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本日2話目の投稿です。
残酷な描写があります。
ご注意ください!
息が泡になる。苦しくて苦しくて水の中でもがき苦しむ。
髪を引っ張り上げられ必死に酸素を探しました。
「お前が喉が渇いたっていうから水を用意してやったのに礼の一つも言えないのか」
水桶に顔を沈められげほげほとむせる私を気にも留めず。
淡々と告げるセイリーさんが心底怖い。
取り調べは寝る間もなく続けられました。
「イザベル様がずっと苦しんでるんだから当然だろう」ということでした。
喉が渇いても水はもらえません。
「嘘つきにやる水はない」
お手洗いで知らない男性の目の前で用を足しました。
「逃げ出したらかなわない」
朦朧として気づくと眠りに落ちる私を水桶に顔を沈めるのです。
「水が欲しいといっただろ」
「寝れる身分だと思うな。目を覚ませ。罪を認めろ」
「お前がやったんだ」
「お前が殺そうとしたんだ」
証拠品の彼女が事件当日着ていた服をみせられました。
チカチカとうまく視点は定まらずぼーっとそれをみていると
嫌でも気づきます。
私の魔力…
「残留魔素だ。特殊容器にいれて保存しているからこの魔素は消えない。。この色と波形に見覚えがないとは言わせない。お前が言った瓶も見つからなかったしな」
間違いない。
澄んだ蒼のなだらかな波。私の中を巡る魔力。
「私がやりました。早く書け、こうなったのもお前の責任だ」
ただ私がやりました。そう書くだけか。
対等な人間として扱われず
尊厳を奪われ苦しみ一方的に傷つけられる。
逃れたい。
それに本当に私がやったのかもしれない。
本当に私、人を殺そうとした気がする。
だからみんなこんなひどいことするんでしょう。
彼女を魔力を使って殺そうとしたんだ。
私が悪いから罰を与えられてるんだ。
「書いたら休ませてやるから」
震える手で筆を取ります。もういい。
早く楽になりたい。
彼女の服に残る残留魔素をみて決意を固めようともう一度見ても
やっぱりそこに漂うのは私の魔素で。
認めるしかないと思ったのに。
「君の魔力、僕の瞳と同じ色」
「君の正直なところに僕は何度も救われてるよ」
カイ君。
私の魔力と同じ蒼い瞳の大好きなカイ君。
ー私はやっていませんー
もうぐちゃぐちゃで文字とも言えない黒い塊の羅列。
セイリーさんが怖くても。
苦しくて悲しくてどうしようもなくても。
カイ君はきっと私を信じてくれてる。
カイ君は私の嘘をつかないところ褒めてくれました。
今ここで認めたら私ずっとこれから罪を認め続けなきゃいけない。
嘘なのに。そう嘘なんだよ。
ー私はやってない。瓶を見つけてー
自分を強く持て。絶対認めるな。
頭を鷲掴みにされ水桶に顔を押し付けられる。
恐怖と苦しみ、支配されそうになる心を叱咤する。
魂だけは捕らわれちゃいけない。
カイ君のそばにいられるよう無実を訴え続けなきゃ。
顔を持ち上げられ髪を掴んだままのセイリーさんと目が合います。
決意を込めてキッと睨みつけてやりました。
セイリーさんは私の耳に顔を近づけ
「お前このままじゃ死刑だな」
セイリーさんの囁きは簡単に私を絶望の淵へと追いやるけど、
私にはカイ君がそばにいてぎゅっと手を離さないでいてくれてる。
そんな想像をすればこんな茶番に私が負けるはずないのです。
カイ君がいれば私は強くいられるんだから。
読んでいただいてありがとうございます。
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