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…8

「被告人は有罪。本件の加害者として認定する。魔力封じの手枷首枷をつけたまま釈放させる。手枷首枷をはずことは許さず今後一切魔力を使用することを禁止する」


閉廷。裁判長の言葉をきっかけにわっと歓声があがり、イザベルさんの「良かった!良かった!」という声が耳に入りました。


私自身、死刑でなくなったことに安心してる。

頭に靄がかかってる。


私が立ち上がると

周りの人間が彼女を守るように私に威嚇していますが

イザベルさんは笑顔で私を見ています。

昨日の激情が嘘のようにぼんやりとその様子を見ていました。


「感謝しろ!」「聖女様の慈悲に感謝を!」


彼女の主張が彼女の真実なのなら、私に責める権利はありません。

私も最後まで自分の真実から手を離せないのだから。


その人混みの中で金色の髪を見つけた気がして目で追いましたが

衛兵の方に連れられて牢屋へと戻りました。

釈放までは色々時間がかかると言われ弁護人と会うのは今日で最後だそうです。


「イザベルさんのおかげで死刑のはずが、幸運だったね」


聞き慣れた施錠する音。


ぺたりと床に頬をつけ目を閉じます。

静かに流れる涙。痛むはずなのに鈍った心。



私は幸運だったのでしょうか。


相反する意見。それを追求し議論するのが裁判だと思っていました。

罪人に与える罰を決める遊びを楽しむあの場所で

「生きる罰」を賞品にもらえた私は感謝すべきなのでしょうか。



リアは人を殺そうとした。


みんなにとっては大前提だったそれが

私にとっても真実になったのです。

有罪とはそういうことでしょう。


迫り上がる気持ち悪さ。喉が焼けてしまいそう。


カイ君と一緒に生きてはいけないのでしょうか。

私なんかもうそばにいていい人間じゃない。


カイ君は今も信じてくれてると思います。

「やってもないくせにどんだけ間抜けなんだ」って怒るかもしれない。

でも「仕方ないなあ」って頭撫でてくれるような優しい人。



見間違えだったのでしょうか。


カイ君は隣にある小国イエフの出身でこの国では滅多に見ない金色の髪で瞳は綺麗な蒼の色です。

その綺麗な金の髪を見た気がしました。


私は犯罪者になりました。この先どうなるかわからない。

魔法文字のお仕事もできない。クラアトのみんなにいっぱい迷惑をかけた。

風評被害に苦しんでいたらどうしよう。みんなは悪くないのにごめんなさい。


ごめんなさい。ごめんなさい。


沼のような不安にずぶずぶと沈んでしまいそう。


それでも会いたい。

みんな。カイ君。



釈放されたらカイ君にその足で会いに行こう。


何を言ったらいいかわからない。

会っていいのかもわからない。


それでも、ごめんなさい。


今はただあの大好きな笑顔がみたいのです。

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