~ダンジョン星から帰ってきたよ、ただいま~
~さっきまでのあのダンジョン、夢うつろいは誰のせい?~
そうだね あれから一光年前の夢の跡
ダンジョン星からの帰り道の頃
僕は此れまでの軌跡を一ページづつ綴る為に
大事にしている想いでを捲るように
繰り返し思い描いていた
~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~◆~
ダンジョン星の空は澄み切り
絶え間なく打ち寄せる岸辺の波音に
残り少ない日々の暮らしを
懐かしむように呼吸している
思い切り大きく息を吸い込んで
一気に吐き出しきる前に
ふっと息を止めた瞬間
意識でも失ったのであろうか
目の前を 共に暮らしたあなたの陽炎が
横切ったような気がしてならない・・・
スミレ・・・今横切った?
そう、確かにスミレだよな
忘れていた青春の一ページに
そっと刻んでくれたあの頃
二人仲良く暮らしたね
あの頃は二人若くって
そう 若さのせいで傷つけ会って
いつしか心に雪が積もっていった
丁度その頃
あの銀河開拓計画が浮上し
君との仲を裂くべく
指令と共に僕の新たな人生が
はじまっていったのだろう
その難解な計画は
未だ誰も生し得ていないまま
遭難者の数知れず
銀河の藻屑となっていった
帰らぬ人々の
その崇高な想いを
引き継ぐことに後ろ髪を引かれながらも
覚悟を決める時が来たことを
その決断も
今思えば間違っていたのではなかろうか・・・
「ダンジョン星の姫を救出せよ」
そんな新しい旅路に軽々しくも
若気の至りに立った僕は決断した
少なからず夢を抱いて
旧式の宇宙ジェットでは在ったが
慣れ親しんだコックピット
何千時間も共にしてきたから
命を預けても大丈夫だろう
いざ機首を持ち上げ宇宙へと舞ってゆく
明日への希望を夢にみて
そう 遥かな旅路だった
突然迫る星のかけらを何度もかわし
息を呑む場面も何度も乗り越え
未だ誰もみぬダンジョンに到着してから
30余年の月日が流れ今に至る
その頃のダンジョンは荒れ果てており
姫の居所を掴むまでの戦いに
疲れを憶えながらも開拓していた
救出指令を受けたチームの人員も多く失いながら
日々の戦いに明け暮れながら
辿りつく街々で束の間の休息を取る
スミレはいつも言っていたっけ
「全てはあなたのエゴのせい・・・」
ああ、そうさ
そのつけが廻って来たのさ
嘯き傷つけあった結果
多くの犠牲を伴うこととも知らないで
勝手に決断したこの計画に
スミレは涙を観られたくなくて
この旅の出発の日にも
見送ることは無かったね
そして敵陣のラビリンスが見えてきた
姫の匿われているとの情報をもとに
収集した城のマップを手に
チームはひたすら突き進む
全ての柵を振り捨てて切り込んで行く
そう、お前との愛の日々をも・・・
戦いは長きに渡った
こんなに長く続くなんて
チームの面々に悲壮感が漂う
マイナス思考にならないように
己に活を与えながらも
幾つも足を浚われながら
多くの犠牲を払いのけながら
多くの澱を携えながら
一体この旅に何の意味があるのだろう
おまえのエゴだ!と罵られながら
果たしてこの当てどない旅路に
何の勲章が与えられるのであろうか
人々はやがて疲弊して言った・・・
そんな時スミレとの日々を回想する
優しかったね、おまえ
愚かな俺の夢に悲しい顔も見せずに
唯寄り添ってくれた
アリガトウそしてサヨウナラ
ラビリンスの頂は近かった
あと一息 目前に迫る
姫の下へといざ進む
こんなに苦労をし尽くして
時には涙を食いしばり
心に雪は降り積もり
埋もれて凍えて動けずに
愛を失い戦って
夢か幻かも判らずに
星のかけらを交してく
迫り来る難解な愚問を解くが如く
そんな意味も見当たらず
もう引き篭もってしまいたい
一寸の光陰も差すことなく
己のエゴのみそこに居る
何のエゴだか知らないが
誰のエゴだか露知らず
騙しあいでもしてるのか
そして時の扉を開いてく
そして姫がそこにいる
多くの犠牲と引き換えに
姫を救うそのために
その指令の意味さえも
やがて意味無くなって逝く
いつの事であったろう
痛みを覚え胸を抑え
その両手のひらに鮮血が
真っ赤に滴り流れてる
地表にあふれて滴りて
姫の希望は失せて逝く
従者のどよめき聞こえてて
エゴの行く末遠ざかり
やがて呼吸も遠のいて
うっすらぼんやり萎んでく
ダンジョン星からの帰り道
そんな景色が浮かんでた
ウソか誠か幻か
そうさ僕の走馬灯
捲ったページのそれぞれは
人が最期に見る映画
ぼんやり渦巻く走馬灯
色々言ってすみません
エゴだと笑ってくださいな・・・
言いたかったよ最期には
スミレに会えた暁に
そっと耳元「ただいま」と。
~◆~◆~◆~◆~◆~fin~◆~◆~◆~◆~◆~