バレーボールの復讐
左目 バレーボール 黒板
ある朝、学校に行くとあるクラスの黒板だけに、びっしりとバレーボールの絵がチョークで描かれていた。とても上手に描かれたそれは、誰かのいたずらだろうと、みな写メを撮ったりしながら話題にし、ホームルームの前には消されていた。
次の朝、学校に行くとまた同じクラスの黒板に、びっしりとバレーボールの絵がチョークで描かれていた。とても上手に描かれたそれは、昨日と違って色の配色もあり、いたずらをした者の遊び心だと、みなの話題をさらって消されていた。
その朝、学校に行くといつものクラスの黒板に、バレーボールの絵は描かれていなかった。毎朝楽しみにしていた者もいたそれは、みなの心にちょっとだけ寂しさを与えてまた話題をさらった。
次の朝、学校に行くとあのクラスの黒板だけに、びっしりとごめんなさいの文字が書かれていた。
次の朝、学校に行くとあのクラスの生徒が一人、校舎の屋上から飛び降りていた。
ある朝、学校に行くとクラスの黒板に、びっしりとバレーボールの絵がチョークで描かれていた。とても上手に描かれたそれは、一目で描いた者が誰かを教えてくれた。
それは毎朝描かれていた。毎朝毎朝、周りのみんなは面白可笑しく話題にしていた。
バレーボール。バレーボール。バレーボール。
バレーボール。バレーボール。バレーボール。
バレーボール。バレーボール。バレーボール。
バレーボール。丸い。バレーボール。丸い玉。
バレーボール。球。玉。バレーボール。球。眼球。
眼球。眼球。眼球。目玉。眼球。目玉。目玉。
目。目。目。左目。目。目。左目。左目。目。
絵じゃない。これは呪い。左目を潰した俺への、あいつの恨み。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ある学校の校舎近くで、二人の刑事が大仰に眉をひそめて視線を落としていた。見つめる先にあるのは、一人の男子生徒の飛び降り現場。
「自殺ですか。どうしちゃったんですかね。この前話を聞いた時は随分生意気だったのに」
訝しむ若い刑事の隣で、ベテランと見える刑事は手帳を開く。
「安藤良樹。ひと月前に亡くなった同じ学校の浪江健斗のいじめの加害者。ひと月前、浪江健斗は安藤に連れ込まれた体育倉庫内で縛られたあと、至近距離からバレーのスパイクを受け続けた。その後解放されたが、特に狙われ腫れ上がった左目により狭まった視界のなか、階段を降りる際に足を踏み外し、転げ落ちた先で頭を強く打ち死亡。直接手を下した訳じゃないが、安藤にいじめに対する反省の態度は一切なかった。――はぁ、わかんねぇな」
手帳を閉じて、刑事は持っていたペンで頬を掻いた。
「もしかして、被害者が化けて出たとか!」
両手を胸の前でプラプラ動かし始めた若い刑事の頭を、ベテランの刑事は軽く叩く。だが、
「それなら、さぞおぞましい絵でも送り付けたんだろうよ」