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平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。  作者: 木山楽斗


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第29話 矛盾した考え

 私は、ロクス様とともに、アウターノ様と対峙していた。

 アウターノ様は、ログド様を人質にとっている。隙はあったのだが、私達をログド様が制止したため、このような状況になってしまっているのだ。


「動くな……動けば、こいつの命はないぞ」

「アウターノ……貴様」


 アウターノ様に対して、ロクス様は表情を歪めた。

 それは、憤怒の表情だ。このようなロクス様は、初めて見る。それ程、ログド様の行いに怒りを感じているということなのだろう。


「アウターノ様、落ち着いてください」

「……お前には恨みがないが、今は大人しくしてもらおう。お前とて、この男の命は惜しいだろう?」


 私の呼びかけに、アウターノ様はそう返してきた。

 アウターノ様は、私に対してはそこまで敵意を向けてきていない。自分の父が、私の父を殺したという後ろめたさがあるからだろうか。

 それなら、この場でアウターノ様を止められるのは私だけである。恨んでいるログド様やロクス様の言葉が、アウターノ様に届くことはないからだ。


「アウターノ様、あなたは復讐しようとしているのですか?」

「……その通りだ。俺は、俺の父を殺したこの男とその子供達に復讐する。こいつら全員の命を奪うまで、俺は止まれない」

「そんなことをして、何になるのですか?」

「何?」


 私の言葉に、アウターノ様は顔を歪めた。

 それは、私の言葉に、少し怒っているからかもしれない。


「俺の父の……無念を晴らすのだ」

「本当に、そう思っているのですか?」

「そうだ……」


 私の質問に対して、アウターノ様はそう答えてきた。

 父親の無念を晴らすため、それがアウターノ様の目的であるというのも、間違いではないのだろう。だが、真の目的は違うはずである。もっと単純なものであるはずだ。

 ただ、それを詰めるにはまだ早い。まだ遠回りする必要があるはずである。


「私の父親は、あなたの父親に殺されました。それを、あなたは理解していますか?」

「何?」

「あなたの理論を借りるなら、私の父の無念も晴らされるべきものだった。そういうことになりますよね?」

「なんだと?」


 とりあえず、私は自分の父を持ち出していくことにした。

 アウターノ様に対して、一番有効なのはこの話だからだ。


「ログド様は、私の父の無念を晴らしてくれました。それは、今あなたが為そうとしていることと同じではありませんか?」

「い、命まで奪う必要は……なかっただろう」

「それなら、あなたは刃を引いてください。無念を晴らすために、命を奪う必要はないのでしょう?」

「ぐっ……」


 私の言葉に、アウターノ様は苦悶の表情を浮かべた。

 自身の理論が、矛盾しているとわかったからだろう。

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