第18話 複雑な関係性
私とロクス様は、ラウド様とファルティ様との話を終えて、廊下を歩いていた。
「あれは……」
「ロクス様?」
そこで、ロクス様は廊下の奥から歩いてくる人物に反応した。
その人物は、少し目つきが悪い若い男性だ。ロクス様は、一体何故その人物に反応したのだろうか。
私がそう思っていると、その男性はこちらに寄ってきた。その顔には、少し意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「そいつが、ラグド様の忘れ形見か」
「アウターノ、なんの用だ」
近づいたアウターノという人物に対して、ロクス様は少し語気を強めていた。
しかも、私を庇うように前に出てきている。それだけ、アウターノという人物を警戒しているということなのだろう。
「おいおい、俺はお前達の父上から呼ばれたんだぞ? そんな風に言われる覚えはないがな……」
「お前が、セレンティナ様に何かするつもりなら……」
「そんなつもりはない。お前達にならともかく、そちらの女性に恨みはないからな」
アウターノ様の言葉に、私は少し疑問を覚えた。
ロクス様達にならともかく、私に恨みはない。それは、どういうことなのだろうか。
「まあ、俺の挨拶はこの程度でいいだろう。後は、お前が説明すればいいさ」
「……わかった」
それだけ言って、アウターノ様は去って行った。
結局、彼は一体何者なのだろうか。
「……彼は、アウターノ。私やあなたにとっていとこにあたる人物です」
「いとこ?」
ロクス様の説明に、私は驚いた。
私やロクス様にとって、いとこ。ということは、彼は私の父やログド様の兄弟の息子ということである。
「私の父やログド様には、まだ兄弟がいるのですか?」
「ええ、レグド様という僕の父上にとっては弟、あなたの父上にとっては兄にあたる人物がいたのです」
「……いた? ということは……」
どうやら、私の父にはもう一人兄がいたらしい。
ただ、それが過去を表す言い方であるということは、その人はもういないということなのだろう。
「彼の父上は、亡くなっているのです。あなたの父上のすぐ後でした……いや、あなたの父上が亡くなったから、彼の父上も亡くなったと言うべきでしょうか……」
「え?」
ロクス様は、さらに気になることを言ってきた。
私の父が亡くなったから、彼の父も亡くなった。つまり、何かが過去にあったということなのだろう。
「……仕方ありません。少し話をしましょうか。あなたの父上や私の父上、そして彼の父上のことは、あなたも知っておくべきことです」
「そうですね……聞かせてもらいたいです」
ロクス様の言葉に、私は頷いた。
過去に何かあったのなら、それは聞いておきたい。
それが、私の父やこのヴァンデイン家を知る足がかりになるのだから。