第38話 対処するために
私は、サレース様を引き下がらせてから、仕事場に戻って来ていた。
この一瞬だけで、とても疲れた。引き下がらせた時も色々と言っていたが、本当にとても面倒な人である。
そもそも、私は別に今は話さないと言っていただけだ。別の機会で話すかは別にして、どうしてあそこまで引き下がらなかったのだろう。それは、とても疑問である。
「あ、セレンティナ様、おかえりなさい」
「ただいま、ラカニア」
「セレンティナ様? 大丈夫ですか? とても疲れているように見えますけど……」
帰って来た私に対して、ラカニアはそのように言ってきた。
ラカニアから見ても、私は疲れているように見えるようだ。
「実は、サレース様の話がとても面倒なことでね……」
「面倒なこと? 一体、何を言われたのですか?」
「私が公爵家の人間と判明したこととか、ロクス様と婚約したこととかを指摘してきたの」
「聞いているだけで、面倒くさそうなことですね……」
私の言葉に、ラカニアは共感してくれた。
ラカニアも、そういう個人的なことを質問されたことはあるはずだ。だから、私の気持ちをわかってくれるのだろう。
「私も、よくありますけど、個人的な質問を受け付ける場所ではないのですけどね……」
「そうだよね……それなのに、そういう質問する人、意外と多いよね……」
「そうですね……」
私とラカニアは、お互いにゆっくりと頷いた。
こういう場で、個人的な質問をしてくる人はよくいる。ただ、仕事として対応しているので、そういうことを言われると困るのだ。
それを理解できていない人は、結構多い。傲慢な貴族は、そういうことへの理解がないのだろうか。
「というか、ロクス様との婚約のこととかを聞いてくるということは、どういうことなのでしょうか? もしかして……」
「うん……多分、そうなのかなと思う」
そこで、ラカニアはサレース様がある思いを抱いているのではないかと予測してきた。
それは、私もなんとなくそうだと思っていることである。
ただ、その思いを抱いているというなら、かなり厄介だ。なんとかしなければならないのかもしれない。
「とりあえず、ロクス様とかに相談してみたらいいのではないですか? あちらも、何か知っているかもしれませんし……」
「そうだね。とりあえず、探ってみようと思う」
ラカニアの提案に、私はゆっくりと頷いた。
サレース様のことは、ロクス様に少し相談した方がいいだろう。もしかしたら、ロクス様も何か知っているかもしれないし、少し探ってみたい。
こうして、私はサレース様のことに対処することになったのである。




