第43話 抗議の正当性
私は、ラカニアとロクス様とともに、アルガンデ家を訪れていた。
今は中に通されて、三人でサレース様と対面している。意外なことに、サレース様は一人で私達と話し合うつもりのようだ。てっきり、アルガンデ家の当主などがいるのかと思ったが、そうでもないらしい。
「それで、今回の抗議についてですか? 私が、サレース様の話を聞き入れなかったという抗議でしたね?」
「はい……」
「ですが、サレース様の質問は聖女の仕事に関するものではありませんでした。それは、理解できていますか?」
「えっと……」
私は、早速サレース様に対して色々と言い始めた。
こういう場数は踏んでこなかったのか、サレース様は少し緊張しているように見える。
それならば、一気に畳みかけることにしよう。相手が困惑している話をまとめられるなら、それが一番である。
「その質問に、私は答える必要がないと判断しました。私の個人的な事情に関する質問に、答えるのは聖女の業務外だからです」
「それは……」
「だというのに、それに抗議するということは、それなりの論があるということですよね。一体、サレース様は何を言いたのですか?」
私の言葉に、サレース様は普通に怯えていた。
どうやら、私の語気が強いため、そうなってしまったようである。
しかし、それで語気を弱めたりするつもりはない。こちらも理不尽に抗議されたのだから、優しい態度をとる理由はないのだ。
「その理由が説明できないなら、今回の抗議には正当性がないということになります。それでよろしいですか?」
「そんなことはありません……今回の抗議は、正当性があるものです」
私に対して、サレース様は震える声でそう言ってきた。
サレース様は、あまり語気が強くない。それは、先程から私に怯えていたからなのかもしれない。
しかし、私は少し別の疑惑を抱いていた。もしかして、サレース様は今回の抗議に対して、気が進んでいないのではないだろうか。
サレース様の様子を見ていると、なんとなくそんな気がするのだ。そもそも、サレース様はここに来た時から様子がおかしかった。それは緊張しているからではなく、気が進んでいなかったからではないのだろうか。
「聖女であるあなたが……私の言葉を聞き入れようとしなかった。それが、今回の問題なのです……」
「サレース様……何かありましたか?」
「え?」
私の言葉に、サレース様は目を丸くした。
その質問は、サレース様をかなり動揺させるものだったようだ。
普通に考えて、何もなければこのような反応はしないだろう。何を言っているのかと聞き返したりするのが普通であるはずだ。
つまり、サレース様に何かあったと考える方がいいだろう。どうやら、私の直感は、外れていなかったようである。




