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(仮)①
☆某イトーヨーカ堂を横目に見ながら、相馬尚輝が口を開く。
「4回、ツーアウト満塁、初球打ち。
7回、ノーアウト満塁、初球打ち。」
ハンドルを握りながら、助手席のシートを
いつもと同じ深さで傾ける男の表情を確認して
「ピンチの場面で、4番相手に初球からストライクゾーンに配球する捕手はなく、
ピンチの場面で、4番相手に初球からストライクゾーンに送球する投手はいない?」
それだけを答えた。
相馬尚輝は、言葉こそ返してこなかったけど
ご満悦の表情で1度おおきく頷いてみせた。
「野球を知らない4番にご立腹なの?」
そう付け足したら
「野球を知っていても170キロの直球を確実に打てるわけじゃない。
要は『確率』の問題なんだがな。」
相馬尚輝の「確率論」。
それが毎年最下位争いのチームを
優勝争いのチームに変えている。
本日の試合結果:2-7(敗戦)
①(仮)