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平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。  作者: 木山楽斗


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第71話 歪な村

 私とロクス様は、アモルの村という所に来ていた。

 今回の訪問は、事前に通知していない突発的な訪問である。そのため、村人たちは少し驚いているようだ。

 当然のことではあるが、私とロクス様の洋装は平民とは違う。私達の顔を知らなくても、高い地位だということは理解しているはずだ。


「この村に何か用でしょうか?」


 そんな私達に対して、話しかけてくる者がいた。

 その人物は、老人である。恐らく、この村の中では偉い人なのだろう。そうでなければ、私達に話しかけてこないはずである。


「私は、聖女のセレンティナです。こちらは、ヴァンデイン家の次男であるロクス様です」

「聖女様……やはり、そうでしたか。それに、公爵家の次男様とは。こんな辺鄙な村に、一体どのような用件で、そんな高貴な人達が来たのでしょうか?」


 私が名乗ると、老人はそのように言ってきた。

 どうやら、私の顔は知っていたようだ。聖女の顔は見る機会があるので、それは別におかしなことではない。

 おかしいと思ったのは、この老人の態度だ。なんというか、腐った態度をしている。私達の来訪に、露骨に嫌そうな顔をしているのだ。

 そういう態度からも、この村の状況が異常であることはわかる。どうやら、思ったよりも大変なことになっているようだ。


「実は、ムルルという子に会いたくて、ここに来たのです」

「ムルル? そのような子供は、この村には存在しませんよ」

「え?」


 私の言葉に対して、老人はおかしな回答をしてきた。

 この村に、強い魔力を持つ少女ムルルはいない。そのような回答は、明らかにおかしいものだ。調査員は、確かにムルルと接触している。その情報に間違いがあるとは思えない。


「こちらが、何も知らないでこの村に来ていると思っているのですか?」

「そうですか……ですが、知らないものは知りませんよ」


 私の言葉に、老人は眉一つ動かさなかった。

 どうやら、まともに取り合う気はないようだ。

 何故かわからないが、この村の人達はムルルについて秘匿するつもりらしい。

 それなら、こちらもこちらで好きにさせてもらおう。


「わかりました。それなら、私は好きにさせてもらいます」

「好きに? それは、どういうことですか?」

「聖女と貴族として、この村の様子を観察させてもらいます。何か問題があれば対処しますので、そのつもりでいてください」

「……そうですか」


 私は、この村で勝手にムルルを見つけることにした。その方が、手っ取り早いからだ。

 聖女である私の要請を、一村の老人が断れるはずもない。そのため、私の提案は簡単に受け入れてもらえた。

 こうして、私とロクス様はアモルの村を見て回ることになったのだった。

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