お祭りで見かけたカップル
去年の夏だったかな、大学の近所でお祭りやってたからふらーっと寄ってみたんだ。
そしたらすっごい人でさー、圧巻しちゃったよ。
それでも立ち寄ったからには何かしら買いたいと思うじゃん?
暑かったからかき氷でも食べよと思って人混みの中を歩いていたらさー、なんかすっごい不機嫌そうな少年と、その少年に手を掴まれて引っ張られてる少女が向こう側から歩ってきたんだよね。
高校生くらいだったかな? なんかもう手を繋いでる、っていう感じじゃなくてさー、ん? って思ってよく見てみたらその少年、少女の手首引っ掴んでるみたいだったんだよねー。
少年の方は無言でズンズン不機嫌そーに歩っててさー、少女の方は顔うつむかせて浮かない顔してたの。
うっわ、感じ悪って思ったよ、何があったのか知らないけど、あそこまで不機嫌にする必要ないじゃんって。
引っ張られてる少女が可哀想だと思ってね、いや本当に。
てかあの少年、今思い出しても……雰囲気が怖かったな、なんだろ……棘があるっていうか、冷たいっていうか……
と、まあ、そんな感じ?
これだけなら気分が悪いだけの話なんだけどさー、続きがあって。
顔うつむかせててた少女がちょっとだけ視線を変えたんだ。
こう……チラッ、と一瞬だけ。
正面から見てたから見えたのね、私から。
何があるんだろって視線の先を見たら綿飴屋さんがあった。
でも本当に一瞬だけだったのね、正面にいた私がギリギリ気付けたレベルで。
すぐに目をそらして、顔うつむかせてた。
けどさー、その直後にさ、少女の手を引っ張ってた少年が急に立ち止まって。
方向転換して少女を引っ張ったまま綿飴屋さんに向かって、一個だけ綿飴買って。
無言でそれを少女に、ずいって。
顔をうつむかせてた少女はちょっとだけぽかーんとしてたけど受け取った後嬉しそうに笑ってさー、少年の方もそんな少女の顔見て少し雰囲気和らげててさー。
あ、よかったなーって思った。
ただそれだけ。
その後どうなったかは知らんよ。




