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目覚めた先は知らない世界

私の名前は小川茜

今年、不名誉の面接全落ちを果たしたニートでありフリーター予定の22歳だ。

両親は他界し、今の私にあるのは安く古い木造アパートの一室のみ…


生きる希望も無ければ、死ぬ絶望も無い。

ただ微生物のようにそこにあるものを食べて寝て生きていく。

こんな生活に嫌気が差そうがどうにもならない。


今日も冷たい布団に入り、凍える体を抱きしめながら横になる。

明日が今日より良い日になるとは思えないが、これより下も無いだろう。

そう思って目を閉じて、眠りについた。





小鳥のさえずりよりも先に、誰かの足音で目が覚める。

「だ…」

声が出せない。

しかしそれは決して朝だからという理由ではない。

目の前には、古びた木の壁ではなく、高そうな装飾が施されている壁

目覚まし時計の代わりに、ぜんまい仕掛けの壁時計

極めつけにこの羽毛が飛び出してきそうなこのベッド

何をどう考えても自分の部屋ではない。


お姫様みたいなこの状況でも心は浮つかず、何か得体の知れない事が起こっているのが怖かった。


周りに目をやると、ふと自分の髪が目に入る。

それはもう見事な金色の髪で、少なくとも昨日までの私の髪色では無い。

困惑を抑えつつ、鏡を探そうとベッドから起き上がるが、

身体は異常なほどに軽く手足が小さい。

来ている服もフリルがいっぱいの女の子らしい服であったりと、落ち着くどころが逆に困惑の元を増やしてしまった。

「なっなっなにこれ」

広いベッドを歩きながら、まじまじと自分の身体を見る。

「手小さっ…えっ小さっ」

変わり様に驚きの声をあげたその時だった。


「お嬢様、はしたないですよ」

どこからともなく声をかけられ、尻もちをついてしまう。

「だっだれ」

「…?私ですよ」

「ヒィッ」


その声の主はいつの間にやら私の前に立っていた。

日本人離れした青髪に執事服、そして整いすぎている外見

そして…羽

彼の背には鳩のような白い羽がついていた。

「とっとりにんげん…?」

困惑が最大に達し、自分でもよくわからないことを口走ってしまう。

…しかしどうしてか、私は彼とどこかで出会ったことがある気が


「え?」

男は心配そうな顔でこちらを見つめる。

私も不安げな顔でその鳩人間を見つめ直す。

「お嬢様、私は天使ですよ」

質の悪い冗談と受け取られたのか、少し口を引きつらせて笑う。


「いったいどうなされたのです?お嬢様」


「あー!」

その時、頭の中で電流が走った


「ねぇもう一回言って下さい!」

私は身を乗り出し、鳩人…もとい天使にお願いをする。

「え?」

「もう一回!さっきの言葉!」


少し驚いて、どもりながらも彼は例の言葉を発した。


「どっどうなされたのです?お嬢様?」


間違いない

「ナビゲーターじゃん!」

この人は私がやっていた乙女ゲームのナビゲーターだ。

『どうなされたのです?お嬢様。』

はメニューボタンを押したときに流れるナビのボイスであり、親の声よりも聴き飽きていたボイスでもあった。

声だけの出演だったこともあり、気付くのに時間がかかってしまったことが悔やまれる。


「声AKINAKA(声優名)でしょ!どうりで聞き覚えあると思っ…」

テンションを上げる私を尻目に、少し引いた顔つきをするナビ


「…あーねぇちょっと鏡持ってきて、鏡」

ナビだと思えば怖くはない。私は本来の目的を果たすことにした。

ろくにガチャ石をくれない上に確率も低い、ナビもとい運営にはもうほとほと愛想が尽きていたのだ。

なんと思われようがどうでもいい

しかしどうしてそのナビが天使の姿で私の目の前にいるのだろうか…。


「…お待たせしました」

彼から渡された手鏡をまじまじと見つめると、そこには今までの自分とは違いとても可愛い顔をした金髪美少女が鏡の中にいた。

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