第39話 知っていた好意
私は、ロクス様と対面していた。
今日は、私の休みとロクス様の予定が合ったので、会うことになったのだ。
私には、丁度ロクス様に相談したいことがあったので、ここで予定が合ったのは非常にありがたいことである。
「ロクス様は、サレース・アルガンデ様という方を知っていますか?」
「ああ、あの人のことですか……」
少し近況報告してから、私はサレース様のことを切り出した。
名前が出た時点で、ロクス様の表情は少し強張った。サレース様のことは、良く知っているようである。
「彼女が、どうかしましたか?」
「えっと、私の元を訪ねて来て、ロクス様との婚約について聞かれました」
「……そうですか」
私の言葉に、ロクス様は頭を抱えた。
サレース様がとった行動は、ロクス様にとっても頭を悩ませるもののようだ。
やはり、私やラカニアの予想は当たっていたのだろう。サレース様は、ロクス様に特別な思いを抱いているのだ。
「彼女は……その、僕に好意を抱いてくれているのです」
「はい……」
「だから、セレンティナ様の元を訪ねて、事情を聞こうと考えたのだと思います」
「なるほど」
ロクス様は、少し照れながらそのようなことを言ってきた。
予想通りだったが、サレース様はロクス様に好意を抱いているらしい。そのことで、私の元を訪ねて来たようだ。
「困りましたね……彼女は、少々わがままな気質があります。なんでも自分の思い通りになると考えるような人ですので……」
「そうですね……」
サレース様は、かなりわがままな女性であるらしい。
それは、以前接した時に、薄々感じていたことである。
恐らく、公爵令嬢であることから、かなり甘やかされて育ったのだろう。そういう公爵家の人間はよくいるのだ。
「セレンティナ様にも、色々と迷惑をかけてしまいましたね……申し訳ありませんでした」
「いえ、それはロクス様のせいではありません」
謝ってきたが、この件でロクス様が謝る必要はない。別に、ロクス様に迷惑をかけられた訳ではないからだ。
ただ、責任の一端がロクス様にもあることは確かである。ここは、ロクス様に協力を求めた方が話が早いかもしれない。
「ロクス様、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「はい、なんですか?」
「ロクス様は、サレース様のことをどう思っているのですか?」
「え?」
私の質問に、ロクス様は目を丸くしていた。
このような質問をされるとは思っていなかったようだ。
しかし、これは重要な質問である。この質問の答えによって、これからとる行動が変わってくるからだ。




