない。

 なんというか、生活できる最低限の物しかないような印象を受ける。平民であっても、流石にもう少し色々と置いてあるのが普通であるはずだ。

 まるで、他に物があったら不都合であるかのように、この家には物がない。もしかしたら、それもこの歪な村の体制が関係しているのだろうか。


「えっと……申し訳ありませんが、どこでもいいので座ってもらえますか? 椅子も座布団もないので、少し辛いかもしれませんが……」

「大丈夫、全然平気だよ」


 ムルルに促されて、私とロクス様は適当な場所に座った。

 すると、その正面に、ムルルとドルスが座る。椅子も座布団もないため、固い地べたに座ることになったが、それは特に気にならない。

 気になるのは、そういうものがないというこの家の状況である。普通の村なら、子供が一人暮らしをしていて、そういうものがないなら、分け与えるくらいのことはするはずだ。

 それをしない程、この村の人間は、ムルルのことを疎んでいるということである。その現状に、私は嫌悪感を覚えずにいられない。


「率直に聞かせてもらうけど、あなたとこの村には何が起こっているの? 明らかに、歪な村だと思うけど、何かあったのかな?」

「歪な村……確かに、外から見れば、そう見えるかもしれません。ただ、それは仕方がないことなんです」

「仕方がないこと?」


 ムルルの言葉に、私は驚いた。

 何故かわからないが、ムルルはこの歪んだ状況を受け入れているのだ。

 村人に対して、恨みや妬みの一つでも持っていいはずの彼女からは、負の感情を一切感じないのである。


「私は、今のこの現状を仕方ないものだと思っています。だから、聖女様が思っているようなことはありません。この村の人達がおかしいだとか、そういうことではないんです」

「それは……」


 ムルルは、一切表情を変えなかった。

 笑顔のまま、村人達を擁護したのである。

 その言葉は、私にとっては信じられないものだ。あのような村人達を、何故彼女が擁護するのだろうか。

 それが不思議で仕方ない。だが、ムルルがそう言う以上、あの村人達はおかしくないという前提を持っておくことは大切だろう。

 それなら、何故、あのような態度をとるのか。それを確かめるには、この場にいるもう一人に話を聞いた方が良さそうだ。

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