第73話 追跡者の正体
私とロクス様は、アモルという村に来ていた。
そこで、ロクス様が私達を追跡する子供の存在に気づいた。
その子供を誘い出すために、私とロクス様は人気のない場所に来ている。村の人がいる中では、その子供は出てこられない。だから、ここで待っているのだ。
「そろそろ……出てきてくれませんか?」
「……」
ロクス様の言葉に、木々の影から男の子が出てきた。
どうやら、この子が私達を追跡していた子であるらしい。
口振りからして、この子も尾行がばれていたことに気づいているようだ。
「えっと、君は?」
「俺の名前は、ドルス。あの村に住んでいるただの平民……です」
男の子は、ドルスという名前らしい。
あの村に住んでいるただの平民。確かに、身分としてはそれで正しいのだろう。
しかし、私達をつけていたのだから、普通の平民という訳ではないはずだ。何か特別な事情がある平民だといえるだろう。
「どうして、私達をつけていたの?」
「……あんた達が、こないだ来た調査員という人達の上司ということでいいんですよね?」
「うん、そういうことになるね」
私に対して、ドルスは調査員の話をしてきた。
先日この村を訪れていた調査員のことを、彼は知っているようだ。
だが、調査員はこの男の子について触れてはいなかった。もしかしたら、直接会わず、どこから見ていたのだろうか。
「それなら、ムルルを助けてもらえませんか?」
「ムルル……その子のことを、あなたは知っているの?」
「知っています。というか、俺だけが知っているという訳ではなくて、村の皆も本当は知っているんです。だけど……」
ドルスは、ムルルのことを口に出していた。
当然、私もこの村の人達が本当は彼女のことを知っていることはわかっている。
しかし、その理由まではわからない。だから、それはこの少年に教えてもらうしかないだろう。
「この村では、ムルルに触れてはいけないことになっているんです。村の皆は、あいつを呪われた子供と呼んで、近づこうとしないんです」
「呪われた子……」
ムルルという子は、村の人々から呪われたこと呼ばれているようだ。
それが、どういう理由なのかはわからない。だが、一人の女の子をそのように呼び、虐げることは、どのような理由があっても許されないことだ。
やはり、この村は歪な村である。聖女としても、一人の人間としても、この村を放っておくことはできない。
「ドルス、私達をムルルの元まで案内してもらえる?」
「え?」
「本人に直接会って話を聞きたいの」
「……わかりました。それじゃあ、俺について来てください」
私は、ドルスにムルルの元に連れて行ってもらうことにした。
どんな事情があっても、本人から話を聞くのが一番だ。
こうして、私達はムルルの元に向かうのだった。




