【プロローグ・分岐点】
「今思い返せば…あの時だったと思う。」
私の目の前にあの子が姿を現した時に、私の運命は分岐した。それまで私はただ流れるままに世界を進んできた。抗う力が無かったからだ。ただの女子高生である私には、一つの物語を正しく導く程の力なんて持つはずもなく無力な存在にすぎない。だから私は慣れたいつもの手段を使って、これまで下りてきた多くの世界を終わらせた。
とても残忍で…残酷で…到底許されない行為。
初めての時は私も躊躇したと思う。ここであえて゛思う゛という言葉を使ったのは確かな証拠が無かったからだ。なぜなら私には過去の記憶が存在しない、一般的にはこれを記憶喪失というのだろうか。唯一分かるのは自分が女子高生であること。これも着ている服が制服だからという理由だけで本当に女子高生なのかは定かではない。
たちが悪いことに私にとって、この記憶喪失は現在進行形とも言えるだろう。今まで下りてきた世界の記憶も全てハッキリと覚えていないのだ。薄くぼやけた夢のように、ふわっとしか思いだせない。
ただ、どのような事が起きたのかは今の私なら大体予想は付いた。
今回私…いや、私達が訪れた世界の名は゛機械島゛
列車の出入り口上にある行先表示では機械島という漢字で表示されているが、車内アナウンスではカラクリトウと放送されている。そんな機械仕掛けの不思議な世界で、私とあの子の共同作業で物語を進めていく。
この一つの記憶がいつか消えてしまう前に、覚えている限り話していこう。