第42話 したたかに
私は、サレース様率いるアルガンデ家への抗議に対抗することにした。
そのため、私はアルガンデ家を訪れていた。正面から抗議に対抗するために、私が自らここに来たのだ。
「ほ、本当に大丈夫なのでしょうか……」
「大丈夫、私に任せて」
今回は、私の他にラカニアにもついて来てもらっている。一人は流石に不安だったので、ラカニアがついてきてくれたのはとてもありがたいことだ。
ただ、今回ついて来てもらう予定なのは、ラカニアだけではない。ある人にも、お願いして来てもらうことになっているのだ。
「あっ、馬車が来ましたね」
「うん」
私とラカニアの前に、一台の馬車が止まった。
この馬車が、私が頼んでおいた人物を乗せた馬車である。
その馬車から、ゆっくりと一人の男性が下りてきた。ご存知、ロクス様である。
「セレンティナ様、お久し振りですね」
「お久し振りです、ロクス様」
「ラカニア様も、お久し振りですね。いつも、お世話になっています」
「いえいえ、こちらこそお世話になっています」
ロクス様は、私とラカニアにそれぞれ挨拶した。いつも通り、真面目なロクス様だ。
ただ、ロクス様は少し緊張しているように見える。恐らく、これから行われるであろうことに対して、心穏やかではないのだろう。
「……それにしても、今回は抗議に対する返答をするために、ここに来たのですよね?」
「え? あ、はい。そうですよ」
「そこに、僕がいても本当にいいのでしょうか?」
そこで、ロクス様はそのようなことを聞いてきた。
どうやら、ロクス様は聖女の仕事に自分が介入していいのか心配しているようだ。
しかし、その点に関してはまったく問題ない。今回は、ロクス様をこの場に呼ぶ正当な理由を用意しているからだ。
「問題ありません。今回、ロクス様は当事者ですから」
「当事者?」
「はい。抗議の内容は、私がヴァンデイン家と判明したことやロクス様と婚約者となったことに関することでした。という訳で、ロクス様は当事者ということになります」
「そういうものなのですか……」
「そういうものなのです」
今回の抗議は、私がロクス様と婚約したことについて触れている。触れているということは、ロクス様は当事者ということだ。
ということは、ここに呼んでも問題ないということである。当事者の話を聞く必要があるということにすれば、この場にいてもらっても問題ないのだ。
「セレンティナ様も、中々したたかなのですね……」
「したたかではなければ、聖女なんて務まりませんからね」
「なるほど、逞しい精神です」
この論は、詭弁のようなものである。
だが、このような詭弁でも使うのが聖女なのだ。
これくらいできなければ、王国の魔法関係をまとめることなどできない。聖女であるということは、したたかでなければ務まらないのだ。




