第一話
4月、卯の花が咲くことから卯月となった月。十二支で4番目が卯であることからついたという説もあるとか。
そんな4月の擬人化した女性が今回の主人公、卯月さんである。
季節も暖かくなり、完全に春となった4月は新生活の時期でもある。新たな学校、新たな職場、それぞれ期待と不安の入り混ざった月だろう。となると、新たな気持ちに相応しい爽やかな性格の女性が卯月さんではないかと、僕は少し期待をしていた。
「あ、あの、私、こういうのは初めてなもので、・・・・宜しくお願いします!」
僕が新しい気持ちでと思ったからなのか、現れたのはいかにも新人らしい印象の女性であった。そんな彼女を見て私も新入社員だったころはこんなだったなと思い出していた。
「あの、四月らしい感じはすると思うのですが、四月は毎年訪れるものですから、擬人化した女性がいつも新人というのはどうなんでしょう?」
「うーん、でも、私、このシリーズは初めてですし」
「そうですよね。でも、大体、このシリーズに出てくる月はみんな初めてになるわけですし、そうなると、卯月さんはシリーズで11番目になるわけで、実はもう終わりの方なんですよ。すみませんね、6月という中途半端な月からスタートしたもので、新人感が出せなくて」
「うーん、でも、新人らしさがいつまでも抜けない人はいますよね」
彼女は最初、爽やかな印象を与えたのだが、少し喋っていると、どこかイラッとするところがある。新卒の社会人は確かに学生気分が抜け切れないのか、そんなところはある。でも、これがすべて四月を印象付けるとは思いたくない。
「四月になると何事もリセットされる傾向があるから、こういう性格になるのかもしれないわね」
そう言って姿を現したのはお馴染みの六月の擬人化した女性、水無月さんだ。腕を組み、苦々しい表情で卯月さんを見ている。その姿はまるで、会社に長くいる・・・・
「誰がお局様だ!」
水無月さんは僕が何か言う前に、いや、まだ口に出してもいないのだが、綺麗なハイキックをした。
「人の思考が読めるのですか?」
「長い付き合いだからな」
「僕はただ、このシリーズで水無月さんが一番長く出ているから、知らないうちにそう言う立場になってしまったのではと言いたかっただけです」
「その立場がお局様ってことだろ!」
僕は弁明しながら、話がおかしな方向に進んでいる気がしていた。